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2023.10.04

二世帯住宅の相続の注意点は?相続税の節税方法・相続トラブル対策も解説

二世帯住宅の相続の注意点は?相続税の節税方法・相続トラブル対策も解説

「親が遺してくれた不動産が二世帯住宅なのだけど、相続はどうなるの?」
「親と住む二世帯住宅を建てよう考えているのだけど、相続で得になることはあるの?」
など、二世帯住宅の相続について疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

二世帯住宅の相続は、普通の不動産相続と変わりません。小規模宅地の特例を適用することにより相続税の節税もできます。ただし、通常の不動産よりもさらに分割がしにくい分、相続人同士でのトラブルが起きやすいなど、注意が必要な点もあります。

今回は、二世帯住宅の相続における注意点、小規模宅地の特例による相続税の節税方法、二世帯住宅の分割方法などについて解説します。

二世帯住宅の相続は普通の不動産と変わらない

二世帯住宅の相続は、一般的な不動産の相続と変わりません。親の名義となっている部分について相続人同士で遺産分割協議を行い、相続人や分割方法を決めて相続手続きを進めます。
相続税の計算についても、一般的な不動産と同様です。相続税評価額の総額から以下の計算式で算出できる相続税の基礎控除額分を超えた部分について課税されます。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

また、二世帯住宅の土地と建物の相続税評価額は、以下のように計算するのが一般的です。

【土地の相続税評価額の算出方法】
① 路線価方式の場合
相続税評価額=路線価×土地の面積
② 倍率方式の場合
相続税評価額=固定資産税評価額×倍率
路線価方式と倍率方式のどちらで計算すべきかについては、国税庁公式サイトの以下のページで調べられます。

【建物の相続税評価額の算出方法】
相続税評価額=固定資産税評価額

参考URL:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

二世帯住宅は小規模宅地の特例で相続税を節税可能

二世帯住宅であっても、小規模宅地の特例が適用されて大幅に節税できる可能性があります。ただし、特例が適用されるためには、二世帯住宅の構造についての条件を満たす必要があるので注意しましょう。

1.小規模宅地等の特例とは

小規模宅地の特例とは、相続した土地のうち、故人が亡くなる直前まで住んでいた土地や事業用の土地、故人と生計を共にしていた親族の居住用の土地や事業用の土地などに適用できる特例です。該当する土地の一定の面積について、その相続税評価額を大幅に減額できます。

適用対象となる土地の面積や減額割合は土地の利用区分によって異なりますが、居住用の土地であった場合は、330㎡を限度として80%減額できます。この特例は二世帯住宅であっても適用可能です。そのため、相続税対策として二世帯住宅を活用する方もいらっしゃいます。

2.小規模宅地の特例が適用される要件

故人の所有していた宅地であれば無条件で特例が適用されるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。相続する土地の区分と、相続人ごとの要件は以下のとおりです。

土地の区分 土地の相続人 要件
故人の居住用の土地 故人の配偶者 なし
故人と同居していた親族 故人が亡くなる前から相続税の申告期限まで当該建物に居住していて、かつ、相続開始から相続税申告期限まで保有していること
故人の配偶者、同居の親族以外の親族 下記の要件を全て満たすこと。
①外国居住者の場合、日本国籍を有していること
②故人に配偶者がいない
③故人が亡くなる直前に相続人のうち誰も故人宅に住んでいなかった
④故人が亡くなる前3年以内に日本国内にある自身または、自身の配偶者の持ち家に住んだことがない
⑤故人が亡くなった時に住んでいる家を相続開始前に所有していたことがない
⑥相続開始から相続税の申告期限まで保有する
故人と生計を一にしていた親族の居住用の土地等 故人の配偶者 なし
故人と生計を一にしていた親族 故人が亡くなる前から相続税の申告期限まで当該建物に居住していて、かつ、相続開始から相続税申告期限まで保有していること

二世帯住宅であれば、相続人は故人の配偶者、または子どもであるのが一般的です。故人の配偶者が相続する場合に満たすべき要件はありませんが、相続人が子どもである場合は、故人が亡くなる前から相続税の申告期限まで当該建物に居住していて、かつ、相続開始から相続税申告期限まで保有していなければなりません

3.特例を適用できる場合・できない場合

故人の子どもが二世帯住宅を相続する場合、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、故人が亡くなる前に故人と同居していたという事実がなければなりません。その判断の基準として重要なのが登記状況です。

「区分所有建物登記」がされていれば、別居しているとみなされ、特例の適用は認められません。区分所有建物登記とは、「1階部分の所有者は親、2階部分の所有者は子ども」などと分けて登記することです。この場合、同じ建物に住んでいても、同居していたとみなされる可能性は低いでしょう。また、親と子どもが別棟に住んでいた場合も別居と判断される可能性が高いです。

一方、建物の名義が親の名義か親と子どもの共有名義であれば、どんなタイプの二世帯住宅でも問題ありません。玄関が2つある「完全分離型」、玄関が1つで全ての設備を共有する「完全共有型」、玄関が1つで一部の設備を共有する「部分共有型」のいずれのタイプでも特例の適用を受けられます。

4.小規模宅地の特例を利用するための注意点

小規模宅地の特例によって節税効果を得るためには以下の点に注意しましょう。

①控除内でも相続税は必ず申告

特例の適用を受けるには、相続税申告書の提出が必要です。小規模宅地の特例を加味して計算した相続税評価額の総額が、相続税の控除額以下であったとしても、相続発生後10ヵ月以内に申告しましょう。

②申告期限まで処分しない

故人の子どもが相続する場合、特例の適用を受けるには、相続税申告期限まで二世帯住宅を保有しておかなければなりません。売却する場合、相続税申告期限後に行うようにしましょう。

二世帯住宅は子どもが相続すると得になるケースが多い

二世帯住宅に限らず、小規模宅地の特例を適用できる場合、不動産は子どもが相続することをおすすめします。相続全体を考えると、一次相続で子どもが相続した方が得になるケースが多いからです。

配偶者が相続すれば、配偶者控除によって1億6,000万円まで控除できます。相続税が0円になる可能性も非常に高く、お得なように思えますが、配偶者の相続である二次相続時に相続税が高額になる可能性が高いです。

二次相続では、一次相続で配偶者が相続した財産に加えて、配偶者本人の財産も加わるため、相続税の基となる遺産総額が高くなる傾向にあります。さらに相続人が一人減る分、基礎控除額が小さくなるうえ、配偶者控除も使えません。

二世帯住宅の分割方法と相続トラブル対策

不動産はただでさえ平等な分割が難しく、相続トラブルが起きやすいです。二世帯住宅ではさらに分割が難しく、相続人間での争いに発展しやすいでしょう。
二世帯住宅の分割方法と、トラブルを未然に防ぐための対策について紹介します。

1.二世帯住宅を兄弟で相続する際の分割方法

二世帯住宅を兄弟で相続する方法としては、下記の4つの方法が挙げられます。

①現物分割

現物分割は、二世帯住宅以外に同程度の価値のある財産がある場合に有効な分割方法です。相続人の一人が二世帯住宅を取得する代わりに、他の相続人は別の財産を相続して、公平性を実現します。

②代償分割

代償分割は、一人の相続人が二世帯住宅を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払って、平等な遺産分割を実現する方法です。代償金額は二世帯住宅の評価額に相当するため、相続人に十分な資力がなければ選択できません。

③換価分割

換価分割は、二世帯住宅を売却し、その売却金を相続人全員で平等に分割する方法です。
二世帯住宅の場合、すでに居住している相続人がいるために、売却の同意を得ることが難しいケースも多いでしょう。売却には相続人全員の同意が必要なため、難航する可能性があります。
また、二世帯住宅は需要が限られるために、通常の不動産よりも売却が難しい傾向にあります。そのため、期待していた金額で売れない可能性や、売却に時間がかかる可能性があるという点に注意が必要です。

④共有

親の持ち分を相続人全員で分割して共有登記する方法もあります。平等な分割を実現できますが、次の代の相続では相続人が増えて権利関係が複雑になる可能性があるうえ、売却が難しくなるなどの問題があるため、あまりおすすめできる方法とはいえません。

2.親の生前にできるトラブル対策

二世帯住宅は相続トラブルが起こりやすいため、親が生前から対策をしておくことが望ましいでしょう。有効なトラブル対策を紹介します。

①親と相続人全員でよく話し合ってから建てる

最も望ましいのは、二世帯住宅を建てる前に、相続について親と兄弟姉妹全員でよく話し合っておくことです。「二世帯住宅は誰に住んでもらいたいのか」「他の財産はどうするのか」など、親は自分たちが考えている相続内容を具体的に伝え、それについて全員が納得できるまでよく話し合ったうえで建てましょう。

相続発生前であれば、親の意向も踏まえることができ、不満があれば直接訴えられるため、遺産分割協議よりも話がまとまりやすいはずです。

②遺言書を残しておく

親と相続人全員での話し合いが難しい場合は、遺言書を作成し、自分たちの意思を残しておくとよいでしょう。遺言書があれば、その内容が何より優先されるため、相続人同士のトラブル回避に効果的です。

ただし、遺言書に法的効力を持たせるためには、法律で定められた形式に従って作成する必要があります。遺言書が無効にならないためにも、専門家に相談しながら作成することをおすすめします。

まとめ

今回は、二世帯住宅の相続における注意点、小規模宅地の特例による相続税の節税方法、二世帯住宅の分割方法などについて解説しました。

二世帯住宅の相続は通常の不動産と変わりはありません。評価方法も同じですし、小規模宅地の特例の適用も受けられます。ただし、平等な遺産分割の実現が難しく、相続トラブルが起きる可能性は高いといえます。そのため、可能であれば、親が生前に何らかの対策を講じておくことが望ましいでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。二世帯住宅の相続に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一