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2024.05.20

親族が孤独死した家を相続した際の手続き・売却や相続放棄する場合の注意点も解説

親族が孤独死した家を相続した際の手続き・売却や相続放棄する場合の注意点も解説

ある日突然警察から親族が孤独死したという連絡を受けて、どうすればよいかわからずに困っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

故人が孤独死した家について「どのように売却すればよいのだろう?」「そもそも売却できるのか?」「相続放棄をするべきなのだろうか?」などと悩むことも多いでしょう。

今回は、親族が家で孤独死した場合の相続の流れ、孤独死した家の相続手続き、相続した家を売却する際の注意点、相続放棄する場合の注意点などについて解説します。

親族が家で孤独死した場合の相続の流れ

親族の孤独死が発見された場合、その後の手続きは以下のような流れで進むのが一般的です。

1.警察や役所から連絡がくる

最も多いのは、警察から連絡が来て、親族の死亡を知るというパターンでしょう。

この場合、不審に思った近所の方などが警察に連絡をして死亡が発覚したはずです。警察は、本人の身元や死因のほか、職権によって近親者についても調査をし、連絡しています。警察署内での遺体の身元確認など、今後の流れについても教えてくれるはずなので、従うようにしましょう。

また、役所からの連絡で知るケースもあります。この場合、故人の住所地のあった自治体が遺体の火葬や埋葬を済ませていることもあるでしょう。その後のことは相続人が行わなければならないため、状況や手続きの進め方について確認しましょう。

2.相続人を調査する

まずは誰が相続人なのか調査しましょう。警察や役所は、あなたが故人と最も近しい関係にあった親族と考えて連絡していますが、相続人であるとは限りません。また、他にも相続人が存在する可能性もあります。

そのため、故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類を取得して、相続人を特定しなければなりません。まずは故人の本籍地を確認し、除籍謄本を取得しましょう。そこから戸籍をさかのぼれば、相続人となる可能性のある子どもや兄弟姉妹などを確認できるはずです。

3.故人の財産を調査する

故人の遺した財産についても調査しなければなりません。警察からは現金や免許証、預金通帳などを遺留品として渡されるかもしれませんが、遺産はそれ以外にもあるはずです。財産を調査する際は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も調べなくてはならないという点に注意しましょう。

まずは家の中に以下のようなものが残されていないか探してください。

プラスの財産 マイナスの財産
・現金

・預金通帳

・家の権利証

・株券

・生命保険の証書

・請求書などの郵便物

・預金通帳の引き落とし内容

故人が孤独死した家の中に立ち入るのは気が引けるかもしれません。そのような場合は、無理をせず専門業者などに相談するとよいでしょう。

4.相続するかどうか判断する

故人が残した遺産の内訳と詳細が判明したら、相続するかどうか決めましょう。相続方法には以下の3つの種類があります。どれを選択すればよいかわからない場合は、専門家に相談しましょう。

  • 単純承認:プラスもマイナスも全ての遺産を相続する方法
  • 限定承認:プラスの範囲内でマイナス分を清算する方法
  • 相続放棄:プラスもマイナスも全ての遺産の相続を放棄する方法

5.相続する場合は遺産分割協議

遺産を相続する場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を引き継ぐか話し合います。協議といっても、必ずしも全員が一堂に会する必要はありません。電話やメールなどで話し合ってもかまいません。

決定した内容は、遺産分割協議書に記載しておきましょう。遺産分割協議書は金融機関などでの相続手続きのほか、相続登記でも必要なので、必ず作成しなければなりません。相続人全員分の署名と押印、印鑑証明の添付も必要です。

6.相続しない場合は相続放棄の申し立て

遺産を調査した結果、マイナスの財産が大幅に超過していた場合は、相続放棄を検討することになるでしょう。相続放棄をする場合、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする必要があります。裁判所公式サイトの以下のページを参考にしながら必要書類を準備し、手続きを進めましょう。

ただし、この手続きには期限があり、自分が相続人であることを知ってから3ヵ月以内に行う必要があるので注意しましょう。

参考:相続の放棄の申述(裁判所公式サイト)

孤独死した家の相続手続き

故人が自宅で亡くなった場合、以下のことを行う必要があるでしょう。

1.必要に応じて特殊清掃

亡くなってから時間が経過していた場合、遺体の腐敗が進んでいるため、特殊清掃が必要です。建物を取り壊す場合は行わなくてもかまいませんが、売却を考えている場合や、賃貸物件の場合は必ず行いましょう。

2.遺品整理をする

孤独死であるかどうかにかかわらず、故人の遺品整理は必要です。財産調査もかねて行いましょう。ゴミ屋敷のような状態だった場合は、業者に依頼することを検討するとよいでしょう。ただし、業者に依頼すると、財産調査に必要なものを含めて一括で処分される可能性があるという点には注意が必要です。

また、遺品整理をして財産を処分すると相続放棄ができなくなる可能性があるため、相続放棄を検討している場合は安易に行わないよう注意してください。

3.(賃貸物件の場合)早めに退去

故人の自宅が賃貸物件だった場合は、できる限り早期に退去しましょう。退去が遅れるほど、家賃がかかり、遺産が減少するからです。

また、孤独死した物件は、借り手が見つかりにくく、家賃を下げなければ借り手を見つけられなくなる可能性があります。相続人が損害賠償請求をされるリスクもあるため注意しましょう。

4.(持ち家の場合)相続税評価額を調べて遺産分割

孤独死した家が故人の持ち家だった場合は、通常の相続手続きと同様に、遺産分割の対象となります。相続税評価額を調べて、遺産分割協議を行いましょう。

5.相続登記手続き

相続する場合は、必ず相続登記が必要です。2024年4月1日から相続登記の義務化が開始され、相続することが決まってから3年以内に登記しなければなりません。売却する場合でも必要なので、早めに行いましょう。

6.近隣住民への説明

孤独死して発見が遅れると、近隣住民に少なからず迷惑をかけます。異臭や害虫の発生によって不快な思いをしたり、今後の対処について不安に思っていたりすることもあるでしょう。売却する場合は協力を求めなければならないケースもあるので、今後の処分などについて誠実に説明をして良好な関係を築いておきましょう。

相続した家を売却する際の注意点

相続した故人の家を売却したいと考えるケースも多いでしょう。しかし、孤独死した家の売却には注意点が多くあります。あらかじめ以下の注意点を把握したうえで売却活動を始めましょう。

1.「事故物件」として扱われるケースもある

物件内部で人が亡くなり、心理的瑕疵がある場合、買主に事前に告げておくべき告知事項に該当します。心理的瑕疵とは、心理的な抵抗が生じる可能性がある事項で、自殺、他殺、事故死、孤独死などが該当するとされています。心理的瑕疵がある物件は、一般的に「事故物件」と呼ばれ、敬遠される傾向にあります。

孤独死の場合は、すぐに発見されれば心理的瑕疵ではないとされる可能性もあります。しかし、死後何日も発見されず、特殊清掃やリフォームが必要な場合は心理的瑕疵に該当する可能性が高いでしょう。

2.孤独死した家は売却しにくい

孤独死があった物件は、売却が難しい可能性があります。特に発見が遅かった場合は、リフォームをしたり、事故物件を取り扱っている業者を探したりしない限り、難しいかもしれません。売却金額も低くなる傾向にあり、売却活動は難航するでしょう。

3.家を解体しても告知義務は残る

「孤独死のあった物件を解体すれば告知義務はなくなるのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、残念ながら土地だけになったとしても、買主には事実を告げる必要があります。告知せずに売却して後から発覚した場合、損害賠償請求されるおそれもあるため、必ず隠さずに伝えましょう。

4.相続税の他に譲渡所得税がかかる

相続した家を売却すると譲渡所得税も発生します。譲渡所得税とは、不動産の売却益に対してかかる税金です。

相続税のことは考慮していても、譲渡所得税については気にかけておらず、後から驚く方も多くいらっしゃいます。特例などを活用すれば、大きな節税効果を得られる可能性もあるので、専門家に相談するとよいでしょう。

5.遠方なら専門業者に依頼がおすすめ

売却活動のためには、現地に何度も赴く必要があります。特に孤独死のあった家が遠方の場合は、負担に感じるでしょう。そのような場合は、専門業者に依頼して売却活動をサポートしてもらうことをおすすめします。

相続した家を相続放棄する場合の注意点

相続放棄をする場合は、以下のことに気を付けましょう。

1.相続人であることを知ってから3ヵ月以内に手続きが必要

相続放棄をする場合、自分が相続人であることを知ってから3ヵ月以内に、家庭裁判所に申し立てを行わなければなりません。期限を過ぎると、原則として受理してもらえないため、必ず期限内に申し立てましょう。

2.遺産に手をつけない

遺産の処分や消費をしてしまうと、相続放棄ができません。単純承認をし、全ての遺産を引き継いだとみなされてしまうからです。相続放棄をしたい場合、遺産には絶対に手をつけないようにしましょう。

3.遺品整理もしない

相続放棄をしたい場合は、遺品整理も安易にしてはいけません。遺産を処分してしまうと、単純承認をしたと判断される可能性があるからです。

4.生命保険は受け取れる可能性がある

生命保険の受取人が特定の相続人に指定されている場合、相続放棄をしても受け取れる可能性が高いでしょう。受取人が指定されている生命保険は、相続財産ではなく、受取人固有の財産とみなされるからです。

ただし、その扱いは個々のケースによって異なるので、念のため保険会社に確認してから受け取ることをおすすめします。

まとめ

今回は、親族が家で孤独死した場合の相続の流れ、孤独死した家の相続手続き、相続した家を売却する際の注意点、相続放棄する場合の注意点などについて解説しました。

孤独死があった家は事故物件として扱われることもあり、通常の物件よりも売却活動が難航することが多いです。売却できる可能性を高めるためにも、専門業者に相談しながら進めることをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。孤独死があった家の相続に関する相談にも応じておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一