06-6585-0560
受付時間9:00〜21:00(年中無休)
ホーム  >  コラム  >    >  不動産相続における代襲相続とは?相続分や相続登記についても解説
2024.02.22

不動産相続における代襲相続とは?相続分や相続登記についても解説

不動産相続における代襲相続とは?相続分や相続登記についても解説

代襲相続とは、本来の相続人が死亡するなどして不在の場合に、その下の世代に相続権が移ることです。代襲相続が発生すると、相続人が増えて相続が複雑化しやすいので、「不動産相続で代襲相続が発生するとどうなるのだろう?」などと不安に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、代襲相続が発生していない他の相続人については、基本的に通常の相続とあまり変わりません。法定相続分は変わらず、本来の相続と同じ割合の遺産を得られます。

ただし、遺言書による相続の場合や相続放棄をした場合など、本来の相続人がいなくても代襲相続が発生しないケースもあります。代襲相続が発生するのかを確認した上で、相続手続きを進めることが大切です。

今回は、代襲相続の概要、不動産相続において代襲相続が発生するとどうなるか、代襲相続が発生した場合の相続登記などについて解説します。

代襲相続とは

まずは代襲相続の定義について確認しておきましょう。

1.代襲相続とは本来の相続人がいない場合に発生する

代襲相続とは、本来であれば、被相続人の相続権を有していたはずだった人がいない場合に、その下の世代に相続権が移ることをいいます。

たとえば、親よりも先に子どもが亡くなっていた場合、本来なら相続人となるはずだった子どもはいません。その場合、子どもの子ども、つまり親にとっての孫がいる場合は、孫に相続権が移ります。これが代襲相続です。

代襲相続される人を被代襲者、代襲相続した人を代襲相続人といいます。

①親など上の世代には発生しない

代襲相続は下の世代に対してのみ発生します。独身で子どももいない人が亡くなった場合、その人の親も亡くなっていれば、相続権は親よりも上の世代である祖父母に移ります。

状況は代襲相続と変わりませんが、上の世代については「代襲相続」とはいいません。

②子どもなど下の世代は再代襲も発生し得る

親よりも先に子供が亡くなっており、さらに孫も亡くなっていた場合は、再代襲が発生し、相続権はひ孫に移ります。下の世代である直系卑属が存在する限り、代襲相続が続くのです。

ただし、被相続人の兄弟姉妹のところで代襲相続が発生した場合、再代襲は発生しません。たとえば、兄の相続において、先に亡くなった弟の息子、つまり被相続人にとっての甥が亡くなっていても、甥の子どもには相続権は移りません。

2.代襲相続が発生する3つのケース

具体的に代襲相続が発生するのは、以下の3つの場合です。

①本来の相続人が既に死亡している場合

本来相続人となるはずだった人が、既に死亡している場合、代襲相続が発生します。最も典型的なケースといえるでしょう。

②本来の相続人が欠格となった場合

欠格とは、故意に被相続人を死亡させたなど、法律で定められて相続欠格事由に該当した場合に相続権を剥奪されることです。欠格者の相続権は代襲相続によって下の世代に移ります。

③本来の相続人が廃除された場合

廃除とは、被相続人に対する虐待などを理由に、被相続人によって相続権を剥奪されることです。被相続人が生前のうちに裁判所へ申し立てを行い、裁判所が認めれば廃除されます。

3.代襲相続が発生しない5つのケース

以下のケースでは、代襲相続は発生しません。

①相続放棄をした場合

相続放棄によって相続権を失っても、代襲相続は発生しません。

②配偶者の連れ子である場合

配偶者が先に亡くなっていても、その連れ子に相続権が移ることはありません。

ただし、連れ子と被相続人が養子縁組をしていた場合は、実子と同様の扱いとなり、最初から相続権を有します。

③兄弟姉妹の子どもが亡くなっていた場合

被相続人の兄弟姉妹について、代襲相続が発生するのは、その子どもの代までです。兄弟姉妹の子どもが亡くなっていた場合は、兄弟姉妹の孫にあたる代に相続権は移りません。

④養子の子が養子縁組時に既に誕生していた場合

養子の子に代襲相続が発生するかどうかは、その子の出生時期によります。被相続人と養子が縁組した後に生まれた子であれば、代襲相続は発生しますが、縁組前に生まれた子の場合は発生しません。

⑤遺言書による相続の場合

遺言書による相続であれば、遺言で指定された相続人がいなくても、代襲相続は発生しません。

不動産相続で代襲相続が発生するとどうなる?

代襲相続が発生する相続において、不動産を相続する場合はどうなるのでしょうか。

ここでは、例として、親が亡くなり、その子どもについて代襲相続が発生した以下のようなケースを用いながら、遺産分割や相続方法について具体的に解説します。

【例】
被相続人:親
相続人:長男、次男の子A(代襲相続人)、次男の子B(代襲増続人)
被代襲者:次男

1.遺産分割方法について

遺産分割の場面では、以下のようになります。

①遺産分割協議の参加者が変わる

遺産分割協議を行う場合は、代襲相続によって遺産分割協議の参加者が以下のように変わります。

遺産分割協議の参加者
通常の相続の場合 長男、次男
代襲相続が発生した場合 長男、次男の代襲相続人A、B

なお、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。

②元の相続人の法定相続分は変わらない

法定相続分どおりに遺産分割をする場合、代襲相続が発生しても、元々相続権のある相続人の法定相続分は変わりません。

一方、代襲相続が発生したところは、被代襲者が有していた法定相続分を、代襲相続人の数で分割します。

例に挙げたケースでは、長男の相続分は、通常の相続でも代襲相続が発生した場合でも変わりません。代襲相続が発生した、次男の子どもたちについては、次男の法定相続分である1/2分を、2人の相続人で分割することになるので、AとBのそれぞれの相続分は1/2×1/2=1/4ずつです。

通常の相続の場合の法定相続分 代襲相続が発生した場合の法定相続分
長男 1/2 1/2
次男 1/2
A(次男の子) 1/4
B(次男の子) 1/4

2.不動産の分割

不動産の分割方法には、換価分割・代償分割・現物分割・共有の4つの方法があります。代襲相続が発生すると、それぞれどのようになるのでしょうか。

①換価分割した場合

換価分割とは、不動産を売却して得た売却金を相続人で分割する方法です。
代襲相続が発生した場合、原則として売却金額は法定相続分に従って分割します。
例の場合、不動産の売却金額が3,000万円であるとすると、長男の法定相続分は1/2、次男の子どもたちはそれぞれ1/4ずつなので、長男は1,500万円、次男の子どもたちはそれぞれ750万円ずつ取得する計算になります。

②代償分割をした場合

代償分割とは、特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。代償金は不動産の評価額とするため、相続人に関わらず、その金額は変わりません

例としているケースで、評価額3,000万円の不動産を代償分割し、長男が不動産を取得する場合は、次男の子どもたちA、Bに対して、合計で3,000万円を支払います。

③現物分割をした場合

現物分割とは、そのままの形で相続をする方法です。不動産が複数ある場合に採用されることが多いでしょう。

例としているケースで、不動産が2つある場合であれば、不動産のうち一つを長男が、もう一つを次男の2人の子どもで相続します。

④共有した場合

共有とは、相続人全員で不動産を所有することです。登記の際には、持ち分を決める必要があり、その割合は法定相続分に従います。

例のケースでは、長男の持ち分を1/2、次男の子どもたちの持ち分を1/4ずつとして登記することになるでしょう。

3.不動産相続で代襲相続が発生した場合の遺留分

遺留分とは、相続人に取得が保証された最低限度の遺産の割合です。遺留分の請求権は代襲相続人にもあります。代襲相続人の遺留分の割合は法定相続分と同様、被代襲相続者の遺留分を代襲相続人の数で割って算出します。

被相続人の遺産が不動産一つだけであり、遺言などにより、これを特定の相続人が一人で取得した場合は、残りの相続人は遺留分を請求できます。

不動産相続で代襲相続が発生した場合の相続登記

不動産を相続すると、相続登記をしなければなりません。相続登記の手続きについては、代襲相続が発生しても、通常の相続との大きな違いはあまりなく、申請に必要な書類が増える程度です。

ここでは、代襲相続が発生した場合の相続登記手続きについて解説します。

1.提出書類が通常の相続登記よりも増える

相続登記の申請時には被相続人と相続人の関係を確認するために戸籍謄本類の提出を求められます。代襲相続が発生すると、被代襲者と代襲相続人の関係も確認しなければならないため、通常の相続よりも提出する戸籍謄本の数が増えます。具体的に必要な戸籍謄本類は以下のとおりです。

【被相続人の子どもの代で代襲相続が発生した場合】

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 相続人の現在の戸籍謄本
  • 被代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 代襲相続人の現在の戸籍謄本

【被相続人の兄弟姉妹について代襲相続が発生した場合】

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 相続人の現在の戸籍謄本
  • 被代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 代襲相続人の現在の戸籍謄本
  • 両親の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 祖父母の死亡を確認できる戸籍謄本類

これらの書類の他、登記申請書、対象となる不動産の固定資産評価証明書、登記簿謄本などの必要書類をそろえて、対象不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。

まとめ

今回は、代襲相続の概要、不動産相続において代襲相続が発生するとどうなるか、代襲相続が発生した場合の相続登記などについて解説しました。

代襲相続が発生すると、相続人が増える分、遺産分割や相続手続きが通常よりも複雑になります。特に不動産は、平等な分割が難しい財産なので、遺産分割協議が難航したり、相続人の間で争いが生じたりすることもあるでしょう。また、相続登記手続きにおいても、申請に必要な書類が増える分、混乱しやすいかもしれません。
疑問に思うことや不安に感じることがある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。代襲相続が発生した場合の相談にも対応しておりますので、お気軽にお問合せください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一