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2023.07.07

不動産の共有名義とは?相続では選択すべきではない理由を解説

不動産の共有名義とは?相続では選択すべきではない理由を解説

遺産の中に不動産が含まれている場合、どのように分割すればよいかわからず、困ってしまう方も多いでしょう。公平性を保つためにも共有名義にしようと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、不動産を共有名義にして相続することはおすすめできません。相続人の間で公平性を保てるというメリット以上に、大きなデメリットが複数存在するからです。

今回は、不動産の共有名義の概要、共有名義で相続するメリットとデメリット、共有名義以外の不動産相続の方法、共有名義を解消する方法、共有名義の不動産の相続方法などについて解説します。

不動産の共有名義とは?

共有名義とは、一つの不動産を複数の人で所有することをいいます。

共有名義にする場合、登記の際に、それぞれの所有権の割合である持分を決めなければなりません。それぞれの持分は、遺産分割協議で決めた相続分の割合とするか、決まらない場合は均等とすることになるでしょう。

共有名義とした不動産の使用は、持分に関わらず自由に行うことができます。また、不動産の修繕や維持を目的とした手入れなどの保存行為は、各所有者が単独で行ってもかまいません。ただし、売却などの処分行為や建て替えなどの変更行為を行う場合は、所有者全員の同意が必要です。

不動産を共有名義で相続するメリット

不動産を相続する際のメリットとして、以下のことが挙げられます。

1.相続人間での争いが起こりにくい

相続財産に不動産が含まれていると、相続人同士の争いごとが起きやすいです。その原因は、不動産は分割できないため、公平な相続の実現が難しいことにあります。

不動産を共有名義にすれば、不動産を分割する必要がないため、公平な相続が実現しやすくなります。収益不動産である場合には、家賃収入も平等に分割できるため、争いが起きにくいでしょう。

不動産を共有名義で相続するデメリット

不動産を共有名義にしてしまうと、以下のような大きなデメリットがあります。共有名義にするかどうかは、デメリットについてしっかり理解した上で検討することが重要です。

1.売却や担保設定などの処分行為をしにくくなる

前述した通り、共有名義の不動産の売却や担保設定などの処分行為には、所有者全員の同意が必要です。そのため、所有者のうちの誰か一人が維持したいと主張した場合、他の所有者全員が売却を望んでいても、処分できません。ただし、自分の持分のみを売却することは自由にできます。

2.子どもや孫に迷惑をかける恐れがある

親の代で相続人同士の意見がまとまらず、とりあえず共有名義にすると、親が亡き後の遺産分割で下の世代に迷惑をかける可能性があります。世代が下になるほど、相続人の数が増え、権利関係が複雑になる可能性が高いからです。

例えば、親が3人兄弟で、それぞれ子どもが2人ずついるとします。親の代での相続人は3人ですが、その3人が全員亡くなれば、所有権はその子どもたちに相続され、相続人の数は6人に増えます。共有名義人の数が増えるほど、全員の意見が一致する可能性が低くなり、ますます処分が難しくなるでしょう。

3.活用も難しくなる

相続不動産に誰も住まないなら、賃貸物件にするなどして活用しようと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、共有名義の不動産の場合、貸し出しなどの管理行為をするには、共有持分の過半数からの同意が必要です。3人で共有しているなら、2人以上が同意しなければ過半数に達しないため貸し出しはできません。

また、リフォームをするにも共有持分の過半数から同意を得る必要があります。有効に活用できるはずの不動産も、共有名義人の意見が合わなければ活用できず、時間の経過とともに不動産価値も下落してしまいます。

4.特定の共有名義人に占拠されてしまう可能性もある

共有名義とした不動産は、持分にかかわらず、共有名義人が自由に使用できます。そのため、共有名義人のうちの一人が、不動産を独占して使用していても追い出すことはできません。

他の名義人も所有者であり、使用する権利があるため、占拠している共有名義人に家賃を請求するなど対価の支払いを求めることは可能です。しかし、相手が応じないケースも多く、裁判まで発展する可能性もあるでしょう。

不動産相続なら共有名義以外の方法がおすすめ

相続した不動産を共有名義とすると、複数の重大なデメリットがあるため、相続不動産は共有名義以外の方法で分割することをおすすめします。主な不動産の分割方法として、以下の3つがあります。

1.代償分割

代償分割は、相続人のうちの一人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法です。

例えば、評価額が5,000万円の不動産を被相続人が所有しており、相続人AとBという2人の子どもで代償分割取得する場合について考えてみましょう。不動産を取得するのはAとします。

この場合、法定相続分どおりに5,000万円を分割すれば、それぞれ2分の1の2,500万円ずつ取得するはずです。Aは5,000万円分の不動産を取得しますから、法定相続分より2,500万円分多く取得することとなり、この分を代償金としてBに支払うことになります。

①代償分割のメリット

他の相続人に代償金が支払われる分、相続における公平性が保たれたように感じられるため、相続人同士の争いは起きにくいでしょう。また、元々当該不動産に住んでいる人が取得すれば、そのまま住み続けられます。

  • 代償金を支払う分、他の相続人から不満が出にくい
  • 取得した相続人が元々被相続人と同居していた場合、そのまま住み続けられる

②代償分割のデメリット

  • 不動産を取得する相続人が、代償金を用意できなければ利用できない
  • 不動産の評価方法についてもめる可能性がある

代償分割は、代償金を用意できなければ実現できません。代償金は低額ではないため、用意するのが難しいケースも多いでしょう。

また、代償金の算出に用いる不動産評価額の決め方に決まりはありません。不動産業者などに査定してもらう場合がほとんどですが、業者によって査定額が異なるため、相続人同士での争いの原因になりやすいです。

2.換価分割

換価分割は、不動産を売却して売却金額を相続人で分割する方法です。

例えば、相続人が2人で、不動産を5,000万円で売却し、不動産会社に支払う仲介手数料や登記費用などの諸経費に400万円かかった場合、売却金額から諸経費を差し引いた4,600万円を2分の1ずつ分けることになります。

①換価分割のメリット

  • 実際に売却した金額を分けるので、わかりやすく、争いが起きる可能性が低い
  • 売却金を相続税の納税資金にすることも可能

換価分割の一番のメリットは、実際に手元に入った金額を分けるので、わかりやすいことです。平等な遺産分割を実現しやすいため、相続人同士の争いが起きる可能性も低いといえます。

また、特に遺産に不動産が含まれると、相続税が高額になるケースも多く、資金がなければ困ることも少なくありません。そのような場合に、納税資金として活用できる点も大きなメリットといえるでしょう。

②換価分割のデメリット

  • 譲渡所得税や仲介手数料など諸経費がかかる
  • 安値でしか売れない可能性もある

不動産を売却すれば、不動産会社への仲介手数料を支払う必要があるほか、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。他にも売却前には相続登記をする必要もあり、登記費用も必要になるでしょう。これらの諸経費が高くなれば、思ったよりも取得できる金額が低くなる可能性があります。また、不動産自体が予想よりも安値でしか売れないケースもあるでしょう。

3.現物分割

現物分割は不動産をそのままの形で分割する方法です。建物は分割できないため、土地にしか適用できません。

土地についても均等に分けられるとは限らず、その形状などで資産価値に差が出てしまう可能性もあります。その場合は、差に相当する分を現金で支払うケースが多いでしょう。

不動産の共有名義を解消したい場合の対処法

相続不動産を、よくわからないまま共有名義にしてしまい、後悔している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、共有名義を解消する方法もあります。

1.他の人の持分を買い取る

不動産を単独所有したい場合は、他の人の持分を買い取らせてもらえないか交渉してみましょう。その際、親族だからという理由で相場よりもあまりに低い価格で買い取ると、贈与とみなされ、贈与税の対象とされる可能性があります。そのような事態を避けるためにも、買い取り金額は相場の8割以上に設定するようにしましょう。

2.自分の持分を売却する

反対に、自分の持分を共有名義人に買い取ってもらう方法もあります。しかし、相手に資力があるとは限らず、難しいケースもあるでしょう。

第三者への売却も可能ではありますが、デメリットも大きいため、実際に売却できるケースはあまりありません。買い取り業者に対してなら売却できる可能性もあります。

また、持分を売却する際には、トラブルを避けるためにも、他の共有名義人に事前に相談しましょう。

3.共同で売却する

共有名義人全員の同意を得られる場合は、売却を検討しましょう。売却により得られた利益は、相続人間で平等に分けることができます。

共有名義となっていた不動産の相続はどうなる?

共有名義となっていた不動産を相続する場合、亡くなった共有者の所有権を相続人で分割することになります。

例えば、夫婦で不動産を共有しており、夫が亡くなった場合を考えてみましょう。持分割合はそれぞれ2分の1ずつ、相続人は妻の他に2人の子どもがいるとし、法定相続分どおりに分割するとします。この場合、相続分の取得割合を以下の表にまとめてみました。

相続人 法定相続割合 取得する持分割合 相続分取得後の持分割合
1/2 1/2(被相続人の持分割合)×1/2=1/4 1/4(相続で取得した持分割合)+1/2(元々所有していた持分割合)=3/4
子ども1 1/4 1/2(被相続人の持分割合)×1/4=1/8 1/8
子ども2 1/4 1/2(被相続人の持分割合)×1/4=1/8 1/8

このように権利関係は非常に複雑化します。

まとめ

今回は、不動産の共有名義とは何か、不動産を共有名義で相続するメリット、デメリット、共有名義以外の不動産相続の方法、共有名義を解消する方法、共有名義の不動産の相続方法などについて解説しました。

遺産に不動産が含まれていると、その相続を巡り相続人同士の争いが起きやすいです。遺産分割協議がまとまらないからと、とりあえず相続人全員の共有名義にするケースは多いですが、安易に共有名義にすると、後悔する可能性も高いです。共同名義にすることのデメリットを理解し、他の分割方法を選択することが望ましいでしょう。

相続人同士で話がまとまらない場合は、専門家に相談することをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「相続した不動産の評価額を知りたい」「相続した不動産を公平に分割する方法を詳しく知りたい」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一