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2024.08.28

施設に入った親の家はどうするべき?6つの選択肢を紹介

施設に入った親の家はどうするべき?6つの選択肢を紹介

介護施設などに入所した親の家を処分するべきか、空き家のまま維持するべきか、判断できずにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、親が介護施設に入所したときの選択肢と、それぞれのメリットとデメリットなどについて解説します。

施設に入所した親の家の対処法

施設に入所した親が住んでいた家の対処法として、主に以下の6つが考えられます。

  1. 売却する
  2. 賃貸する
  3. リバースモーゲージを利用する
  4. 空き家のままにしておく
  5. 自分たちが住む
  6. 解体する

どの方法を選択するのがベストかは、ご自身や親の状況によります。それぞれのメリット、デメリットをしっかり理解した上で選択しましょう。判断に迷う場合は専門業者に相談するのもよい方法です。

施設に入所した親の家を売却する場合

親が施設から戻ってくる可能性がほとんどない場合、売却を検討する方が多いでしょう。親の家を売却するメリットやデメリットについて説明します。

1.親の家を売却するメリット

施設に入所した親の家を売却する主なメリットとして以下の4つが挙げられます。

  • 売却金を親の介護費用や医療費に充てることが可能
  • 遺産分割の際に分割しやすい
  • 固定資産税などの家の維持費がかからなくなる
  • 家を管理する手間が省ける

家を売却すれば、売却金としてまとまった資金を得られます。親の施設の利用料や医療費などに充てられるので、経済的な不安が軽減するでしょう。また、換価によって分割しやすくなるので、相続の際に相続人の間で争いが起きるリスクを低減できます。

さらに、固定資産税や修繕費などの維持費を負担しなくて済むようになり、家を管理する手間もなくなります。

2.親の家を売却するデメリット

売却にはメリットだけではなくデメリットもあります。主なデメリットとして以下のようなことが挙げられます。

  • なかなか売れない可能性がある
  • 修繕やリフォーム費用が必要になる可能性がある
  • 譲渡所得税が発生する場合がある
  • 親の同意なしには売れない

親の家を売却しようとしても、必ず売却できるとは限りません。地域や家の状態によっては、売却が難しい場合もあります。売却のために、修繕やリフォームが必要となる可能性もあるでしょう。その場合、修繕やリフォームのための費用が必要です。

また、売却額が購入時にかかった費用を上回れば、譲渡所得税が発生します。想定していた以上に出費がかさむこともあるでしょう。

なお、所有者である親の同意がなければ、売却はできません。認知症などで判断能力が低下している場合は、成年後見人を選任しなければならないため、手間がかかるケースもあるでしょう。

3.施設に入った親の家の売却に使える特例

親の家の売却時には「マイホームを売ったときの特例」が適用できる可能性があります。この制度を利用すれば、売却時に発生する譲渡所得から最大で3,000万円を控除できます。譲渡所得税を大幅に軽減できるケースもあるでしょう。

参考:「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(国税庁公式サイト)

施設に入所した親の家を賃貸に出す場合

売却が難しい場合には、賃貸に出すという方法もあります。

1.親の家を賃貸に出すメリット

賃貸に出すメリットとしては以下の2点が挙げられます。

  • 収益を得られる
  • 思い入れのある家を残せる

賃貸に出せば、定期的に収益を得られるので、その分を介護費用に充当できます。また、資産として残せるので、実家を手放さずに済みます。思い入れがある実家を残しておきたい場合にもよいでしょう。

2.親の家を賃貸に出すデメリット

親の家を貸し出すデメリットとしては以下の4点が挙げられます。

  • 修繕やリフォームが必要
  • 空室になる場合もある
  • 容易に売却できなくなる可能性がある
  • 売却時に特例を使えない

賃貸物件とする場合には、定期的なメンテナンスが必要です。状態によってはリフォームが必要になる可能性もあり、費用がかさむかもしれません。

また、空室となって収益を得られない時期もあるでしょう。新たな借り手を見つけるために、何らかの対策が必要なケースもあります。

さらに、将来的に売却する際には損をする可能性もあります。賃貸の場合、入居者の強制的な退去は、よほどの理由がない限り認められないため、ご自身が望むタイミングで売却できないからです。売り時を逃す可能性もあるでしょう。

また、元は親が住んでいた物件でも、賃貸物件にしたことで、居住用不動産とはみなされなくなるためマイホームを売却したときの特例を使えません。譲渡所得の3,000万円の控除も受けられなくなります

リバースモーゲージを利用する場合

リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関からお金を借りて、死亡時に売却することで借り入れた分を返済するという方法です。親が施設に入った後の空き家の状態でも利用できます。

1.リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージを利用する主なメリットとして、以下のことが挙げられます。

  • 家を手放すことなく、多額の資金が手に入る
  • 資金の使い道は自由
  • 返済の負担が少ない
  • 相続時に争いが起きる可能性が低い

リバースモーゲージを利用すれば、まとまった資金が手に入ります。使い道も決められていないので、親の介護費用に充てることも可能です。また、月々の返済は利息分だけなので、負担も少なくて済みます。

親が亡くなったら売却するため、家の相続を巡って相続人の間で争いが起きる可能性も低減できるでしょう。

2.リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージを利用するデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 審査に通過できるとは限らない
  • 金利が高い
  • 残債リスクもある

リバースモーゲージは審査が厳しいため、利用できるとは限りません。また、住宅ローンよりも金利が高い上、立地などの条件によっては担保評価が低くなり、想定していたほどの借り入れができないこともあるでしょう。また、残債リスクがある点にも注意が必要です。

施設に入所した親の家を空き家として維持する場合

親の家を処分せずに空き家として維持するという方法もあります。

1.空き家として維持するメリット

空き家として維持するメリットとしては以下のことが挙げられます。

  • 親が施設を退所した際、再び住むことができる
  • 将来的に価値が上がる可能性がある

空き家として維持すれば、親が施設を退所した際に、再び今までどおりの生活ができるという点で安心です。また、都市開発計画がある地域であれば、将来的に土地の価値が上がり、高値で売却できる可能性もあるでしょう。

2.空き家として維持するデメリット

空き家のままにしておくと、以下のようなデメリットも考えられます。

  • 管理の手間がかかる
  • 維持にお金がかかる
  • 固定資産税が高くなる可能性がある

空き家として維持する場合、定期的に清掃に訪れ、適切に管理する必要があります。遠方に住んでいる場合などは大きな負担になるかもしれません。さらに、修繕費用などの維持費も必要です。

空き家の管理を行わず、荒れたまま放置した場合、自治体から「特定空き家」に指定される可能性があります。「特定空き家」に指定された場合、特例の適用外となり、固定資産税が最大で6倍になるなどのペナルティを課されるおそれがあるので注意しましょう。

施設に入所した親の家に住む場合

元々親の家の近くに住んでいたり、Uターンをする予定があったりする場合、ご自身が住むことを検討してもよいでしょう。

1.自分たちが住むメリット

親の家に自分たちが住むメリットとしては、以下のことが挙げられます。

  • 実家を処分しなくて済む
  • 空き家にしなくて済む

自分たちが住めば、今までどおり家を維持できますし、空き家にした場合のリスクを回避できます。

2.自分たちが住むデメリット

他に相続人がいる場合、家の相続を巡って争いになる可能性があります。争いを避けるためには、他の相続人と話し合い、代償金を支払うなど適切な方法で分割することを検討しましょう。適切な遺産分割方法がわからない場合は、専門家に相談するとよいでしょう。

施設に入所した親の家を解体する場合

売却や活用ができず、空き家として維持することも難しい場合、家を解体して土地だけの状態で所有することを検討してもよいでしょう。

1.解体するメリット

家を解体する主なメリットとして以下のことが挙げられます。

  • 売却しやすくなる可能性がある
  • 駐車場などにして活用できる

建物付きの状態では売却が難しくても、土地だけであれば売れる可能性があります。また、駐車場にすれば、建物よりも維持や管理が容易なので活用しやすいでしょう。

2.解体するデメリット

解体する場合、以下のようなデメリットが考えられます。

  • 解体費用がかかる
  • 固定資産税が増額する

建物を解体するには費用がかかります。建物によりますが、数百万円程度は必要になるでしょう。また、建物がなくなることで、住宅用地の特例の適用対象外となり、固定資産税が増額するという点にも注意が必要です。

施設に入った親の家の処分を考える際の注意点

親の家をどうするか考える際は、以下のことに注意しましょう。

1.親の意思を確認する

親の家をどうするか考える際は、家の所有者である親の意思を尊重しましょう。家を残す場合と処分する場合のメリットとデメリットについて説明し、十分に話し合うことが望ましいでしょう。

2.諸費用を調べておく

親の住んでいた家をどのように処分するにしても、何らかの費用がかかります。思いのほかお金がかかり、大変な思いをしないためにも、あらかじめ概算を知っておくと安心です。調べてもよくわからない場合は、専門家や不動産業者に相談しましょう。

まとめ

今回は、親が介護施設に入所したときの選択肢と、それぞれのメリットとデメリットなどについて解説しました。

今回紹介した方法には、それぞれメリットとデメリットがあるので、メリットとデメリットをしっかり理解したうえで適切な方法について検討しましょう。所有者である親の意思を尊重することも大切です。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「施設に入った親の家を売却するか迷っている」などという相談にも応じておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一