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2024.03.07

実家を相続したくない!相続前後にできる対処法を解説

実家を相続したくない!相続前後にできる対処法を解説

「親が亡くなり、誰も住まなくなった実家を相続したくない」

田舎の実家を相続せずに済む方法はないだろうか?」

など、実家の相続についてお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

誰も住まず、活用もしない実家を相続すると、管理や納税資金の負担を負うことになります。遠方に住んでいる場合はなおさらでしょう。

不要な実家の相続に対する対処法としては、相続放棄、相続後の売却、活用などの方法があります。どの方法が適しているかは個々の事情によって異なるので、慎重に検討したうえで判断しましょう。

今回は、相続したくない実家を相続するデメリット、実家を相続したくない場合の対処法、相続放棄をする場合の注意点、実家を相続せざるをえない場合の対処法、実家を相続後に売却する場合のコツなどについて解説します。

実家の相続についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

相続したくない実家を相続するデメリット

誰も住む予定がなく活用もできない実家を相続すると、どのようなデメリットがあるのでしょうか。主なデメリットについて説明します。

1.相続税が発生する

相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超える場合にのみ支払い義務が生じます

相続税の基礎控除額は以下の計算式を用いて算出します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

遺産に不動産が含まれると、その評価額が大きいために、基礎控除額を超えるケースが多いです。そのため、相続税の支払い義務が生じる可能性が高いです。

また、被相続人と同居していた場合は「小規模宅地の特例」といって、土地の評価額を最大80%減額できる特例を適用できます。しかし、実家から離れて暮らしていた場合、この特例の適用を受けられません。実家で同居していた場合と比べて、多額の相続税を負担するケースが多いでしょう。

2.相続登記の費用がかかる

2024年4月1日より相続登記の義務化が始まり、相続発生から3年以内に手続きをしなければ、10万円以下の過料を科せられます。また、相続登記の手続きでは、以下の計算式で算出した金額分の登録免許税を納める必要があります。

登録免許税=相続不動産の固定資産税評価額×0.4%

さらに、登記手続きを司法書士に依頼すれば、5~10万円程度の司法書士費用もかかります。

3.管理や維持に負担がかかる

不動産を所有していると、毎年固定資産税を納付しなければなりません。たとえ居住していなくても請求されるため、金銭的な負担が定期的に生じることになります。

さらに、建物の清掃や修繕など定期的なメンテナンスも必要です。実家から遠く離れて暮らしている場合は、大きな負担になるでしょう。

4.空き家にするとペナルティを受ける

誰も住まない実家のメンテナンスを怠り、荒れたまま放置していると、自治体から「特定空き家」に指定されるリスクがあります。特定空き家に指定されると、固定資産税が最大で6倍に増額されたり、50万円以下の過料が科せられたりする可能性もあるので注意が必要です。

5.空き家のままにしておくと近隣トラブルになる

空き家をそのままにしておくと、犯罪の温床となる可能性があり、周辺地域の治安の悪化が懸念されます。また、害虫や害獣のすみかになるなど地域衛生が悪化するおそれもあるでしょう。近隣の方から苦情を受けるなど、トラブルに発展する可能性もあります。

6.取り壊すと余計に費用がかかる

実家を取り壊すと費用がかかります。費用の目安は、建物の大きさや構造によりますが、木造の場合は坪単価3~5万円、鉄筋コンクリート造なら6~8万円程度かかるでしょう。

また、建物を取り壊し、土地だけになると特例措置を受けられなくなるため、固定資産税が増額してしまいます。

実家を相続したくない場合の対処法

実家を相続しない場合、主に以下のような方法があります。

1.相続放棄をする

「実家の他にほとんど遺産がない」「多額の借金があり、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多い」という場合は相続放棄をするとよいでしょう。相続放棄をすれば、実家の相続をせずに済み、さまざまなリスクを負うこともありません。

ただし、全ての遺産についての相続権を放棄することになるため、相続したい遺産がある場合には向きません。相続放棄の注意点も理解したうえで、本当に相続放棄をしてよいのか、慎重に検討しましょう。

2.他の相続人に相続してもらう

遺産分割協議で他の相続人に実家を相続してもらえば、ご自身は実家を相続する必要がありません。実家の相続を希望する相続人がいる場合は譲るとよいでしょう。

3.親の生前に売却してしまう

親が健在のうちに売却してしまえば、実家の相続自体が発生しません。現金で相続するため、遺産分割もスムーズに行えるでしょう。

ただし、現金で相続した場合、不動産のまま相続する場合よりも相続税評価額が高くなり、相続税も高くなる可能性があります。

4.実家以外の遺産を生前贈与してもらっておく

親が健在であるうちに、実家を除く財産を生前贈与してもらえば、相続発生時には実家だけを相続放棄できます。

ただし、生前贈与をした場合、贈与税が発生します。また、2,500万円の生前贈与まで贈与税が加算されない「相続時精算課税制度」を利用した場合は、相続放棄をしても相続税がかかるという点に注意しましょう。

相続放棄をする場合の注意点

相続放棄にはあらかじめ理解しておくべき注意点がいくつかあります。以下のことを理解したうえで、本当に相続放棄をするべきか慎重に検討してください。

1.全ての遺産の相続を放棄することになる

相続放棄をした場合、プラスの財産もマイナスの財産も相続できません。実家の相続だけを放棄して他の財産を相続することはできないという点は認識しておきましょう。

2.申し立て期限は3ヵ月

相続放棄を選択する場合、自分が相続人となったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。申し立て期限を過ぎると、原則として受理してもらえないので注意しましょう。

3.一度受理されると撤回はできない

相続放棄を申し立て、裁判所に認められると撤回はできません。後から莫大な遺産が見つかったとしても、相続できないのです。そのため、すべての遺産の内容をしっかり調査したうえで判断することが大切です。

4.遺産に手をつけない

遺産を消費したり処分したりすると、全ての遺産を相続する「単純承認」を選択したとみなされるため、相続放棄はできなくなります。相続放棄を検討している場合は、安易に遺産に手をつけないように気を付けましょう。

実家を相続せざるをえない場合の対処法

相続放棄をできず、さらに、他に実家の取得を希望する相続人もいない場合は、ご自身が相続せざるをえません。そのような場合は、以下の対処法を検討するとよいでしょう。

1.相続後に売却する

実家に誰も住まず、活用する予定もない場合、できる限り早い時期に売却を検討するとよいでしょう。売却して手放してしまえば、税金を支払ったり、建物を管理したりする負担から逃れられます。

ただし、立地条件などによっては売却が難しいケースもあるので、相続が発生する前に、信頼できる不動産業者に相談するとよいでしょう。相続発生後であっても、諦めずに買い取りを専門とする業者などに相談してみましょう。

2.相続後に寄付する

売却が難しい場合は自治体や法人などに寄付できないか確認してみましょう。ただし、寄付させてもらえるケースは非常にまれです。

隣人に譲るのも一つの方法です。その場合、個人への寄付には贈与税が発生するという点に注意しましょう。

3.活用する

不要な実家は以下のような方法で活用できる可能性もあります。

  • 賃貸物件にして貸し出す
  • 高齢者施設にする
  • トランクルームにする
  • 取り壊して駐車場にする
  • 農地にして貸し出す

上に挙げたのは一例です。他にも活用できる方法があるかもしれませんので、検討してみましょう。

4.土地なら国庫に帰属させる

実家を取り壊して、土地だけの状態にし、「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法もあります。これは、相続した不要な土地を国に返せる制度で、2024年4月から開始されました。ただし、要件を満たさなければ利用できず、利用できる場合でも20万円程度の費用がかかります。

また、実家を取り壊して土地だけの状態にすると、固定資産税が増額されます。取り壊しをする前に、本当にこの制度を利用できるのかしっかり確認しましょう。

相続した実家を売却する場合のコツ

相続したくない実家を相続せざるをえない場合は、相続後に売却することが最も望ましい方法だといえます。少しでも相続の負担やトラブル発生のリスクを減らすためにも以下のことを心がけましょう。

1.売却は相続後できる限り早めに

実家を相続したらできる限り早い時期に売却しましょう。時間が経過するほど、固定資産税や管理の負担が増えるだけでなく、建物の老朽化が進み、維持費や修繕費がかさみます。余分な費用の支払いをしないためにも、できるだけ早急に売却しましょう。

2.信頼できる不動産会社に相談する

実家の売却をする場合、不動産会社は慎重に選びましょう。

不動産会社を選ぶ際は、実家と似たような物件の取り扱い実績が豊富にあるかどうかを確認してください。

また、実際に物件の査定を依頼して、評価の根拠や、売却を依頼した場合の販売戦略などについて説明を受けたうえで信頼できる不動産会社なのかを見極めることが大切です。

まとめ

今回は、相続したくない実家を相続するデメリット、実家を相続したくない場合の対処法、相続放棄をする場合の注意点、実家を相続せざるをえない場合の対処法、実家を相続後に売却する場合のコツなどについて解説しました。

誰も住まず、活用もできない実家を相続すると、経済的な負担やリスクを負うことになります。実家の相続でお悩みの方は、信頼できる不動産会社に相談して、早期に売却することが望ましいでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。相続したくないご実家の相続に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一