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2023.07.11

不動産の二次相続の問題点とは?トラブルを防ぐための対処法を解説

不動産の二次相続の問題点とは?トラブルを防ぐための対処法を解説

不動産を所有している方の中には、「不動産を含む相続では、二次相続のことも考えた方がいいと聞いたけど、具体的にどのようなことを考えればいいのだろうか?」などという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

二次相続とは、一次相続で相続人であった配偶者が亡くなることで起きる相続のことです。相続人が減る分、相続税の基礎控除額が低くなったり、一次相続時に活用できた特例や控除が使えなかったりするために、何も対策をしないと相続税が高くなる可能性があります。

また、両親ともいなくなるため、相続人同士での争いが激化しやすい傾向があります。そのため、相続税と遺産分割の両方に備えておくことが大切です。

今回は、二次相続の概要、不動産を所有している場合は二次相続まで考慮すべきだといわれる理由、不動産を含む二次相続における相続税の節税対策、不動産を含む二次相続の問題点と対策などについて解説します。

二次相続とは

二次相続とは、一次相続(最初の相続)において相続人であった配偶者が亡くなったことで発生する相続のことです。

例えば、両親と子ども2人の家族で、先に父親が亡くなった場合を考えてみましょう。この場合、一次相続で相続人となるのは、母親と2人の子どもです。

それから数年後に母親も亡くなると、二次相続が発生します。二次相続では、一次相続で母親が父親から相続した財産も含めて、子ども2人で遺産を分割することになります。

不動産を所有している場合は二次相続まで考慮すべき

不動産を所有している場合は、二次相続のことも考慮して相続対策を行うことが大切です。その理由について説明します。

1.一次相続よりも相続税が高くなりやすい

遺産に不動産が含まれる場合、相続税が発生するケースが多いでしょう。二次相続では、その相続税が以下の理由から、相続税が高くなる傾向にあります。

  • 相続人が減る分、基礎控除額が低くなる
  • 一次相続で利用できた特例や控除が使えない

①相続人が減る分、基礎控除額が低くなる

基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で求めます。二次相続では、法定相続人の数が減るため、必然的に基礎控除額は下がります。

例えば、両親2人と子ども2人の家族では、片方の親が亡くなった一次相続での控除額は4,800万円(=3,000万円+(600万円×3))、残された親が亡くなった二次相続での控除額は4,200万円(=3,000万円+(600万円×2))です。

控除額が下がる上に、相続の対象となる財産には配偶者の財産分が加算されるため、一次相続時よりも相続税は高くなります

②一次相続で利用できた特例や控除が使えない

二次相続では、一次相続の際に利用できた特例や控除が使えないために相続税が高くなる傾向もあります。

例えば、1億6,000万円まで控除となる配偶者控除は、二次相続では被相続人の配偶者がいないために適用できません。

また、条件を満たせば相続税評価額が80%減額される小規模宅地等の特例も、被相続人と同居していなければ適用されないため、使えないケースも多いでしょう。

そのため、二次相続では一次相続よりも相続税が大幅に高くなってしまう可能性もあるのです。

2.一次相続よりも相続人がもめやすい

二次相続では一次相続よりも相続人同士の揉め事が起きやすいといわれています。特に不動産は分割が難しく、ただでさえ争いが起きやすい上に、仲裁役となる両親も既に他界しているため、一度揉め事が起きると収拾がつかなくなるケースもあります。

不動産を含む二次相続における相続税の節税対策

不動産を含む相続では、高額の相続税が発生する可能性が高いため、一次相続が発生する前から二次相続のことも考慮して対策しておくことが望ましいです。

ここでは、二次相続が発生する前にやっておきたい節税対策を紹介します。

1.小規模宅地の特例を利用できるようにしておく

小規模宅地の特例とは、被相続人が自宅用または事業用として使用していた宅地を相続した場合、その評価額を80%まで減額できる制度です。

この特例は配偶者であれば、無条件に適用を受けられますが、その他の親族が取得する場合は、一定期間、被相続人と同居している必要があります。

二次相続でもこの特例を受けるためには、以下のようにしておくとよいでしょう。

【子どもが同居している場合】

・一次相続が発生した時点で子どもに相続させる

【子どもと別居している場合】

・一次相続が発生する前に同居する

・二世帯住宅にする

・配偶者居住権を利用する

元々子どもと同居しているなら、一次相続の時点で子どもに相続させておくとよいでしょう。二次相続で自宅不動産は相続財産には含まれず、相続税の課税対象になりません。

子どもと別居している場合は、一次相続が起こる前に同居するか、二世帯住宅にするとよいでしょう。二世帯住宅は完全分離タイプのものでも同居とみなされ、特例の適用を受けられます。

また、配偶者居住権を利用して所有権だけを子どもに移転させるという方法もあります。

配偶者居住権とは、令和2年4月1日から認められたもので、配偶者が建物を使用できる権利です。この権利を取得すれば、残された親は自宅に住み続けられる一方、所有権は別の相続人に移転できるため、二次相続時の相続財産に自宅不動産を含める必要がありません。

二次相続時に被相続人と別居していた場合に、特例の適用を受けるには以下の要件を満たす必要があります。あらかじめ、これらの要件を満たすようにしておくとよいでしょう。

  • 被相続人に配偶者がおらず、同居していた法定相続人もいない
  • 申請者が過去3年以内に持ち家に居住したことがない
  • 申請者が被相続人の自宅を所有したことがない
  • 相続税の申告期限まで、申請者が対象となる宅地を所有している

2.一次相続で配偶者の相続分を増やしすぎない

二次相続では、配偶者が所有していた資産も相続財産に含まれます。そのため、一次相続で配偶者の相続分を多くしすぎると、二次相続時の相続財産が大きくなり、その分相続税は高くなります。一次相続の時点で、相続税を多少支払ってでも子どもが相続した方が、総合的に見て相続税が低くなることもあるので、慎重に検討することが大切です。

専門知識がないとどのように配分するのがよいか正しい判断をすることが難しいため、専門家に相談することをおすすめします

3.生前贈与を検討する

生前贈与をすれば、遺産総額を減らせるため、節税につながります。

少額ずつ数年にわたって贈与したり、複数の相続人に分散して贈与したりするのが節税対策として有効でしょう。

ただし、年間110万円以上の贈与であれば贈与税がかかること、相続発生前3年間の贈与分は相続財産として持ち戻されることには注意する必要があります。

また、毎年贈与をする場合は、定額贈与とみなされないように工夫をする必要があります。贈与の際には贈与契約書を作成したり、贈与する金額や時期を変えたりするなど、対策を講じておきましょう。

4.賃貸併用住宅にする

賃貸併用住宅とは、居住する住宅に賃貸部分を設けたものです。例えば、1階は自宅、2階以上は賃貸用の部屋になっている建物などが該当します。

賃貸物件であれば、自宅不動産よりも相続税算出時に使用する評価額が下がります。さらに、小規模宅地の特例の適用対象になる可能性も高いため、賃貸併用住宅にしておくことで大きな節税効果が期待できることもあるでしょう。

5.生命保険に入る

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」で算出される金額分の非課税枠があります。それだけでも節税効果がありますが、受取人を子どもにしておけば、二次相続の際に相続財産に含めずに済むため、さらなる節税が可能です。

また、現金で受け取れるため、相続税の納税資金とすることも可能です。

6.相次相続控除を利用する

相似相続控除とは、一次相続発生から10年以内に、二次相続が発生した場合に適用できる控除です。二次相続の被相続人が一次相続時に納めた相続税のうち、経過年数1年につき10%の割合の金額を、二次相続時の相続税から減額できます。

二次相続の申告時に利用するとよいでしょう。

不動産を含む二次相続で相続人が揉めないための対策

相続財産に不動産が含まれる二次相続では、相続人同士の争いが起きやすいです。ここでは、相続人が揉めないようにするための対策を紹介します。

1.遺言書を作成する

自分の亡き後に相続人同士が争わないためには、遺言書を残しておくことが有効な対策となります。遺言書には、分割方法だけでなく、その理由も記載しておくと、相続人が納得しやすく揉め事の回避につながります。法定相続分通りの分割を希望している場合も、遺言書にその旨を明記して残しておきましょう。

また、せっかく遺言書を残しても、無効と判断されては意味がありません。弁護士などの専門家に相談し、形式に不備がないようにしておくか、公証役場で公正証書遺言にしておくことをおすすめします。

2.作成した遺言書は定期的に見直す

遺言書に有効期限はありませんが、作成した遺言書は定期的に見直す機会を設けましょう。遺言書の内容と実情が合わなくなる場合があるからです。例えば、相続人になるはずだった人が亡くなってしまう、周辺の状況の変化により不動産の価値が大きく変わるなどの可能性もあります。

せっかく遺言書を残しても、実情に即した内容でなければ、結局相続人同士で協議しなければなりません。協議がまとまらずに相続争いが起きることを防ぐためにも、一度作成した遺言書は、定期的に見直すことが大切です。

まとめ

今回は、二次相続の概要、不動産を所有している場合は二次相続まで考慮すべきだといわれる理由、不動産を含む二次相続における相続税の節税対策、不動産を含む二次相続の問題点と対策などについて解説しました。

不動産を所有しているなら、相続税を効果的に節税したり、相続人争いを防いだりするためにも、二次相続のことまで考えて対策しておくことをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。不動産の二次相続に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一