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2023.12.20

養子縁組すると実家の相続はできる?相続順位や割合についても解説

養子縁組すると実家の相続はできる?相続順位や割合についても解説

「家を継ぐために養子になったけれど、実家の相続はできないのだろうか?」

「養子になることを提案されたけれど、養子になると実家の相続はどうなるのだろうか?」

など、養子縁組をした場合の実家の相続について気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実家の相続を養子になった人ができるかどうかは、どのような形で養子縁組をしたかによります。「普通養子縁組」であれば、養家、実家、両方の相続において実子と同等の相続権があります。しかし、特別養子縁組であれば、相続権は養家においてしかありません。

また、婿養子の場合は、普通養子縁組と同様に扱われます。つまり、自分の実家と配偶者の実家の両方の相続ができます。

そのため、普通養子縁組をして養子になることは、相続において非常に有利となるケースが多いでしょう。

この記事では、養子縁組の2つの種類や養子の相続順位、法定相続分、遺留分、養子縁組した場合の実家の相続の具体例、婿養子の場合の実家の相続、相続で養子縁組をするメリットなどについて解説します。

養子縁組の2つの種類

養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類の制度があります。まずはこれら2つの概要と、その違いについて理解しておきましょう。

1.普通養子縁組

普通養子縁組は、一般的な養子縁組のことです。実親と法律上の親子でありながら、養親とも親子関係を結ぶことが可能です。

手続きは、市区町村役場に届出を行うだけです。縁組の回数に制限はないため、何人と養子縁組してもかまいません。養親には、20歳以上であれば誰でもなれます。婚姻の有無も問わず、単身者や独身者でもかまいません。ただし、親族関係では下の世代が上の世代を、親族関係以外では年少者が年長者を、養子とすることはできません

普通養子縁組を利用するケースは多岐にわたり、実子のいない夫婦が甥や姪を養子にしたり、相続対策のために孫を養子にしたりするほか、中小企業の経営者が後継ぎとして娘婿や従業員を養子にするケースなどもあります。

2.特別養子縁組

特別養子縁組は、原則として15歳未満の子どもの福祉のために設けられた制度です。虐待や育児放棄などを受けたり、親の経済的な理由から十分な監護を受けられなかったりする子どもに対して温かい家庭環境を提供することを目的としています。縁組をするには家庭裁判所の許可が必要です。

また、特別養子縁組が成立すれば、実親との法律上の親子関係はなくなります。親と認められるのは養親のみです。原則として25歳以上で配偶者がある人でなければ養親にはなれず、夫婦共同で養子縁組をしなければなりません。普通養子縁組に比べて、利用されるケースは限られるでしょう。

普通養子縁組なら実家の相続もできる

養子になっても実家の相続ができるのは、普通養子縁組の場合のみです。特別養子縁組では、実親との親子関係は法律上、消滅しているため、実家の相続では相続権がありません。

一方、普通養子縁組の場合、養子になっても実親との親子関係は残されたままです。そのため、実家の相続が発生した場合は法定相続人となります

養子の相続順位、法定相続分、遺留分はどうなる?

相続において養子と実子の違いはありません。相続順位や法定相続分、遺留分は養子も実子も同じです。養子の相続順位、法定相続分、遺留分などについて説明します。

1.養子の相続順位

相続順位とは、民法で定められた、相続人になれる人の優先順位のことです。その順位は以下のように定められています。

第1順位 子ども
第2順位
第3順位 兄弟姉妹

養子は実子と同様、被相続人の子どもとされるため、第1順位の相続人です。

2.養子の法定相続分

各相続人が遺産のうちどれくらいの割合を相続できるかという法定相続分についても民法で定められています。相続人の構成パターン別の法定相続分は以下のとおりです。

相続人の構成 法定相続分
配偶者と子ども 配偶者:1/2

子ども:1/2を子どもの人数で分割

配偶者と被相続人の親 配偶者:2/3

親:1/3

配偶者と兄弟姉妹 配偶者:3/4

兄弟姉妹:1/4を兄弟姉妹の数で分割

配偶者のみ 全て
子どものみ 子どもの人数で分割
親のみ 全て
兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹の数で分割

 養子は実子と同様、被相続人の「子ども」として扱われ、その法定相続分についても差はありません

3.養子の遺留分

遺留分とは、法律で保障された、相続人が最低限取得できる遺産の割合のことです。遺留分の割合についても養子と実子との間に差はありません。相続人の構成パターンによって異なり、それぞれ以下のとおりです。

相続人の構成 遺留分の割合
配偶者のみ 1/2
配偶者と子ども 配偶者:1/4

子ども:1/4を子どもの人数で分割

配偶者と親 配偶者:2/6

親:1/6

配偶者と兄弟姉妹 配偶者:1/2

兄弟姉妹:0

子どものみ 1/2を子どもの人数で分割
親のみ 1/3

養子縁組した場合、代襲相続はできる?

代襲相続とは、本来であれば相続人となるはずだった人が、被相続人よりも先に亡くなっていたり、何らかの理由で相続権を失ったりした場合に、その人の子どもや孫など、下の世代に相続権が移ることです。

被相続人よりも先に養子が亡くなっていた場合に代襲相続が発生するかどうかは、養子の子どもが生まれたタイミングによります。

代襲相続ができるのは、養子縁組をした後に生まれた子どものみです。子どもが養子縁組をするよりも前に生まれていた場合、代襲相続はできません。養親と養子の子どもの間に血族関係が認められず、被相続人である養親の直系卑属とはみなされないためです。

養子縁組した場合の実家の相続の具体例

養子縁組をした場合の相続について、より理解を深めるために具体例を用いて考えてみましょう。

1.普通養子縁組をした場合の例

Aさんが実家のO家から、普通養子縁組をしてT家の養子になったとしましょう。それぞれの家族構成は以下のとおりです。

【実家O家の家族構成】

・実父、実母、B(兄)、C(姉)、A(T家養子)

【養子縁組をしたT家の家族構成】

・養父・養母、D(実子)、A(養子)

実父が亡くなり、実家で相続が発生した場合、それぞれの法定相続分は以下のとおりです。

相続人 法定相続分
実母 >1/2
>B(兄) 1/6(=1/2×1/3)
C(姉) 1/6
A(T家養子) 1/6

普通養子縁組であるため、Aさんは実親との親子関係も維持しており、実家の相続においても相続権があります。法定相続分も他の兄弟姉妹と同じく1/6です。

さらに、養子縁組をしたT家でも養母が亡くなり、相続が発生したとしましょう。この場合のそれぞれの法定相続分は以下のとおりです。

相続人 法定相続分
養父 1/2
D(実子) 1/4
A(養子) 1/4

養家においてもAさんは相続権があります。その権利は実子と変わらないため、取得できる法定相続分はDさんと同じく1/4です。

2.特別養子縁組をした場合の例

先に挙げた家族で、今度は特別養子縁組をした場合について考えてみましょう。

今度は実親との法律上の親子関係はないため、実家で相続が発生しても相続権はありません。そのため実父が亡くなり、実家で相続が発生した場合、それぞれの法定相続分は以下のとおりです。

相続人 法定相続分
実母 1/2
B(兄) 1/4(=1/2×1/2)
C(姉) 1/4
A(T家養子) 0

一方、特別養子縁組をしたT家では、実子と同等に相続権があります。養母が亡くなった場合の法定相続分は以下のとおりです。

相続人 法定相続分
養父 1/2
D(実子) 1/4
A(養子) 1/4

婿養子の場合の実家の相続はどうなる?

妻の家を継ぐために、妻の両親と養子縁組をする「婿養子」の場合はどうなるのでしょうか。ここでは、婿養子の場合の実家の相続について解説します。

1.自分と配偶者両方の実家の相続人になれる

婿養子の場合、自身の実家でも、妻の実家でも相続人になれます。婿養子とは、実親との親子関係を維持しながら、妻の親とも法律上の親子関係を結ぶ普通養子縁組のことだからです。

ただし、養子縁組は妻の両親と行う必要があります。どちらか片方だけでは、もう片方の親との親子関係は生じません。養子縁組をしていない親の相続では、相続人になれないため注意しましょう。

2.離婚しても離縁しない限り相続人

妻の両親と養子縁組をした場合、妻と離婚をしても、解消されるのは妻との夫婦関係だけです。妻の両親とは、離縁をしない限り、法律上の親子関係は維持されます。つまり、離縁の手続きをしなければ、妻の両親の相続人であり続けることになるのです。

相続で養子縁組をする3つのメリット

養子縁組をすると、相続において以下のようなメリットがあります。

1.本来なら相続人でない人に相続させられる

養子縁組をすれば、孫や子どもの配偶者、再婚した配偶者の連れ子など、本来なら法定相続人でない人にも相続権が生じます。法定相続分や他の権利についても実子と同等です。確実に財産を譲りたい方がいる場合に有効な手段といえるでしょう。

2.相続税の基礎控除額が増える

相続税の基礎控除額は以下の計算式で算出します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

養子縁組をして、法定相続人の数が増えれば、その分基礎控除額も増えます。そのため、節税対策として有効です。

ただし、普通養子縁組をした場合、法定相続人として含められる数には、以下の上限があります。

  • 被相続人に実子がいる場合、養子として含められるのは1人のみ
  • 被相続人に実子がいない場合、養子として含められるのは2人まで

また、養子であっても以下の場合は法定相続人に含められる養子の数に制限はありません。

  • 特別養子縁組で養子となっている場合
  • 再婚相手の実子を養子とした場合
  • 養子が死亡するなどして代襲相続が起こっている場合

3.生命保険金や死亡退職金の非課税限度額が増額する

生命保険金や死亡退職金については、基礎控除とは別に非課税枠が設けられています。下記の計算式で算出できる金額以下であれば相続税はかかりません。

非課税枠=500万円×法定相続人の数

法定相続人の数が増えれば、非課税枠も大きくなるため、養子縁組をすれば有利です。ただし、含められる養子の数には基礎控除額と同様の制限があるため注意しましょう。

まとめ

今回は、養子縁組の2つの種類や養子の相続順位、法定相続分、遺留分、養子縁組した場合の実家の相続の具体例、婿養子の場合の実家の相続、相続で養子縁組をするメリットなどについて解説しました。

普通養子縁組によって養子になれば、養家だけでなく実家の相続においても相続人になれます。どちらの家でも他の子どもと同等の権利を有するため、上手く利用すれば相続において非常に有利でしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。養子縁組をされた方の実家の相続に関する相談などにも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一