06-6585-0560
受付時間9:00〜21:00(年中無休)
ホーム  >  コラム  >    >  代償分割とは?メリット・デメリットや代償金の決め方を解説
2023.09.13

代償分割とは?メリット・デメリットや代償金の決め方を解説

代償分割とは?メリット・デメリットや代償金の決め方を解説

相続不動産を平等に分割する方法として「代償分割」という方法があることを知ったものの、その内容をよく理解できず、調べている方もいらっしゃるかもしれません。
また、「メリットやデメリットを知って、代償分割を採用すべきかどうか判断したい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

代償分割とは、特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払うことで、平等な遺産分割を実現する方法です。メリットもある一方、大きなデメリットもあるため、採用するかどうかはよく検討した上で決めた方がよいでしょう。

今回は、相続不動産の分割方法、代償分割のメリット、デメリット、代償分割の選択がおすすめであるケース、代償金の決め方、代償金を支払えない場合の対処法、代償分割をする場合の相続税の計算方法などについて解説します。

相続不動産の4つの分割方法

相続不動産の分割方法には、代償分割を含め4つの方法があります。不動産は価値の大きな財産で、公平に分割することが難しいという特徴があります。
よくわからないまま分割して後悔しないためにも、相続不動産の分割方法についての知識を得たうえで、どれを選択するのがベストなのかよく検討する方がよいでしょう。ここでは、相続不動産の4つの分割方法について解説します。

1.代償分割

特定の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法です。メリットやデメリット、代償金額の決め方については後で解説します。

2.換価分割

不動産を売却し、売却金を相続人全員で分割する方法です。現金を分けるため、最も平等な分割が実現しやすい方法といえるでしょう。
ただし、売却には時間がかかる可能性もあるため、相続税の納付期限に注意しながら早めに進めることが大切です。また、相続税の他に譲渡所得税を支払わなければならないことにも注意しましょう。

3.現物分割

現物のまま分割する方法です。土地の場合は分筆によって分割可能ですが、建物が一棟しかない場合は分割できないため、採用できません。
また、土地であっても、完全に平等な分割は難しく、多少の不平等は生じる可能性があります。

4.共有

分割せずに、共有財産とする方法です。名義人が複数となるため、後になって処分がしづらくなったり、下の世代の相続の際に、権利関係が複雑化する可能性が高くなったりするなど、デメリットが大きいため、あまりおすすめできません。

代償分割の3つのメリット

代償分割の主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

1.平等な遺産分割を実現できる

代償分割では、不動産を取得した人は、代償金を他の相続人に支払います。例えば、遺産が4,000万円の不動産のみで、相続人は兄弟二人、代償分割によって兄が不動産を取得したとしましょう。この場合、兄が弟に代償金として2,000万円を支払います。
このように、代償分割を行うことで、平等な遺産分割を実現できるのです。

2.不動産の処分を避けられる

「家族の思い出が詰まった家を売りたくない」などという理由から、不動産の売却をためらう方もいらっしゃるでしょう。代償分割であれば、不動産を処分する必要はありません。そのまま財産として保有し続けられます。
もちろん、後になって処分したくなれば売却してもかまいません。

3.相続税の節税効果を期待できる

売却して現金化せずに、そのまま相続すれば、土地の相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地の特例」が適用される可能性があります。相続税の大幅な節税がかなうでしょう。

代償分割の3つのデメリット

代償分割のデメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

1.ある程度の資力がなければ実現できない

不動産を相続する人は代償金を用意しなければなりません。代償金の額は不動産の価値に相当する金額なので、ある程度の資力が必要です。相続する人に資力がなければ代償分割は実現できません

2.代償金の額について相続人同士でもめることがある

代償金の額の算出方法は法律によって明確に定められているわけではありません。後で紹介するとおり、いくつかの算出方法があり、どの方法を採用するかは、相続人同士で話し合って決めます。話がまとまらなければ裁判手続きを利用せざるを得ず、遺産分割に長い時間がかかることもあるでしょう。

3.相続税以外の税金が発生する可能性がある

代償分割を行う場合、贈与税や所得税が発生する可能性があります。以下のような場合は贈与税や所得税が発生するので、注意しましょう。

【贈与税が発生する場合】

  • 遺産分割で得た額よりも、他の相続人に支払う代償金の額の方が大きい場合
  • 遺産分割協議書に代償分割を行う旨の記載がなかった場合

【所得税が発生する場合】

  • 代償金を現金以外の財産(不動産や株式など)で支払った場合

代償分割の選択がおすすめであるケース

代償分割を積極的に検討するべきだといえるのは、以下のようなケースです。

  • 亡くなった方の自宅に同居していた相続人が、今後も住み続けたい場合
  • 亡くなった方が経営していた会社を承継する相続人が、事業資産を相続する場合
  • 農業や事業を承継する相続人が、農地や事業用不動産を相続する場合

代償分割における代償金の決め方

代償金を支払えなければ、代償分割は実現できません。ここでは、代償金額の決め方について解説します。

1.代償金額の4つの求め方

代償金の額を決めるには、以下の4つの方法があります。

①実勢価格を元にする

実勢価格とは、実際に市場で売買される際の価格のことです。具体的な金額は、以下のいずれかの方法を用いて調べます。

  • 不動産会社に査定してもらう
  • 国土交通省の不動産取引価格情報で公示価格を調べて計算する(計算式:公示価格×1.1~1.2)
  • 固定資産税評価額から計算する(計算式:固定資産税評価額÷0.7×1.1)
  • 路線価から計算する(計算式:路線価÷0.8×1.1)

②公示地価を元にする

公示地価とは、国土交通省が毎年3月に発表しているもので、その年の1月1日時点での全国の標準地の1㎡あたりの価格のことです。土地の売買の際の指標として用いられます。公示地価は国土交通省の公式サイトより調べられます。

参考:国土交通省地価公示・都道府県地価調査(国土交通省公式サイト)

③相続税評価額を元にする

代償金額を求める際に、最も用いられるのが相続税評価額です。
相続税評価額は、以下の計算式で算出します。

相続税評価額=路線価×土地面積

路線価は、国税庁の公式サイトで調べられます。

なお、地域によっては路線価が存在しないところもあり、その場合は「倍率方式」を用いて算出します。路線価と同様、国税庁の公式サイトで該当地域の「評価倍率表」で倍率を調べ、固定資産税評価額に乗じて求めます。
相続税評価額は公示価格の8割程度であり、実勢価格と公示地価との中間値に近くなるため、代償金の額として採用されることが多いです。

参考サイト:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

④固定資産税評価額を元にする

公示地価の7割程度であり、最も実勢価格とかけ離れるため、代償金額を決める際にはあまり用いられない方法です。
固定資産税評価額は、市区町村役場から毎年送付される納税通知書を確認するか、固定資産税評価証明書を取得すれば確認できます。

2.どれを採用するかは相続人で決める

上で紹介した4つの方法のうち、どれを用いるかについての決まりはありません。そのため、遺産分割協議によって相続人全員で話し合って決める必要があります。
しかし、大きな金額であることもあり、協議がまとまらず、争いに発展することもあるでしょう。話し合いが難航しそうな場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるか、弁護士に依頼して交渉してもらうことをおすすめします。

代償分割で代償金を支払えない場合の対処法

代償金分割で不動産を相続した人は、代償金を用意しなければなりません。しかし、その額が大きいために、支払えないケースもあるでしょう。そのような場合の対処法を紹介します。

1.分割払いにしてもらう

代償金は一括払いが原則ですが、他の相続人に同意してもらえるなら分割払いにしてもかまいません
その場合、後でトラブルになるのを避けるためにも、代償金を支払う人、受け取る人、双方の合意の元で分割払いにする旨や支払い方法を、遺産分割協議書に明記しておくことが大切です。

2.不動産担保ローンの利用を検討する

金融機関の不動産を担保にしたローンを利用するのも一つの方法です。一般的に、無担保ローンよりも金利は低いことが多く、長期プランにすれば月々の返済額も抑えられます。
ただし、万一、途中で返済できなくなった場合には、相続した不動産を失う可能性もあるという点には注意しましょう。

3.換価分割にする

活用する予定がないのに、「親の遺してくれたものだから」などという理由だけで相続を希望しているなら、分割方法を考え直してみてはいかがでしょうか。大切な思い出のある家を手放したくない気持ちはわかりますが、資金がない場合は、売却をして平等に分割するのが現実的といえるでしょう。

代償分割の場合の相続税の計算方法

代償分割によって不動産を相続した場合、相続税の評価額の計算方法は、代償金の額を決めるのに何を用いたかによって異なります。実勢価格、相続税評価額を用いた場合の計算方法は以下のとおりです。

【代償金の額の算出に実勢価格を用いた場合】

  • 代償金を支払った人の課税価格=相続した遺産全体の相続税評価額-代償金額×(相続税評価額÷代償分割時に用いた実勢価格)
  • 代償金を受け取った人の課税価格=相続した遺産全体の相続税評価額+代償金額×(相続税評価額÷代償分割時に用いた実勢価格)

【代償金の額の算出に相続税評価額を用いた場合】

  • 代償金を支払った人の課税価格=相続した遺産全体の相続税評価額-代償金額
  • 代償金を受け取った人の課税価格=相続した遺産全体の相続税評価額+代償金額

まとめ

今回は、相続不動産の分割方法、代償分割のメリット、デメリット、代償分割の選択がおすすめであるケース、代償金の決め方、代償金を支払えない場合の対処法、代償分割をする場合の相続税の計算方法などについて解説しました。

代償分割は、代償金の支払いによって平等な遺産分割を実現しやすいなど、大きなメリットがある一方、相続人に資力がなければ実現できないなど、デメリットも大きな方法です。代償金の額の決め方も複数あり、どの方法を採用するかは相続人が話し合って決めなくてはならないため、トラブルが起きやすい方法ともいえます。

代償分割を採用するのがベストなのかわからない場合や、代償分割をすることに決めたもののトラブルが起きてしまったりした場合は、早めに専門家に相談しましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「不動産をどのように相続するべきかわからない」「相続した不動産を売却すべきか迷っている」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一