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2024.05.20

欠陥住宅を相続した場合の対処法・契約不適合責任を問う方法も解説

欠陥住宅を相続した場合の対処法・契約不適合責任を問う方法も解説

相続した建物が欠陥住宅であることが発覚した場合、「遺産分割協議のやり直しはできないか」などと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相続した建物に欠陥が見つかった場合、他の相続人に対して、その相続分に応じて契約不適合責任を問うことが可能です。損害賠償請求により、修繕に掛かった費用の負担などを求められます。ただし、他の相続人には1年以内に通知しなければならない等の注意点もあるので、基本的な知識は把握しておくことが望ましいでしょう。

また、換価分割を行って、売却した相続不動産に欠陥が見つかった場合は、相続人全員に契約不適合責任が生じます。後からトラブルが生じないようにするためにも、あらかじめ対策を講じておくことが大切です。

今回は、相続した物件が欠陥住宅だった場合のリスクと対処法、損害賠償請求する場合の事例と注意点、相続後に契約不適合責任を生じさせないための対策、換価分割後に契約不適合責任を問われないための注意点などについて解説します。

相続した物件に欠陥が見つかってお困りの方や、相続不動産の売却にあたり契約不適合責任が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

相続した物件が欠陥住宅だった場合のリスクと対処法

相続した不動産に欠陥があった場合、その不動産を相続した人は多額の修繕費が必要になるなど、損害を被ることになります。平等だったはずの遺産分割が不平等なものとなり、不満を感じる方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合は、以下のような方法により解決を図ることができる可能性があります。

1.相続人は相続分に応じて契約不適合責任を負う

契約不適合責任とは、取り引きの目的物に、契約時には聞かされていなかった不備があった場合に、売主に対して生じる責任のことです。相続の場合は、相続人全員が売主と同じ立場になるため、相続した不動産に欠陥があった場合は、相続人全員が契約不適合責任を負うことになります。

  • 「瑕疵担保責任」は民法改正で「契約不適合責任」に

「契約不適合責任」は、2020年4月に施行された改正民法で新たに定められた責任です。以前の民法では「瑕疵担保責任」として定められた内容に相当しますが、売主側に問える責任が増えました。改正前は、目的物に欠陥があった場合、買主には損害賠償請求権と解除権しか認められていませんでしたが、以下の2つの権利が認められるようになりました。

  • 追完請求権:売主に対して完全な目的物を引き渡すよう求める権利
  • 代金減額請求:不適合の程度に応じて代金額を減額するよう請求する権利

この権利を行使することにより、相続した物件が欠陥住宅であることが後から判明した場合も、他の相続人に対して責任を問うことが可能です。

2.他の相続人への損害賠償請求ができる

相続した不動産に欠陥が見つかった場合、被った不利益や過不足分について、他の相続人全員に損害賠償請求ができます。それぞれに請求できる金額は、各人の相続分の割合に応じて決まります。

3.解除(遺産分割協議のやり直し)

契約不適合責任は、解除という形で問うこともできます。相続の場合の解除とは、遺産分割協議のやり直しのことです。

ただし、どんな場合もできるわけではなく、何らかの理由で不動産を利用できない場合や欠陥のあった不動産しか遺産がないような場合に限られます。

欠陥住宅を相続した場合の損害賠償請求例

相続した不動産に欠陥が見つかった場合、各相続人の相続割合に応じて損害賠償請求ができます。ここでは、具体的にどのように請求できるか説明します。

被相続人の子であるA、B、Cの3人で遺産分割をし、Aが相続した実家に欠陥が見つかった場合について考えてみましょう。Aは修繕費に300万円を要したとします。

【例1:平等に遺産分割していた場合】

(相続の内容)

A:実家(評価額:2,000万円)

B:預金(2,000万円)

C:預金(500万円)、不動産(評価額:1,500万円)

この場合、修繕費は相続人全員で平等に分割することになり、Aは、BとCそれぞれに対して100万円ずつ請求できます。

【例2:遺産分割の割合が平等ではなかった場合】

(相続の内容)

A:実家(評価額:2,000万円)

B:預金(1,500万円)

C:預金(500万円)

この場合、修理費は遺産分割の割合に応じて負担することになります。すなわち、遺産分割は4:3:1の割合でされたことになるため、修繕費も同様の割合で負担することになります。具体的な金額は以下のとおりです。

A:150万円

B:112万5,000円

C:37万5,000円

他の相続人に欠陥住宅の損害賠償請求をする場合の注意点

相続した不動産に欠陥が見つかった場合は、他の相続人に対して損害賠償請求をしたり、遺産分割協議のやり直しを求めたりできますが、以下の点には注意が必要です。

1.通知期限は1年、請求期限は5年

相続不動産に欠陥があったことを理由に、他の相続人に対して損害賠償請求をしたい場合、通知と請求の2つの期限があることに注意しましょう。

損害賠償請求をするためには、まず、他の相続人に対して、契約不適合があったこと、すなわち相続した不動産に欠陥があったことを、欠陥に気づいてから1年以内に知らせる必要があります。期間内に通知しなければ、契約不適合の責任追及をできる地位を得られないため、損害賠償請求もできません。

さらに、実際に賠償金の請求をするためには、欠陥を見つけたときから5年以内、または不動産を相続したときから10年以内に請求を行う必要があります。この期限を経過すると、時効によって請求権が消滅するため、他の相続人への賠償金の請求はできません。

できる限り早めに行動しましょう。

2.資力がなく払えない場合は求償者が負担

損害賠償請求をしても、請求相手に資力がないために支払ってもらえないこともあるでしょう。そのような場合は求償者に支払ってもらうか、支払えない人の分を、他に資力がある人たちで、相続分に応じて負担してもらうなどの対応を求めることになります。

3.遺産分割協議をやり直せる場合は限られる

相続した不動産に欠陥が見つかった場合、遺産分割協議のやり直しを求めることもできます。しかし、法的安定性を理由として、一度成立した遺産分割協議のやり直しは容易に行うものではないとされています。相続不動産に欠陥があった場合も同様で、ほとんどの場合、損害賠償請求によって解決を試みることになるでしょう。

遺産分割協議がやり直しとなるのは、欠陥のあった不動産の遺産全体に占める割合が大半だった場合や、土地に借地権が付いていたために利用できない場合などに限られます。

相続後に契約不適合責任を生じさせないようにするには

遺産分割協議が無事成立しても、後から相続不動産に欠陥が見つかることで相続人同士のトラブルが発生する可能性もあります。そのような事態を防ぐためにも、あらかじめ対策をしておくことが望ましいでしょう。

1.遺言で言及しておく

被相続人が遺言書で契約不適合責任の所在について言及しておけば、万一、相続不動産に欠陥が見つかった場合でもトラブルを回避しやすくなります。

修繕費用を誰が負担するか指定したり、あまり資力がない相続人についてはその責任を免除または限定したりしておきます。

また、契約不適合責任の所在などについて指定できるのは遺言のみです。他の方法ではできないため、後のトラブルを防ぐためにも遺言に明記してもらうとよいでしょう。

換価分割後に契約不適合責任を問われないための注意点

遺産分割において、相続不動産を売却し、その売却金を相続人で分割する換価分割を採用する場合もあるでしょう。この場合、売却した相続不動産に欠陥が見つかると、契約不適合責任を問われる可能性があり、以下の点に注意が必要です。

1.欠陥住宅だった場合は相続人全員で対応する必要が生じる

売却した相続不動産に欠陥があった場合、その契約不適合責任は、相続人全員に対して生じます。そのため、欠陥が見つかった場合の対処法について、あらかじめ相続人全員で話し合っておくことが望ましいでしょう。費用の負担、責任の割合などについて話し合って決めておきましょう。

なお、売却前の相続登記では、手続き上、代表相続人一名のみをその所有者として登記するケースも多くあります。その場合でも責任の所在は相続人全員にあるので、売却前に対策を検討しておきましょう。

2.契約不適合責任を免除してくれる業者に売却すると安心

不動産業者に購入してもらう場合は、契約不適合責任を免除してもらえるケースも多くあります。売却後のトラブルを防ぐためにも、契約不適合責任を免除してくれる業者を探して売却すると安心です。

3.買主が個人の場合はインスペクションを入れる

買主が個人である場合、通常、契約不適合責任を免除してもらうことは期待できません。不安のない状態で売却するためにも、インスペクションを入れておくことをおすすめします。

インスペクションとは、建築士などの専門家によって建物の現状の検査を行ってもらうことです。欠陥の有無の他、修繕や改修の要否なども判断してもらえるため、安心して取り引きができるでしょう。費用は建物の面積などによって異なりますが、5万~10万円程度が相場です。

まとめ

今回は、相続した不動産の欠陥トラブル事例や対処法、損害賠償請求する場合の事例と注意点、相続後に契約不適合責任を生じさせないようにするための対策、換価分割後に契約不適合責任を問われないための注意点などについて解説しました。

相続不動産に欠陥が見つかると、相続人同士でのトラブルに発展するおそれがあります。無事に完了したと思っていた相続の問題が再発し、気が滅入ることもあるでしょう。そのような場合は、専門家に相談することをおすすめします。専門知識と過去の経験から培ったノウハウを駆使してスムーズに解決できるようサポートしてもらえるでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。相続後に見つかった不動産の欠陥に関する相談にも応じておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一