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2023.12.27

養子縁組でよくある相続トラブル6選・対処法や予防法も解説

養子縁組でよくある相続トラブル6選・対処法や予防法も解説

「相続税の節税対策のために養子縁組を考えているけれど、余計なトラブルが起きるのは困る」「養親が亡くなり、これから相続が始まるが、トラブルは起きないだろうか」などと不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

養子縁組をしたために、相続トラブルが起こるケースは少なくありません。その内容は幅広く、実子や親族とのトラブルの他にも、離婚に伴うトラブル、相続税に関するトラブルなど、さまざまなケースがあります。
しかし、典型的なトラブル事例の原因と対処法、予防策などを事前に知っておくことで、大きな問題に発展することを防げる可能性もあります。

今回は、養子縁組によって起きやすい相続トラブルの事例、養子縁組による相続トラブルの対処法、養子縁組による相続トラブル予防のために知っておきたいこと、養子縁組による相続トラブルを防ぐ方法などについて解説します。
相続のためにこれから養子縁組することを考えている方も、すでに養子縁組をしていてこれから相続手続きを開始するという方もぜひ参考にしてください。

養子縁組によって起きやすい相続トラブルの事例

典型的なトラブルの事例と原因を知っておくと、実際にトラブルに直面したときに対処しやすくなるので、まずは養子縁組によって起きやすい代表的な相続トラブルの事例を6つ紹介します。

1.実子が養子を認めない

養子には実子と同等の相続権があります。法定相続分も実子と変わりません。養子が増えればその分相続人が増えるため、一人あたりの相続分が減ります。

たとえば、遺産の総額が3,000万円、相続人が配偶者と実子1人、養子1人の場合を考えてみましょう。この場合、法定相続分どおりに分けるとすると、以下のようになります。

法定相続分 相続額
配偶者 1/2 1,500万円
実子 1/4 750万円
養子 1/4 750万円

これに対し、養子がおらず、相続人が配偶者と実子のみの場合、それぞれの相続額は以下のとおりです。

法定相続分 相続額
配偶者 1/2 1,500万円
実子 1/2 1,500万円

このように養子が相続人に加われば、実子の取得できる相続額が本来よりも少なくなってしまうため、実子が養子を相続人として認めず、トラブルになるケースは多いです。

また、単に、血縁関係のない他人が相続人になるのが面白くないなど、感情的な理由によって実子が反対することもあるでしょう。

2.同性パートナーを養子にしたところ親族が認めない

2023年現在、日本では同性同士の結婚は認められていません。そのため、養子縁組をして同じ籍に入るという手段が取られることがあります。しかし、LGBTに対する理解のない親族がいる場合、相続が発生した際に養子縁組を認めず争いになることもあるでしょう。

また、相続では第1順位の相続人が養子であるパートナーであるため、養子がいなければ相続人になれた親族が遺産を取得できず、トラブルに発展する可能性もあります。

3.子どもの配偶者を養子にしたら離婚した

息子の妻や娘の夫と養子縁組をすると、夫婦が離婚した場合にトラブルになる可能性があります。夫婦が離婚しても、養子関係は消滅しないからです。

養子縁組は離縁届を役所に提出することで解消できますが、両者の合意がなければできません。そのため、養子が解消を拒否すればトラブルに発展するでしょう。

当事者同士では話がまとまりそうにない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになりますが、解決までには長い時間がかかります。

4.配偶者の子どもを養子にしたが離婚した

夫婦が離婚しても、養子との親子関係は残ります。そのため、離婚手続きと同時に離縁の手続きを行わなければなりません。ただし、養子が15歳未満の場合は、法定代理人である実母または実父の同意が必要です。特に離婚後に手続きを行う場合は、スムーズに進まずに多くの労力を要する場合もあるでしょう。

5.孫を養子にしたら相続税が高くなった

孫を養子にすると、「相続税の2割加算」の対象になります。

「相続税の2割加算」とは、配偶者や親、子どもなど特定の相続人以外を相続人とする場合に適用され、相続税額を本来よりも2割増しにされてしまう制度です。

孫を養子にして、相続人を増やすことで基礎控除額が増しても、この制度が適用された場合は相続税額が増えるため、損をしてしまう可能性もあります。

6.税務署に養子の相続権を認めてもらえなかった

明らかに相続税の節税目的のみの養子縁組であり、親子関係を築くつもりがない、と税務署に判断された場合、その養子縁組は無効とされます。養子の相続権も認められません。これは、相続税法第63条に定められている規定によるもので、国税庁の公式サイトにも記載されています。

参考URL:No.4170 相続人の中に養子がいるとき(国税庁公式サイト)

養子縁組による相続トラブルの対処法

養子縁組したことが原因で相続トラブルが起きた場合の対処法としては、主に以下の2つの方法が挙げられます。

1.養子縁組を解消する

子どもの配偶者を養子にしたものの夫婦が離婚した場合や、ご自身が配偶者の子どもを養子にしていたが離婚してした場合など、養子関係を解消していないことが原因でトラブルが発生した場合は、速やかに養子縁組を解消しましょう。

養子縁組の解消手続きは、役所に「離縁届」を提出するだけです。相手が同意しない場合は家庭裁判所に離縁調停を申し立てましょう。調停手続きとは、裁判官の他、調停委員という専門家が間に入って、当事者同士でもう一度話し合う手続きです。調停が不成立となった場合は、訴訟提起をして離縁を認めてもらえるよう求めます。

なお、養親か養子のどちらかが亡くなっている場合は、家庭裁判所に死後離縁許可を申し立てます。

2.実子とのトラブルは遺産分割調停を申し立てる

実子など他の相続人が養子縁組を認めない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。調停手続きでは、調停委員が間に入ることで、冷静に話し合いができます。そのため、当事者同士で話し合うよりも合意に至る可能性が高まるでしょう。しかし、あくまで話し合いであるため、不成立となる可能性もあります。その場合は、審判手続きに移行し、裁判所の判断を仰ぎます。

養子縁組による相続トラブル予防のために知っておきたい2つのこと

養子縁組は比較的簡単に成立します。しかし、安易に養子縁組をするのはおすすめできません。以下の注意点を踏まえ、慎重に検討した上で判断することをおすすめします。

1.養子縁組の解消は簡単ではない

一度行った養子縁組を解消するのは簡単なことではありません。養親と養子、双方が合意すればスムーズに解消できますが、どちらかが拒否した場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用して、話し合うなど解決までに長い時間を要します。

調停が不成立になり、訴訟になればさらに大変です。裁判を経て養子縁組の解消が認められるのは、以下の3つのケースに限られるからです。

  • 悪意の遺棄が認められる場合
  • 3年以上生死が不明である場合
  • 他に養子関係を継続しがたい理由がある場合

2.養子の数が多ければ節税効果があるわけではない

相続税を節税するために養子縁組を考える方も多くいらっしゃいますが、基礎控除額の計算に含められる養子の数には、以下のとおり限りがあります。

  • 被相続人に実子がいる場合は1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合は2人まで

養子の数を増やすほど、節税効果が高まるというものではないということを認識しておきましょう。

養子縁組による相続トラブルを防ぐ方法

あらかじめ予防方法を知り、実践しておけば、相続トラブルを防げる可能性が高まります。相続が発生した際に、養子に関するトラブルが起きるかもしれないと不安に感じている方は、以下の方法をぜひ参考にしてください。

1.養子縁組は親族の同意を得てからにする

養子縁組自体は、当事者二人の合意さえあればできます。しかし、いざ相続が発生すると他の相続人が養子縁組を認めないためにトラブルに発展するケースも多く、そのような意味では当事者二人だけの問題とはいえません。

どちらかの死後に親族による反対に遭い、残された方がつらい思いをしないためにも、養子縁組を成立させる前に親族の同意を得ておくことが望ましいでしょう。

2.遺言書を作成しておく

法定相続分どおりに遺産分割をしてもらうつもりであっても、相続人に養子がいる場合は遺言書を残しておくことをおすすめします。遺言書の内容は遺産分割において、何より優先されますし、被相続人の意思を本人の言葉で残しておけば、他の相続人は受け入れやすくもなるものです。養子がいる場合は、遺言書を作成しておきましょう。

養子縁組による相続トラブルについてのよくある質問

相続人に養子がいる場合の相続トラブルについて、まだ知りたいことがあるという方もいらっしゃるでしょう。ここでは、養子縁組による相続トラブルについてよくある質問とその答えを紹介します。

1.勝手に養子縁組をされていた場合、無効にする方法はありますか?

養子縁組をされた本人が存命の場合は、家庭裁判所に養子縁組の無効を求めて調停を申し立てます。不成立となった場合は訴訟提起をして、裁判所の判断を仰ぎます。

一方、本人がすでに亡くなってしまっている場合は、調停の申し立てはしません。養子縁組無効確認訴訟を提起します。

人事訴訟と呼ばれる手続きに該当し、どちらの場合も訴訟提起をする先は、地方裁判所ではなく家庭裁判所です。

2.養子は代襲相続ができないので、相続人ではないと言われましたが、本当ですか?

養子は代襲相続ができる場合とできない場合があります。判断のポイントは、養子が生まれたタイミングです。養子縁組をした後に生まれた子どもであれば、代襲相続は可能です。しかし、養子縁組をするより前に生まれた子どもなら、代襲相続はできません。

まとめ

今回は、養子縁組によって起きやすい相続トラブルの事例、養子縁組による相続トラブルの対処法、養子縁組による相続トラブル予防のために知っておきたいこと、養子縁組による相続トラブルを防ぐ方法などについて解説しました。

養子縁組の成立は難しいことではないため、様々な理由から縁組を検討している方もいらっしゃるでしょう。

しかし、養子縁組をしたために相続トラブルが起こるケースも多いものです。さらに、一度成立した養子縁組は簡単には解消できないため、大変な目に遭うこともあります。

相続のために養子縁組をする場合、起こり得るトラブルもよく知り、対策や対処法を知ったうえで行うようにしましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。養子縁組による相続のトラブルなどに関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一