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2023.06.01

不動産の相続登記費用は?自分で手続きする場合・司法書士に依頼する場合の費用相場

不動産の相続登記費用は?自分で手続きする場合・司法書士に依頼する場合の費用相場

不動産を相続すると、相続登記をしなくてはなりません。その際、「どのような費用がどれだけかかるのか気になる」という方は多くいらっしゃるでしょう。

相続登記にかかる費用には、申請に必要な書類を収集するための費用と登録免許税があります。書類収集にかかる費用は数千円程度で済む場合がほとんどですが、登録免許税は不動産の評価額によって決まるため、幅があります。司法書士に依頼する場合は、これらの実費に加えて、5~10万円程度の手数料がかかります。

さらに、不動産を相続すると、相続登記の費用以外にも相続税がかかるケースが多いほか、所有するにしても売却するにしても税金がかかり、ある程度の費用が必要になることを覚悟しておいた方がよいでしょう。

今回は、不動産を相続した場合にやるべきこととかかる費用、相続登記を自分でする場合の手順と費用、相続登記を司法書士に依頼した場合の費用相場などについて解説します。

不動産を相続した場合にやるべきこととかかる費用

不動産を相続すると、以下のことを行う必要があります。

  1. 相続税の申告と納付
  2. 相続登記と登録免許税の納付
  3. 所有を続けるなら、毎年固定資産税税・都市計画税の納付
  4. 売却するなら譲渡所得税の納付

それぞれの内容について説明します。

1.相続税の申告と納付

相続財産の総額が以下の計算式で求められる基礎控除額を上回る場合は相続税の申告と納付をしなければなりません。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続財産に不動産が含まれる場合は、その評価額が大きいために、相続税を収めなければならないケースも多いでしょう。

相続税の額は以下の計算式で求められます。

相続人ごとの相続税=法定相続分に応じた取得金額×税率

なお、計算式中の税率とは下の表のとおりです。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

No.4155 相続税の税率(国税庁公式サイト)より引用

また、相続税の申告と納付には期限があり、相続が発生したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなくてはなりません

2.小規模宅地の特例で相続税が大幅に安くなることも

「小規模宅地の特例」とは、相続人が被相続人名義の家にもともと同居していて、被相続人が亡くなった後もそのまま住み続ける場合に、その土地の評価額を80%減額できる制度です。適用されるのは広さが330㎡以下の土地で、他にもさまざまな要件がありますが、適用を受けられれば、節税効果が非常に高い制度です。

参考URL:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁公式サイト)

3.相続登記と登録免許税の納付

不動産を相続したら、登録免許税を納付して相続登記をする必要があります。相続登記をしなければ、売却もできませんし、不動産を担保に融資を受けることもできません。そのため、早めに手続きをするのが望ましいでしょう。
なお、令和6年(2024年)4月1日からは相続登記が義務化され、相続してから3年以内に必ず行わなければならなくなります。期限を過ぎれば、罰則も科されるので注意しましょう。

4.所有し続けるなら固定資産税・都市計画税がかかる

相続した不動産の所有を続けるなら、固定資産税・都市計画税を納付する必要があります。これらは所有している間は、毎年支払わなければなりません。
税額を確認したい場合は、毎年役所から送られてくる納税通知書を確認するか、役所で固定資産課税台帳を確認する、または固定資産評価証明書を取得するとよいでしょう。

5.売却するなら譲渡所得税がかかる

不動産を売却すれば、売却時に譲渡所得税がかかります。譲渡所得税とは、売却によって得た利益に対してかかる税金のことです。所得税と住民税として請求されます。

相続登記を自分で行う場合の手順と費用

複雑な要因がなければ、相続登記は自分でも行うことも可能です。ここでは、自分で相続登記を行う場合の手順と費用について説明します。

1.相続登記の手順

不動産の相続登記は以下の手順で行います。

①対象不動産の相続人を決める

遺言書が残されていた場合はその内容に従って、遺言書がない場合は遺産分割協議によって対象不動産を誰が相続するのか決定します。

②相続登記の申請に必要な書類を準備する

相続登記の申請に必要な書類とその入手方法は以下のとおりです。

書類 入手方法
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類 被相続人の本籍地の役所で取得
被相続人の住民票除票 被相続人の住所地の役所で取得
相続人の戸籍謄本 相続人の本籍地の役所で取得
相続人の住民票 相続人の住所地の役所で取得
対象不動産の固定資産評価証明書 不動産所在地の役所、市税事務所などで取得
対象不動産の登記事項証明書 法務局で取得(不動産の所在地の管轄でなくても、全国の法務局で取得可能)
登記申請書 書式は自由だが、下記の法務局公式サイトからダウンロードできる書式を使ってもよい

※参考:不動産登記の申請書類について(法務局公式サイト)

なお、遺産分割協議によって相続人が決まった場合は、遺産分割協議書と相続人全員分の印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は各相続人の住所地の役所で取得します。
また、遺言書による遺贈の場合は、遺言書の添付が必要です。

③管轄の法務局へ申請する

書類の準備ができたら、不動産の所在地を管轄する法務局へ提出しましょう。管轄の法務局は、下記のサイトで調べられます。

※参考:管轄のご案内(法務局公式サイト)

④「登記完了証及び登記識別情報通知書」が交付される

法務局に書類が受理され、登記手続きが終われば、「登記完了証及び登記識別情報通知書」が交付されます。登記識別情報通知書は法務局の窓口で受領できるほか、郵送でも受け取れます。登記識別情報通知書を受け取れば、相続登記手続きは完了です。

2.相続登記にかかる費用

自分で相続登記手続きを行う場合は、実費として以下の費用がかかります。

①登記申請時添付資料の取得費用

登記申請時に添付する各書類の取得費用は以下の表の通りです。

書類 費用
戸籍謄本 450円
原戸籍(改製原戸籍) 750円
除籍謄本 750円
住民票 300円程度(市区町村による)
固定資産評価証明書 300円程度(市区町村による)
登記事項証明書 600円
(オンライン請求で郵送受け取りの場合:500円
オンライン請求で法務局窓口受け取りの場合:480円)

取得費用の総額は、相続人の数などによって異なるため、個々のケースによって差がありますが、多くの場合、数千円程度で収まるでしょう。

②登録免許税

登録免許税は、以下の計算式で計算します。

登録免許税=固定資産税評価額×0.4%(100円未満の端数がある場合は切り捨て)

登録免許税分の収入印紙を購入し、相続登記申請書に貼付して納付します。

相続登記を司法書士に依頼すべき場合

相続登記手続きは自分で行うこともできますが、以下のケースに該当する場合は司法書士に依頼することをおすすめします。

1.相続人の数が多い場合

被相続人の兄弟や甥・姪が相続人となる場合は、相続人が大人数となるケースが多いため、司法書士に依頼する方がよいでしょう。
中でも代襲相続が発生している場合は、相続人の数が特に多く、戸籍の収集に手間がかかります。代襲相続とは、本来の相続人が既に亡くなっているために、その子どもや孫が相続人になることをいいます。被相続人だけでなく、亡くなった本来の相続人の出生から死亡まで遡る必要があり、膨大な量の戸籍謄本類を集めなくてはなりません。慣れない方にとっては大きな負担となる可能性が高いため、専門家へ依頼することをおすすめします。

2.亡くなった方の前の代で相続登記をしていなかった場合

前の代で相続登記がされていなければ、その分も登記しなければなりません。必要書類を揃えて登記申請をする必要がありますが、時間が経過しすぎているために、入手できない書類もあるでしょう。その場合は、上申書を作成するなどして対応する必要があります。通常よりも手続きが複雑になるため、司法書士に依頼する方がよいでしょう。

3.遠方の法務局に登記申請しなければならない場合

相続登記の申請は、相続不動産の所在地を管轄する法務局に行わねばなりません。申請書類の提出は郵送でもできますが、不備があれば、基本的に窓口で登記官の指示に従って修正しなければなりません。かなりの労力がかかる可能性があるため、司法書士に依頼する方がよいでしょう。

相続登記を司法書士に依頼した場合の費用相場

相続登記を司法書士に依頼する場合は、実費に加えて司法書士への報酬も支払わねばなりません。その相場は、5~10万円程度でしょう。
ただし、相続人や不動産の数によって、その金額は大きく異なります。具体的な金額を知りたい場合は、司法書士に相談して見積もりを依頼するとよいでしょう。

不動産相続の費用についてよくある質問と答え

相続登記の費用について他にも知りたいことがあるという方もいらっしゃるでしょう。ここでは、不動産相続の費用についてよくある質問とその答えを紹介します。

1.共有名義にする場合、登録免許税は誰が負担しますか?

登録免許税は、基本的にその不動産を取得した人が支払います。そのため、共有名義の場合は、相続人全員で公平に分担するケースが多いでしょう。
ただし、必ずそうしなければならないという決まりはないので、相続人同士でよく話し合うことをおすすめします。

2.前の代で相続登記をしていなかった場合、登録免許税は二重にかかるのでしょうか?

前の代で相続登記をしていない場合、令和4年度の税制改正により、平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に手続きをすれば、登録免許税はかかりません。前の代で登記をしていない場合は、早めに手続きをしましょう。

3.相続登記の司法書士費用は誰が支払うものですか?

司法書士費用は基本的に、依頼した方が支払います。しかし、売却するために、一時的に代表の相続人名義にした場合などは、相続人全員で公平に分担するケースが多いでしょう。
誰が支払わねばならないという決まりはないので、相続人同士でよく話し合って決めましょう。

まとめ

今回は、不動産を相続した場合にやるべきこととかかる費用、相続登記を自分でする場合の手順と費用、相続登記を司法書士に依頼した場合の費用相場などについて解説しました。

不動産の相続登記は複雑なケースでなければ、自分でも行うことが可能です。その場合にかかる費用は、申請書類の取得費用と登録免許税のみです。書類の取得費用は数千円程度で済むことがほとんどですが、不動産によっては登録免許税が高額になるケースもあるでしょう。
相続は頻繁に起こるものではないため、わからないことも多いものです。相続登記や相続した不動産についてわからないことがあれば、専門家に相談しましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「不動産をどのように相続するべきかわからない」「相続した不動産の評価額を知りたい」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一