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2023.08.28

相続不動産を売却・分割する方法・換価分割の手続きの流れと注意点

相続不動産を売却・分割する方法・換価分割の手続きの流れと注意点

相続した不動産を売却し、その売却金を相続人で分割する方法を「換価分割」といいます。

平等な分割が難しい不動産を、現金という分割しやすい形にできるため、公平性を保ちやすく、相続税用の納税資金としても利用できるといった点がメリットです。一方、売却する手間や処分費用がかかるほか、税金もかかるなどのデメリットもあります。

想定外のトラブルに見舞われたり、損をしたりしないためにも、換価分割の基礎知識や流れ、注意点などを知ったうえで手続きを進めるのが望ましいでしょう。

今回は、相続不動産を分割する4つの方法、換価分割をするメリット・デメリット、換価分割をする場合の相続手続きの流れ、換価分割を行う際の注意点などについて解説します。

相続不動産を分割する4つの方法

はじめに、相続不動産を分割するにはどのような方法があるのか、確認しておきましょう。

1.現物分割|そのままの形で分ける

現物分割は不動産をそのまま分ける方法です。土地であれば、分筆によって分割できますが、建物は物理的な分割ができません。複数の建物があり、各相続人が一棟ずつ取得するようなケースや、特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の人は別の財産を相続するといったケースでなければ選択できないでしょう。

また、土地であっても、自治体の定める最低敷地面積を満たせなくなったり、接道義務に違反したりするような場合は分割できません。
現物分割は、シンプルではあるものの、採用できるケースが非常に限られる方法といえるでしょう。

2.代償分割|特定の相続人が代償金を支払って取得する

特定の相続人が他の相続人に代償金を支払う代わりに、不動産を相続する方法です。亡くなった人と生前に同居しており、相続発生後もそのまま住みたいという方がいる場合などに向きます。ただし、代償金を用意する必要があるため、取得希望者に資力がなければ難しいでしょう。

3.換価分割|不動産を売却したお金を分割する

相続不動産を売却し、売却金額を相続人で分配する方法です。現金化できるため、公平に分割しやすく、相続人同士のトラブルが起こりにくいなどのメリットがあります。
一方、相続人全員が同意しなければ、売却できないなどのデメリットもあります。

4.共有|相続人全員の共有持ち分とする

相続不動産を分割せず、相続人全員の共有持ち分とします。全員で所有するため、争いが起きにくい点はメリットといえるでしょう。
しかし、その後に発生する固定資産税や不動産の管理などの負担を巡り、トラブルが起きやすかったり、将来、相続人たちが亡くなった後の相続における権利関係が複雑になったりするなど、デメリットは大きいといえます。あまりおすすめできる方法とはいえません。

換価分割をするメリット・デメリット

換価分割には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。メリットとデメリットを踏まえ、換価分割を選択するのがおすすめだといえるケースについても紹介します。

1.換価分割のメリット

換価分割の主なメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 公平な遺産分割を実現できる
  • 資金が不要
  • 相続税の納税資金を用意できる
  • 生前に売却するより相続税を節税できる

① 公平な遺産分割を実現できる

換価分割の最も大きなメリットは、現金化できるため、分けにくい不動産を公平に分割できることといえます。そのため、相続人同士の争いを避けられるでしょう。

② 資金が不要

代償分割のように代償金を準備する必要がなく、その分選択しやすい方法ともいえます。

③ 相続税の納税資金を用意できる

相続財産に不動産が含まれる場合は、相続財産評価額の合計が基礎控除額を上回り、相続税が発生するケースが多いです。評価額の高い不動産であれば、多額の相続税を納めなければならず、その資金に困る場合もあるでしょう。しかし、不動産を売却すれば、その売却金で相続税を納められます。

④ 生前に売却するより相続税を節税できる

不動産の相続財産評価額は、現金を相続するよりも低くなる分、被相続人の生前に売却するより、相続税は安くなるでしょう。

2.換価分割のデメリット

換価分割の主なデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 相続人全員の同意がなければ売却できない
  • 安くしか売れないこともある
  • 手間や経費がかかる
  • 税金がかかる

① 相続人全員の同意がなければ売却できない

相続不動産を売却するには、相続人全員の同意が必要です。一人でも反対する相続人がいれば説得せねばならず、売却手続きを開始するまでに、思いのほか時間がかかる可能性もあるでしょう。

② 安くしか売れないこともある

相続税の申告には、相続発生後10ヵ月以内という期限があります。そのため、売却金を納税資金とするためには、できるだけ早期に売却せねばなりません。売り急いだ結果、安値で売ってしまうこともよくあります。

③ 手間や経費がかかる

売却活動では、不動産業者との打ち合わせなどで手間を取られるほか、契約書用の印紙代や測量費用などの経費がかかる点もデメリットです。

④ 税金がかかる

不動産を売却すれば、譲渡所得税という税金も発生します。売却金額を受け取った相続人全員が確定申告のうえ、負担する必要があるため、思ったほどの金額を受け取れない可能性もあるでしょう。

3.換価分割を選択するのがおすすめであるケース

以下のようなケースでは、換価分割を積極的に検討するとよいでしょう。

  • 相続人全員が不動産の相続を望まない
  • 代償金を用意できない
  • 公平に遺産分割したい
  • 相続税の納税資金を用意できない

換価分割をする場合の相続手続きの流れ

相続不動産を売却して、分割する場合は、以下のような流れで手続きを進めます。

1.相続人全員の協議によって売却を決める

まずは遺産分割協議をおこない、相続不動産を換価分割することについて、相続人全員の合意を得ましょう。一人でも反対していれば、売却はできませんので、意見がまとまらない場合は、専門家に相談するなど早めに対処することが大切です。

2.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議で決まった内容は遺産分割協議書に記載しておきます。遺産分割協議書は、相続登記などの相続手続きを進めるにあたり必要です。相続人全員分の署名、捺印をしたうえで、各人の印鑑証明書も添付しましょう。

3.相続登記をする

相続不動産の売却前には相続登記をして、当該不動産の名義を亡くなった方から相続人にしておかなければなりません。
必要書類を準備したら、相続不動産の所在地を管轄する法務局に提出して申請しましょう。管轄の法務局は下記法務局公式サイトより調べられます。書類提出後は、法務局による審査、手続きがおこなわれ、登記識別情報通知という書類を受領すれば完了です。

参考URL:法務局|管轄のご案内

① 必要書類

相続登記手続きは、下記の必要書類を提出して申請します。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 名義人となる相続人の住民票
  • 当該不動産の固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員分の印鑑証明書
  • 登録免許税分の収入印紙

② 共同登記か単独登記か決めておく

遺産分割協議では、相続登記を共同登記とするか単独登記とするかについても決めておきましょう。
共同登記とは、不動産の名義を相続人全員の共有名義として書き換えること、単独登記とは代表相続人一人を名義人として書き換えることをいいます。それぞれのメリット、デメリットを理解し、自分たちの状況に合った登記方法を選択しましょう。

4.業者へ売却を依頼

売却活動は、通常、不動産業者へ依頼します。業者選びや売却における方針などは相続人全員で話し合って決めましょう。

5.売却先が決まったら売買契約・決済

買い手が決まったら、売買契約を締結し、決済完了後に引き渡します

6.売却代金を分配する

売却によって得た金額を、相続人で分配します。分配の際は、後になってトラブルが起きないよう、計算書を作成し、全員に交付しておくことが望ましいでしょう。

7.確定申告をし、譲渡所得税を納める

不動産売却によって利益を得たら、譲渡所得税を納めねばなりません。売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に、売却金を手にした全員が確定申告を行う必要があります。忘れないよう注意しましょう。

換価分割を行う際の3つの注意点

換価分割を行う際は、以下の点に注意しましょう。

1.遺産分割協議書は贈与とみなされないように作成を

相続登記手続きにおいて、代表者一人を名義人とする単独登記をした場合、贈与とみなされる可能性があります。そのような事態を避けるためには、遺産分割協議書には、不動産を換価するための便宜上の登記である旨を明記しておくことが大切です。
具体的には、以下のように記載しておくとよいでしょう。

① 単独登記した場合の書き方

単独登記の場合は、遺産分割協議書に下記の点を明記しておきましょう。

  • 当該不動産は換価分割を目的として、代表相続人が取得する旨
  • 代表相続人は、当該不動産を速やかに売却し、売却代金から売却にかかるすべての費用を控除のうえ、残金を決まった割合で分配する旨

② 共同登記した場合の書き方

共同登記の場合は、下記の点を遺産分割協議書に明記しておくとよいでしょう。

  • 当該不動産は換価分割のために、相続人がそれぞれ決められた割合によって共同で取得する旨
  • 当該不動産は共同で売却し、売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を、それぞれの共有持ち分割合に応じて分配する旨

2.不動産に売却期限はないが早めが無難

相続不動産の売却には期限はありません。しかし、相続税の申告、納付期限に間に合わせるためにも早めに進めることが無難といえます。

まとめ

今回は、相続不動産を分割する4つの方法、換価分割をするメリット・デメリット、換価分割をする場合の相続手続きの流れ、換価分割を行う際の注意点などについて解説しました。

換価分割は、公平な遺産分割を実現できるうえ、売却代金を相続税の納税資金にも充てられるなど、メリットの大きな分割方法です。実際の相続手続きにおいても、採用されることが多いでしょう。
ただし、そのメリットを生かすためには、遺産分割協議書を正しく作成すること、できるだけ早期に売却活動を開始することが大切です。後になって想定外のトラブルに遭わないように、わからないことや不安に感じることがあれば、早めに専門家に相談しましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。相続した不動産の売却や換価分割に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一