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2024.08.30

山林を相続するメリットとデメリット・相続税の計算方法も解説

山林を相続するメリットとデメリット・相続税の計算方法も解説

親の遺産に山林が含まれている場合、「相続しても大丈夫なのだろうか」と不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

山林は事業などで活用できれば収益を得られる可能性がありますが、管理の負担が大きい、固定資産税がかかるなどのデメリットもあります。

今回は、山林を相続するメリットとデメリット、相続するか決める際の判断基準、相続する場合の手続き、相続税の計算方法などについて解説します。

山林を相続するメリットとデメリット

遺産を相続する際に大切なのは「その財産を得ることでどうなるのか」を把握しておくことです。「こんなはずではなかった」などと後悔しないためにも、まずは山林を相続するメリットとデメリットについて知っておきましょう。

1.山林を相続するメリット

山林の相続による大きなメリットは、収益を得られることです。収益化の手段としては、主に以下のような方法が挙げられるでしょう。

  • 林業を営む
  • 太陽光発電事業をする
  • 貸し出す

山林があれば木材を売却して、林業を営むことが可能です。日当たりの良い斜面など、ソーラーパネルを設置できる場所があれば、電気事業を営むこともできるでしょう。また、自分で事業を行わなくても、他の林業会社などに貸すことで収益を得られる可能性もあります。

2.山林を相続するデメリット

一方、山林の相続には以下のようなデメリットもあります。

  • 収益化は容易ではない
  • 管理に手間がかかる
  • 固定資産税を負担しなければならない
  • 売却が難しい

山林を活用して収益を得るのは簡単ではありません。木材価格の下落もあり、林業の採算性は良いとはいえないからです。太陽光発電事業を始める場合は、初期投資が必要になるうえ、維持管理にかなりの手間と費用がかかるでしょう。

また、所有しているだけでも、適切な管理が必要です。万が一、山林でのトラブルによって他人に損害を与えれば賠償責任を問われる可能性もあります。固定資産税も毎年支払わなければならず、山林の相続によって出費が増えるでしょう。

さらに、山林は需要があまりなく、売却が難しいこともデメリットといえます。買い手が見つかったとしても、敷地の広大さに比べると売却価格は低く、納得できない取引になることも少なくありません。

山林を相続するか決める際の判断基準

遺産に山林が含まれている場合、相続するかどうかは以下の点を考慮して検討するとよいでしょう。

1.活用予定はあるか

何らかの活用予定があるなら、相続するとよいでしょう。林業や太陽光事業の他にも、きのこや山菜の栽培をしたり、都市から近い場所であれば、キャンプ場を経営したりする方法も考えられます。ただし、どのように活用するにしても、費用がかかります。採算が取れるかどうか事前によく検討することが大切です。

2.売却の見込みはあるか

相続後すぐに売却したいと考えている場合、「売れる見込みはあるか」「売却によって損失が生じる可能性がないか」という点を慎重に検討してください。

山林は容易に売却できるものではありません。高値での取引は難しい上、売却費用もかかるため損をするかもしれません。売却するつもりで相続すると、後悔する可能性があるので注意しましょう。

3.相続財産をトータルで見てマイナスが上回るか

山林を相続したくない場合、相続放棄を検討する方もいらっしゃるでしょう。しかし、相続放棄を選択する場合、全ての遺産についての相続権を放棄することになります。山林の相続のみを放棄することはできません。

そのため、相続放棄を検討する際は、慎重に判断しましょう。以下のような場合は、積極的に相続放棄を検討するとよいでしょう。

  • 明らかに債務超過である
  • 他の相続人と関わりたくない
  • 特定の人に遺産を集中させたい

山林を相続する場合の手続き

山林を相続する場合、通常の不動産相続と同様に、相続登記や、自治体への届け出が必要です。必要な手続きについて説明します。

1.法務局で相続登記をする

山林に限らず、不動産を相続した場合は法務局で相続登記手続きをしなければなりません。2024年(令和6年)4月1日より相続登記の義務化が始まりました。相続発生から3年以内に登記をしなければ過料が科されることもあります。

以下の必要書類をそろえて、山林の所在地を管轄する法務局で手続きをしましょう。

【相続登記に必要な書類】

  • 登記申請書
  • 亡くなった人の戸籍謄本と住民票
  • 法定相続人全員の戸籍謄本
  • 山林の固定資産税評価証明書
  • 山林を相続する人の住民票
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • (遺産分割協議書がある場合)法定相続人全員の印鑑証明書

必要書類の収集には手間がかかり、慣れない方にとっては難しく感じられる場合もあるでしょう。その場合は、専門家に相談することをおすすめします。

2.自治体に届け出る

2012年(平成24年)4月1日以降、新たに山林の所有者となった場合には、90日以内に所在地の市町村長に届け出をすることが義務付けられました。怠ったり、虚偽の届け出をしたりすると、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。相続登記が終わったら、必ず「森林の土地の所有者届出書」を提出して届け出ましょう。

参考:森林の土地の所有者届出制度(林野庁公式サイト)

山林を相続した場合にかかる相続税

遺産を相続した場合、相続税のことも気になるでしょう。山林の相続にかかる相続税について説明します。

1.山林の種類と相続税評価額

相続税算出の基となる相続税評価額の算出方法は、山林の種類によって異なります。種類ごとの相続税評価額の計算方法は以下の通りです。

山林の種類 種類の説明 相続税評価額の計算方法
純山林 市街地から離れたところにある山林。宅地の価額変動の影響がほとんどない。 倍率方式
中間山林 市街地近郊にある山林。純山林より価額の高い。 倍率方式
市街地山林 都市計画法上の市街化くいきにある山林。宅地の価額変動の影響を受けやすい。 倍率方式、または宅地批准方式

倍率方式とは、相続税評価額を以下の計算式で求める方法です。

固定資産税評価額=固定資産税評価額×倍率

計算式中の倍率は、国税庁の公式サイトで調べることができます。

また、宅地批准方式とは、相続税評価額を以下の計算式で求める方法をいいます。

固定資産税評価額=(宅地として評価した場合の1㎡あたりの価格−1㎡あたりの造成費)×山林の面積

計算式中の「宅地として評価した場合の1㎡あたりの価格」は国税庁の定める「財産評価基本通達20-2」に従って計算します。また、「1㎡あたりの造成費」は国税庁の公式サイト内の以下のページで調べることができます。求め方がわからない場合は、専門家に相談しましょう。

参考:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

法令解釈通達(地積規模の大きな宅地の評価)(国税庁公式サイト)

2.山林の経営をする場合は相続税が免除になることも

相続した山林を経営する場合、山林にかかる相続税のうち、課税価格の80%に相当する部分については納税が猶予されます。さらに、相続した方が亡くなるまで山林経営を続けた場合、相続時に猶予された税金の支払いは免除されます。

山林を相続したくない場合の対処法

「活用する予定もないし、売却も難しい」という場合、山林を相続しないことが望ましいでしょう。山林を相続したくない場合の対処法を2つ紹介します。

1.他の人に相続してもらう

他に相続人がいるなら、遺産分割協議によって他の人に相続してもらうという方法があります。ただし、ご自身が欲しくない財産は、他の方も相続したくないと思う可能性が高いでしょう。山林を相続してもらう代わりに、他の財産を多く取得してもらうなどの調整をしましょう。

2.相続放棄をする

相続放棄をすれば、最初から相続人でなかった場合と同じことになり、山林を相続する必要はなくなります。ただし、全ての遺産の相続を放棄することになるので、他の財産も相続できません。相続放棄の手続きをした後は撤回ができないため、後から大きな財産が見つかっても相続できません。

相続放棄を検討する場合は、専門家に相談しながら慎重に判断することをおすすめします。

相続した山林を手放したい場合の対処法

既に山林を相続したけれど手放したいという場合は、以下の方法を検討するとよいでしょう。

1.売却する

最も望ましいのは売却することです。しかし、山林は買い手が見つかりにくいので、売却は難しいケースが多いでしょう。

2.寄付する

売却ができない場合は、無償で贈与することを検討してもよいでしょう。他に共有者がいる場合はその方に、いない場合は地元の方に相談してみると引き取ってもらえるかもしれません。

自治体や森林協会などに引き取ってもらえる場合もありますが、活用が難しい場合は断られる可能性が高いでしょう。

3.買い取ってもらう

山林の買い取りを行なっている不動産業者もあります。そのような不動産業者を探して相談するという方法もあります。

ただし、買い取り金額は期待できないこと、必ずしも応じてもらえるとは限らないことに注意が必要です。

4.相続土地国庫帰属制度を利用する

相続土地国庫帰属制度とは、相続後に活用も売却もできない土地を国に引き取ってもらえる制度です。他の方法では処分できない場合、検討するとよいでしょう。

ただし、要件を満たさなければ利用できません。引き取ってもらえる場合、負担金がかかることにも注意が必要です。

参考:相続土地国庫帰属制度について(法務省公式サイト)

まとめ

今回は、山林を相続するメリット・デメリット、相続するか決める際の判断基準、相続する場合の手続き、相続税の計算方法などについて解説しました。

山林の相続にはさまざまな懸念点があります。相続するかどうか選択の余地がある場合は、慎重に検討した方がよいでしょう。

また、活用予定がない山林を相続してしまった場合、処分が難しいため、大きな負担になる可能性があります。専門家からアドバイスを受けながら対策を考えましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。山林の相続に関する相談にも応じておりますので、お気軽にお問い合わせください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一