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2023.10.31

木造住宅を相続する際の注意点・評価額の計算方法と節税のコツ

木造住宅を相続する際の注意点・評価額の計算方法と節税のコツ

木造住宅を相続することになり、「木造住宅の相続税について知りたい」「木造住宅の相続は得なのか、損なのか知りたい」などとお考えの方もいらっしゃるでしょう。

木造住宅は、鉄筋コンクリート造の建物と比べると、耐用年数が大幅に短いため、資産価値は低くなりやすいです。しかし、資産価値が0円の物件でも、相続税は発生します。

今回は、木造住宅の相続税評価額の計算方法、木造住宅の相続税を節税する方法、資産価値のない木造住宅を相続するメリットとデメリットなどについて解説します。

時価0円の木造住宅でも相続税評価額は0円にならない

「時価0円の木造住宅であれば、相続税も発生しないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながら資産価値のない建物でも相続税は発生する可能性があります。なぜなら、相続税を算出する際の基準となる相続税評価額は、固定資産税評価額を基に算出されるものだからです。
固定資産税評価額は、文字どおり固定資産税額を算出する際の基であり、0円となることはありません。そのため、どんなに古い木造住宅であっても、相続税が発生する可能性はあるのです。

ただし、木造住宅を相続するからといって直ちに相続税が発生するわけではありません。相続税は、木造住宅を含めた遺産総額が、下記計算式で求められる相続税の基礎控除額を上回った場合にのみ発生します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

木造住宅の相続税評価額の計算方法

相続を考える際に、まず気になるのは、相続税額はどれくらいになるのかということでしょう。ここでは、相続税額を計算する際の基準となる相続税評価額の計算方法についてご紹介します。

1.亡くなった方が居住していた建物の場合

故人が居住していた木造住宅の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。

固定資産税評価額×1.0

固定資産税評価額は、毎年市町村から送られてくる固定資産税納税通知書で確認できます。家屋の欄にある「価格」または「評価額」が固定資産税評価額です。
納税通知書が見つからない場合は、不動産の所在地がある市区町村で固定資産税台帳を閲覧するか、固定資産税評価証明書を取得すれば確認できます。

2.他の人に賃貸していた建物の場合

故人が所有していた木造住宅を、誰か他の人に貸していた場合の相続税評価額は、以下の計算式で求めます。

固定資産税評価額×(1-借家権割合)

計算式中の借家権割合は全国一律で30%です。借家権割合が加味される分、故人が居住していた場合に比べて、相続税評価額は低くなります。

3.賃貸アパートの場合

故人が木造の賃貸アパートを所有していた場合、その相続税評価額は以下の計算式で算出します。

固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は、建物を賃貸していた場合と同様、30%です。
賃貸割合は、建物全体の床面積に対する賃貸している部屋の床面積の割合のことを指します。たとえば、賃貸アパートの全室分の合計床面積が300㎡、そのうち実際に入居者が使っている部屋の面積の合計が240㎡であれば、賃貸割合は240㎡÷300㎡=0.8=80%です。

4.亡くなる直前に増築やリフォームをした場合

亡くなる前に増築や改築をすると、その分は固定資産税評価額に反映されていないことがほとんどです。その場合、元々の固定資産税評価額に増改築分を加える必要があり、相続税評価額は以下の計算式で求めます。

増改築を行う前の固定資産税評価額+(増改築費用-死亡日までの償却費)×70%

上の式の「死亡日までの償却費」は以下の計算式で算出します。

死亡日までの償却費=増改築費用×90%×経過年数÷耐用年数

経過年数は1年未満の端数分は切り上げします。
耐用年数とは「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められている年数であり、木造建築の場合は22年です。なお、リフォームではなく、建物維持のための修繕であれば、この場合に該当しません。

参考URL:e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令

5.建築中だった場合

建物が建築中だった場合でも、相続税の課税対象となります。その場合の相続税評価額は以下の計算式で求めます。

相続時点までにかかった建築費用×70%

木造住宅は相続税評価額が低くなりやすい

木造住宅を相続すると、相続税が発生する可能性はあるものの、相続税評価額は低くなるケースが多いでしょう。
その理由は、相続税評価額の基となる固定資産税評価額の決め方にあります。

固定資産税評価額には、経年減点補正率が加味されます。経年減点補正率は、古い建物ほど下がるため、その分固定資産税額は下がります。木造住宅の場合、経年劣化が早い分、他の建築物よりも補正率が下がりやすく、固定資産税評価額は下がりやすいのです。その結果、相続税評価額も低くなりやすいでしょう。

相続税の計算方法

相続税の額は遺産ごとに算出するのではありません。相続する財産全ての相続税評価額を算出し、それらを合計して算出します。

また、木造住宅が建っている土地については、建物とは別で相続税評価額を算出しなければなりません。土地は、小規模宅地の特例などが適用されると大幅に相続税評価額を減額できる場合もあるので、利用できる特例について調べながら計算することをおすすめします。自分で計算するのが難しい場合は、専門家に相談しましょう。

木造住宅の相続税を節税するには

木造住宅に誰も住んでいない場合、または賃貸アパートである場合、以下のような方法で相続税を節税できる可能性があります。

1.誰も住んでいない場合は賃貸にする

親が介護施設に入ってしまったり、子どもと同居を始めたりしたために、元々住んでいた木造住宅に誰も住んでいない場合、第三者に貸すことで相続税を節税できます。貸家の場合の相続税評価額の計算式は「固定資産税評価額×(1-借家権割合)」なので、借家権割合の30%分安くなるのです。
ただし、親族に、無償または相場よりもかなり低い賃料で貸している場合は貸家とみなされないので注意しましょう。

2.賃貸アパートなら空室を減らす

木造住宅が賃貸アパートなら、空室を減らすことで相続税評価額を下げられます。賃貸アパートの相続税評価額の算出式は「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」です。借家権割合は一律で30%と固定されていますが、賃貸割合は空室を減らすことで上げることが可能です。賃貸割合が上がるほど、相続税評価額から割り引かれる率が大きくなるのです。

なお、賃貸割合は相続開始時点の入居状況で決まります。ただし、一時的に空室であった場合は賃貸割合の算出に含めても問題ありません。一時的な空室とみなされるかは、空室となっていた時期や募集状況などを総合的に考慮して判断されます。

資産価値のない木造住宅を相続するメリットとデメリット

「古い木造住宅を相続するのは得なのだろうか?」「重い負担がかかるのなら相続はしたくない」などと不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。ここでは、資産価値のない木造住宅を相続するメリットとデメリットについて説明します。

1.資産価値のない木造住宅を相続するメリット

古い木造住宅を相続するメリットとしては以下の3つが挙げられます。

①そのまま住める

耐用年数を過ぎていても住む分には問題ありません。固定資産税も安いため、定期的なメンテナンスをきちんと行っているなら、お得なケースもあるでしょう。

②リノベーションすれば賃貸できる

コストをかけてリノベーションすれば、貸し出すことで収益を得られる可能性があります。全面的に立て直さなくても、あえて古さを残して改築し、古民家風の建物とするのもよいでしょう。

③解体して活用できる

建物を解体して更地にし、駐車場を経営することもできます。駐車場であれば、維持管理のコストも手間もかかりません。効率よく活用できるでしょう。

2.資産価値のない木造住宅を相続するデメリット

古い木造住宅を相続するデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

①維持管理に費用と手間がかかる

建物をそのまま相続すれば、固定資産税のほか、光熱費等も支払い続けなければならず、コストがかかります。さらに庭の手入れや家の修繕も適宜行う必要があり、手間もかかるでしょう。特に相続する木造住宅が、自分の居住地から離れていると、維持管理のために通う労力もかかります。

②空き家にするのも問題

誰も住まない家は急速に老朽化が進みます。その結果、倒壊のリスクが高まり、周辺住民に迷惑をかける恐れもあるでしょう。万一、倒壊して通行人を巻き込んだり、破損によって怪我を負わせたりすれば損害賠償請求をされる可能性もあります。
さらに、自治体から「特定空き家」に指定された場合は、固定資産税額が大幅に増額するリスクもあります。

③売却が難しいこともある

古い家は需要が少なく、解体やリフォームが必要なケースも多いために、売却が難しいケースも少なくありません。相続した物件を手放したくても手放せず困るケースもあるでしょう。

3.相続するかは慎重に検討して決めよう

古い木造住宅を相続するかどうかは、判断が難しい場合も多いでしょう。
デメリットが気になり、相続放棄を考える方もいらっしゃるかもしれませんが、相続放棄を安易に選択することはおすすめできません。相続放棄をすると、全ての遺産についての相続権を放棄することになり、木造住宅以外の財産も相続できないからです。また、相続放棄したとしてもそれで終わりではなく、遺産の管理、処分のために、費用をかけて相続財産清算人選任の申立を行う必要もあります。
相続するかどうかは、資産価値のない住宅を相続するメリットとデメリットの両方をよく検討して判断しましょう。自分で判断するのが難しい場合は不動産会社や弁護士など専門家の意見を聞くことも大切です。

まとめ

今回は、木造住宅の相続税評価額の計算方法、木造住宅の相続税を節税する方法、資産価値のない木造住宅を相続するメリットとデメリットなどについて解説しました。

木造住宅は相続税評価額が低くなる傾向にあり、相続して上手く活用すれば収益を得られるなどメリットもあるでしょう。
しかし、リノベーションをしたり解体したりしなければ活用が難しく、そのままでは維持・管理に手間がかかります。空き家になってしまう可能性もあるでしょう。手放したくても売却が難しく、相続した方の頭を悩ませるケースも少なくありません。相続した木造住宅をどのようにすべきか迷った場合は、信頼できる不動産業者に相談することをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。木造住宅の相続に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一