06-6585-0560
受付時間9:00〜21:00(年中無休)
ホーム  >  コラム  >    >  市街化調整区域の不動産は相続すべき?相続後に処分する方法も解説
2024.10.29

市街化調整区域の不動産は相続すべき?相続後に処分する方法も解説

市街化調整区域の不動産は相続すべき?相続後に処分する方法も解説

親の所有する不動産が市街化調整区域にあり、相続した場合、活用や処分はできるのだろうかなどと不安に思われている方もいらっしゃるでしょう。

市街化調整区域の不動産は、自由に建築や建て替えができるわけではなく、住む場合は生活が不便というデメリットがあります。一方で、固定資産税が安く、静かで落ち着いた環境で暮らせるなどのメリットもあります。

今回は、市街化調整区域の概要、市街化調整区域の不動産を相続するデメリットとメリット、相続するかどうかを判断するポイント、相続放棄を検討する場合の注意点、相続後に処分する方法などについて解説します。

市街化調整区域とは

まずは市街化調整区域とはどのような地域のことを指すのか確認しておきましょう。

1.市街化するのを抑制しているエリアのこと

土地には、都市計画法により以下のような分類があります。

  • 市街化区域:すでに市街地となっている土地、または10年以内に優先的に市街化させる予定の土地
  • 市街化調整区域:市街化が抑制されている土地

市街化調整区域では、住宅や商業施設の建設、道路・上下水道の整備といった都市開発は原則として認められていません。すでに建物が建設されている場合でも、その建て替えには自治体の許可が必要です。

そのため、農地や森林が多く残り、自然が豊かなエリアであることが多いでしょう。

2.市街化調整区域の特徴

市街化調整区域には以下のような特徴があります。

  • 自然が豊かで静かな環境
  • 生活に必要な施設が近くにはない
  • 土地の価格は安い

市街化調整区域は、都市化が進んでいないため、自然環境が多く残されています。雑音や騒音が少なく、静かに暮らすことのできる環境といえるでしょう。ただし、人が生活するためのエリアではないため、スーパーや医療施設など生活利便施設が近くにありません。

また、住宅の建設や建て替えが制限されることもあり、土地の価格は低い場合がほとんどです。

市街化調整区域の不動産の相続税評価額の求め方

相続を考える場合、気になるのは相続税評価額でしょう。

市街化調整区域の不動産の相続税評価額の算出方法は、一般的な不動産と同様に、路線価方式または倍率方式によって算出します。どちらの方式で算出するかは、国税庁の公式サイト内の「路線価図・評価倍率表」で確認できますが、倍率方式の地域に該当する場合がほとんどでしょう。

その場合、相続税評価額は以下の計算式で計算します。

相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

市街化調整区域の場合、固定資産税評価額は一般的な土地よりも低いケースが多いため、相続税評価額もかなり安く済むはずです。

市街化調整区域の不動産を相続するデメリット

相続不動産が市街化調整区域にある場合のデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

1.新たに住宅を建築するには許可が必要

都市開発を抑制されている市街化調整区域では、原則として新たな建物の建築は認められていません。建設したい場合は、自治体に相談、許可を得る必要があります。そのため、土地を相続したとしても、活用できない可能性があるでしょう。

2.建て替えに許可が必要

市街化調整区域では、新築だけではなくリフォームや増築も自由にできません。新築の場合と同様、自治体への相談や許可が必要です。

3.居住するには生活しづらい

市街化調整区域は、人の暮らしの利便性を追求するような開発を抑制している地域です。そのため、商業施設や医療施設があまりなく、交通の便も悪い場合がほとんどでしょう。

さらにインフラが整えられているとも限らず、かなりの不便を強いられる可能性もあります。

4.売却しにくい

土地を活用しようにも、自治体による規制が厳しいこと、生活がしづらいことなどから、売却が難しいケースが多いでしょう。不動産会社に依頼しようとしても、難色を示されるかもしれません。

市街化調整区域の不動産を相続するメリット

市街化調整区域の不動産には、以下のようなメリットもあります。

1.固定資産税が安い

土地の価値が低いということは、課税される税金も安いということです。市街化調整区域では固定資産税が安く、都市計画税はかかりません。税金の負担が少ない分、所有しやすい不動産といえるでしょう。

2.静かで環境がよい

自然が豊かで静かな環境で生活できることもメリットの一つといえます。交通量が少なく、騒音もあまりないため、落ち着いた時間を過ごせるでしょう。

市街化調整区域の不動産を相続すべきか判断するポイント

活用方法を思いつかない場合は「相続しない方がよいのだろうか」と考えてしまうかもしれません。相続するか相続放棄をするかを判断する際は、以下の点を考慮するとよいでしょう。

1.現に居住している場合は相続放棄しても管理が必要

相続放棄をしても「現に占有している」状態であるなら、管理義務が残ります

「現に占有している」とは、相続放棄をする時点で、その建物に居住しているということです。その場合、相続放棄をしても、清掃や修繕を適切に行い、不動産の価値を保持できるよう努める必要があり、完全に手放すことはできません。

2.活用方法はないか検討する

市街化調整区域は、建築や改築に許可が必要なこともあり、一般的な不動産と比べると活用が難しいでしょう。しかし、活用法が全くないわけではありません。

たとえば、貸し農園、駐車場、コインパーキングなどにしてもよいでしょう。他にも資材置き場にして貸し出す、太陽光発電を設置するなどの方法で収益を得られる可能性があります。その土地の特徴に合わせて検討してみるとよいでしょう。

3.区域が見直される可能性はないか確認する

市街化調整区域に対する規制は、将来的に変更される可能性があります。規制が緩和され、活用しやすくなる可能性もあるでしょう。また、エリアによっては市街化区域に編入される場合もあります。

丁寧に情報収集をし、将来的な可能性をしっかり見極めた上で相続するかどうか判断しましょう。

市街化調整区域の不動産の相続放棄を考える際の注意点

相続放棄を検討している場合は、以下の点に注意しましょう。

1.市街化調整区域の不動産だけを相続放棄することはできない

相続放棄をするなら、全ての遺産についての相続権を手放さなければなりません。「市街化調整区域の不動産だけを放棄して、預金は相続する」などといったことはできないため、相続放棄を検討する際は、慎重な判断が求められます。

2.相続放棄の手続きには3ヵ月の期限がある

相続放棄をするには、自分が相続人であることを知ったときから3ヵ月以内に、管轄の家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。期限を過ぎると、よほどの事情がない限り受け付けてもらえないため注意しましょう。

3.裁判所に許可されると撤回はできない

裁判所に相続放棄を申請して許可されると、原則として撤回はできません。相続放棄後に市街化調整区域が市街化区域に編入されることになって急激に価値が高くなっても所有権は戻らないため、相続放棄をするかどうかは慎重に検討しましょう。

4.後順位の人に相続権が移る

ご自身が相続放棄をすると、その相続権は次の相続順位の方に移ります。相続順位は法律によって以下のように定められています。

相続順位 相続人
第1順位 子どもや孫など直系卑属
第2順位 親や祖父母など直系尊属
第3順位 兄弟姉妹

ご自身が相続放棄をした後は、次の順位の方にその旨を通知する義務はありません。しかし、付き合いのある親族など、良好な関係を維持したい人が後順位の場合は、伝えた方がよいでしょう。

市街化調整区域の不動産を相続後に処分する方法

「相続放棄をしなかったために仕方なく相続したけれど手放したい」という場合は、以下の方法による処分を検討するとよいでしょう。

1.売却する

市街化調整区域の不動産の売却は困難ではありますが、全く売れないわけではありません。売却価格を低くしたり、隣地の所有者などに購入を相談したりするなどの工夫をすれば売れる可能性があります。市街化調整区域の不動産売買に精通している不動産会社に相談しながら売却活動を進めるとよいでしょう。

また、売却が難しい場合は、買い取りによる処分を検討してもよいでしょう。売却する場合に比べると価格は安くなりますが、あまり手間をかけずに短期間で処分できる可能性があります。買い取りを検討する場合は、買い取り専門業者を探して相談するとよいでしょう。

2.寄付する

寄付することも一つの方法です。寄付先としては、自治体や企業、個人が考えられます。

ただし、自治体や企業への寄付は、よほど良い条件でなければ、受け入れてもらえないでしょう。個人の場合は、隣地など、有効活用できそうな場合は、受けてもらえるかもしれません。ただし、その場合、贈与税がかかることには注意が必要です。

3.相続土地国庫帰属制度を利用する

相続土地国庫帰属制度は、2023年4月から開始され、相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。ただし、引き取ってもらえる土地の要件は厳しく、負担金などの費用もかかります。よく検討の上、利用しましょう。

参考:相続土地国庫帰属制度について(法務省公式サイト)

まとめ

今回は、市街化調整区域の概要、市街化調整区域の不動産を相続するデメリットとメリット、相続するかどうかを判断するポイント、相続放棄を検討する場合の注意点、相続後に処分する方法などについて解説しました。

市街化調整区域の不動産相続は難しい問題です。相続するかどうかは専門家に相談しながら判断するとよいでしょう。また、相続後に手放したい場合は、できる限り損をしないためにも、不動産業者に相談することをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。市街化調整区域の不動産の相続に関する相談にも応じておりますので、お気軽にお問い合わせください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一