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2023.07.24

相続不動産の買取の流れと注意点・節税対策も解説

相続不動産の買取の流れと注意点・節税対策も解説

親から不動産を相続したけれど、誰も住む予定がない場合、管理費用や固定資産税など経費ばかりがかさむため処分を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、田舎の実家など管理が難しい不動産は売却が難しく、買い取ってもらうしか方法がないこともあります。

相続不動産の買取は、他の相続人との間でトラブルを回避するために注意すべき点がいくつかあります。また、買取方法も通常の買取とは異なる点があります。事前に理解しておかないと、予期せぬトラブルにつながる可能性もあるため注意が必要です。

今回は、相続不動産の買取先、相続不動産の買取における注意点、相続不動産の買取方法、相続発生から相続不動産の買取までの流れ、相続不動産の買取での節税対策に活用できる特例、相続不動産の買取先が見つからない場合の対処法などについて解説します。

相続不動産の処分方法

相続した不動産を処分する方法には、売却と買取があります。それぞれについて解説します。

1.仲介業者に売却を依頼

不動産会社に仲介を依頼し、買主を探して売却する方法です。

まずは不動産業者に対象不動産を実際に見てもらい、いくらで売却できそうか査定してもらうことから始めます。そのうえで買い手を探してもらうための媒介契約を締結し、買い手を探してもらいます。買主が見つかれば、売買契約を締結、物件の引き渡し、決済をすれば取り引きは完了です。

2.買取業者に買取を依頼

不動産業者に仲介を依頼しても、買い手が付かないと予想されると、売却できません。そのような場合は、売却ではなく、買取を検討します。

買取とは、不動産業者に仲介ではなく、不動産そのものを買い取ってもらうことです。買取であれば、売却できなかった不動産も処分できる可能性があります。

ただし、買取価格は相場価格よりも大幅に安くなる傾向にあり、さらに不動産業者に買取のメリットがないと判断されれば、買取さえしてもらえないケースもあります。

相続不動産の買取における注意点

相続不動産の買取をしてもらう場合、以下の点に注意しましょう。

1.他の相続人にも配慮せねばならない

相続財産である限り、相続不動産の処分は自分の一存で決めるわけにはいきません。特に買取であれば、評価額や相場よりも低い金額での処分となる可能性が高く、相続人の中には納得しない方が出てくることもあるでしょう。

将来にわたる禍根を残さないためにも、他の相続人への配慮も怠らないことが大切です。

2.できるだけ早期に買取をしてもらうべき

相続不動産の処分はできるだけ早期に行うのが望ましいです。相続不動産の問題の解決に時間がかかりすぎると、そのまま放置してしまい、いつまで経っても処分できない可能性が高いからです。特に建物をそのまま放置して空き家にしてしまえば、固定資産税が6倍になるなどのデメリットもあります。

一方、早期に処分すれば、節税効果のある特例の適用対象となる可能性もあります。

3.買取後の瑕疵担保責任は負わないのが望ましい

瑕疵担保責任とは、不動産に何らかの欠陥が見つかった場合に負う責任です。瑕疵担保責任を負うこととすると、万一、買取後に欠陥が見つかれば、相続人全員で責任を負わなければなりません。

不動産業者に買い取ってもらうのであれば、売主側の瑕疵担保責任は免責とされるのが通常ですが、個人に買い取ってもらう場合は難しいケースもあるかもしれません。瑕疵担保責任を負わないためにも、不動産業者に買い取ってもらうことが望ましいでしょう。

相続不動産の買取方法

相続した不動産を買い取ってもらう前には、必ず相続登記を行い、不動産の名義を変える必要があります。その際の方法として、共有名義にする方法と、代表相続人を一人決めて、その方の名義にする方法があります。

1.相続人全員の共有名義で買取をしてもらう

相続人全員が売主として不動産を買い取ってもらう方法です。全員が買取に同意のうえで手続きを進められ、買取費用を公平に分担できるため、相続人同士でのトラブルは起こりにくいでしょう。

しかし、相続人全員分の署名、捺印が必要になるなど、人数が増える分手間がかかる点はデメリットといえます。

2.代表相続人名義で買取をしてもらう

相続人の中から代表者を決めて、その方の名義で買取をしてもらう方法です。代表相続人が単独で手続きを行えるため、手間がかからずスムーズに進められます。

ただし、不動産売却時に必要な確定申告を代表相続人のみが行わねばならない点は不公平であり、デメリットといえます。さらに、代表相続人には譲渡所得税がかかる上に、所得が増えたことにより、住民税が高額になる可能性がある点にも注意が必要です。

相続発生から相続不動産の買取までの流れ

相続が発生してから、相続不動産の買取をしてもらい、相続手続きが完了するまでの流れは以下のとおりです。

1.まずは遺言書の有無を確認

最初に被相続人の遺言書が残されているかどうかを確認しましょう。遺言書の有無によって、その後の相続手続きの流れが大きく変わるからです。

遺言書が残されていた場合は、家庭裁判所で遺言書の検認手続きを行った後、遺言書の内容に従って遺産分割を進めましょう。

一方、遺言書が残されていなければ、相続人と相続財産を調査、確認のうえ、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

2.相続人・相続財産調査

遺言書が残されていなければ、遺産分割協議を行う前に、相続人と相続財産の調査をします。

相続人調査は、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本類を確認し、相続人に該当する人を確定する作業です。遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効になるため、「親族のことだし、わざわざ調べなくてもわかっている」と思っても、必ず調査しましょう。

また、財産調査をして、相続財産を全て把握する必要があります。遺産分割の対象になるのは、現金や不動産などプラスの財産だけではありません。債務などマイナスの財産も含まれます。遺産分割協議の前提として重要なので、しっかり調査しましょう。

特に相続財産に不動産が含まれる場合は、その評価額の算出が難しいケースも多くあります。ご自身ではよくわからなかったり、不安に思ったりする場合は、専門家に相談しましょう。

3.遺産分割協議

相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。「協議」とはいえ、相続人全員が一堂に会して話し合う必要はありません。遺産分割方法について全員の合意さえ得られれば、どのような方法で話し合おうと自由です。電話やメールでの協議でも問題ありません。

遺産分割について、全員が合意すれば、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員の署名、捺印のほか、全員分の印鑑証明の添付も必要です。その後の相続手続きで必要な書類でもあるため、必ず正しく作成しましょう。

4.不動産の相続登記

遺産分割協議によって、不動産の分割方法や相続人が決まったら、相続不動産の名義変更手続きである相続登記を行います。相続不動産の所在地を管轄する法務局に登記申請書などの必要書類を提出し、手続きを進めましょう。法務局から登記識別情報通知書を受け取れば完了です。

5.相続税の申告・納税

相続財産の相続税評価額の合計が、相続税の基礎控除額を超える場合は、相続の発生を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続税の申告と納税をする必要があります。相続税の基礎控除額は以下の計算式で算出します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

6.相続不動産買取

相続した不動産の買取も速やかに進めましょう。

不動産の買取は、まずは業者への査定の依頼から始めますが、査定だけなら相続登記が完了する前でも依頼できます。不動産の買取までには時間がかかるうえ、期限内に譲渡すれば節税効果のある特例を適用できる可能性もあるため、なるべく早期に着手することをおすすめします。

7.確定申告も忘れずに

相続不動産を買い取ってもらい、譲渡所得が発生すれば、売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告の手続きをしなくてはなりません。特例を適用する場合にも、必要であるため、忘れず行うようにしましょう。

相続不動産の買取での節税対策に活用できる特例

不動産を買い取ってもらうと、譲渡所得税がかかります。特に相続した不動産であれば、すでに相続税を支払っていることも多く、少しでも節税を試みたいものです。

ここでは、相続不動産の買取で節税効果が期待できる二つの特例を紹介します。どちらの特例も適用するには期限が設けられているため、早めに買取を進めるのが望ましいでしょう。

1.相続財産の取得費加算の特例

相続のあった日の翌日から3年10ヵ月以内に買い取ってもらえば、支払った相続税を不動産の取得費に加算でき、課税対象となる譲渡所得を減らすことで節税効果を期待できる特例です。下記の適用要件を満たす場合は、積極的に利用を検討するとよいでしょう。

  • 対象不動産が相続や遺贈によって取得したものであること
  • 対象不動産を取得した人が相続税を支払ったこと
  • 対象不動産を、相続のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに買い取ってもらったこと

2.相続空き家の特例

平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却し、さらに他の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円が控除される特例です。譲渡所得額の計算式は下記のとおりで、買取金額が3,000万円を下回る場合は、譲渡所得税額が0円になります。

譲渡所得額=買取価格-(買取費用+取得費)-3,000万円

適用要件を満たす場合は積極的に利用を検討するとよいでしょう。詳しい適用要件については、国税庁の公式サイトの以下のページをご確認ください。

参考URL:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁公式サイト)

相続不動産の買取先が見つからない場合の対処法

管理が難しい不動産は、買取を断られるケースもあります。そのような場合は、どうすればよいのでしょうか。対処法について説明します。

1.空き家バンクを活用する

空き家バンクとは、自治体が運営するサービスです。空き家を売りたい人や貸したい人が登録し、その登録情報を自治体が公式サイトなどで公開、提供することで、買主や借主を探せます。

仲介手数料や登録料などはかからないので利用しやすい一方、認知度が低いこともあり、買主は見つかりにくいでしょう。また、買主が見つかったとしても、自分で交渉しなければならない点には注意が必要です。

2.国に引き取ってもらう

土地であれば、相続土地国庫帰属制度を利用して、国に引き取ってもらえます。ただし、建物がある場合は解体する必要があるうえ、申請には1万4,000円の手数料がかかるほか、20万円程度の負担金も必要です。

条件や審査も厳しいですが、不要な土地を確実に手放せるため、検討に値する制度といえるでしょう。

まとめ

今回は、相続不動産の買取先、相続不動産の買取における注意点、相続不動産の買取方法、相続発生から相続不動産の買取までの流れ、相続不動産の買取での節税対策に活用できる特例、相続不動産の買取先が見つからない場合の対処法などについて解説しました。

不要な相続不動産はできる限り早期に処分するのが望ましいです。売却が難しい場合は、積極的に買取を検討するとよいでしょう。

特に相続不動産を早期に売却すると、特例の適用を受けることができ、譲渡所得税を節税できる可能性もあります。不明な点があったり、他の相続人との間で話がまとまらなかったりしてスムーズに進められない場合は、専門家に相談して早期解決を図ることをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「不動産を相続したけれど売却するべきか迷っている」「他の相続人との間で意見が対立して困っている」などの相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一