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2023.11.02

別荘を相続したくない場合は相続放棄するべき?リスクと注意点を解説

別荘を相続したくない場合は相続放棄するべき?リスクと注意点を解説

親が所有している別荘を相続するべきか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。遠方にある別荘を相続すると、維持や管理に多くの手間やコストがかかります。相続時には相続税を支払う必要があります。

相続放棄を検討している方もいらっしゃるかもしれませんが、別荘だけの相続放棄はできません。そうなると、相続後の売却がベストかと思われますが、一筋縄ではいかないケースも多いため、コツを知ったうえで売却活動を行うことが大切です。

今回は、別荘を相続した際のリスク、別荘を手放したい場合の相続後の選択肢、要らない別荘を売却しやすくためのコツなどについて解説します。

だから別荘は相続したくない!相続した際のリスク

使用しない別荘を相続した場合、以下のようなリスクがあります。

1.相続税を払わなければならない

別荘を相続すると、相続税を支払わなければならない可能性があります。

相続税は、必ず発生するわけではありません。各相続財産の相続税評価額の合計が、以下の計算式で求められる基礎控除額を超える場合にのみ発生します。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

しかし、一般に不動産は相続税評価額が高いため、不動産が含まれる相続では相続税が発生するケースが多いでしょう。

また、不動産の相続税評価額は時価ではなく、以下のように求めます。そのため、時価が低い物件であっても、相続税評価額が高額になるケースもあり、相続税が発生する可能性があるのです。

【別荘の土地の相続税評価額】
路線価地域の場合:路線価×地積
倍率地域の場合:固定資産税評価額×評価倍率

【別荘の建物の相続税評価額】
固定資産税評価額×1.0

別荘の土地が、路線価地域と倍率地域のどちらに該当するのか、路線価、評価倍率は国税庁の公式サイト内の以下のページで確認できます。

また、建物の相続税評価額の算出に必要な、固定資産税評価額は、所在地の市区町村役場から毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。納税通知書が見つからない場合は、市区町村役場で固定資産税評価台帳を閲覧するか、固定資産税評価証明書を取得すれば確認できます。

参考URL:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

2.維持・管理にコストがかかる

別荘を所有していると、維持や管理にコストがかかります。土地と建物に対して固定資産税がかかるほか、都市計画税や住民税も支払う必要があります。

住民税は別荘の所在地に住民票がなくても、均等割を負担しなければなりません。その額は、市町村民税3,500円、道府県民税1,500円の合計5,000円で、この金額は全国一律です。別荘を所有している限り、これらの税金を毎年負担しなければなりません。

3.放置はできない

別荘を所有していると、維持・管理をする労力も必要です。
使わないまま放置して空き家にしてしまうと、急速に老朽化が進みます。倒壊の危険をはらむほどになれば、周辺住民へ迷惑をかけてしまうでしょう。怪我を負わせてしまえば、損害賠償請求を受ける可能性もあります。

また、建物が危険な状態になれば、自治体から特定空き家に指定される可能性もあります。特定空き家に指定された場合、固定資産税は6倍にも増額されるため、さらに負担が大きくなるでしょう。使わないからと放置し続けるわけにはいかないのです。

4.売却が難しい

別荘は昔よりも価値が下がり、売却が難しいケースも多くあります。これは移動が不便だったり、維持、管理にコストがかかったりするために、あまり需要がないことが原因です。人気のある土地でも、売却に苦労するケースもあるでしょう。

5.誰が相続するかでもめる可能性がある

別荘の相続を誰も希望しなければ、相続人同士で押し付け合ってもめる可能性もあります。誰が相続するか決まらず、裁判所に調停を申し立てざるを得ないケースも少なくありません。余計な労力と時間がかかり、大きな負担になることもあるでしょう。

別荘を相続したくない!相続放棄はできる?

別荘の相続はさまざまなリスクを伴います。別荘を相続したくないために、相続放棄を検討する方もいらっしゃるでしょう。ここでは、別荘の相続放棄について解説します。

1.別荘だけの相続放棄はできない

相続放棄とは、全ての遺産についての相続権を放棄することです。相続人としての地位を手放すことになり、別荘だけではなくすべての遺産の相続ができません。
特に預金や故人の自宅不動産など他の財産がある場合は、本当に相続放棄をするべきかを慎重に検討してから判断する方がよいでしょう。

2.相続放棄をする際の注意点

相続放棄を検討する際は、以下のことにも注意しましょう。

①手続きの期限は3ヵ月

相続放棄をするには家庭裁判所に申し立てをする必要があります。申し立てには期限があり、相続の開始を知ってから3ヵ月以内に行わなければなりません。この期限を過ぎると、自動的に単純承認をしたとみなされ、故人の遺産を全て相続することになります。

②遺産を処分すると相続放棄はできない

相続放棄を検討しているなら、遺産を処分しないよう注意してください。故人の預金を使ったり、不動産を売却したりした場合、単純承認をしたとみなされて、相続放棄ができなくなります。

③撤回できない

一度家庭裁判所に相続放棄をすることが認められれば、撤回はできません。後になって莫大な財産が見つかったとしても相続できないので注意しましょう。

④思わぬ人に相続権が渡ることがある

ご自身が相続放棄をし、さらに自分と同順位の相続人全員が相続放棄をすれば、相続権は次の相続順位の人に移ります。
その結果、思わぬ人が別荘の維持や管理を負担することもあるでしょう。特に今後も良好な関係を保って行きたい親族であれば、迷惑をかけないよう、ご自身が相続放棄をしたらその旨を知らせましょう。

3.物納により別荘の相続を回避できる可能性も

相続税の支払いを別荘の物納によって行えば、相続をせずに済みます。
しかし、相続税は現金で一括で支払うのが原則であり、「相続したくないから」という理由で物納することはできません。物納が許可されるためには、金銭的に困難な事由があり、担保の提供によって年賦で納付する「延納」でも納付が難しい場合に限られます。
要件を満たす場合のみ、物納によって別荘の相続を回避できる可能性があります。

別荘を手放したい場合の相続後の選択肢

相続放棄をしないなら、別荘を一旦相続するしかありません。しかし、相続後、所有し続けたくないという方も多いでしょう。ここでは、相続後に別荘を手放す方法をご紹介します。

1.売却する

別荘を手放す方法として最も望ましいのは、売却することです。しかし、別荘地は土地の需要があまりなく、売却が難しいケースも多いでしょう。売却金額を下げる、別荘を専門に扱う不動産業者を探して売却するなどの工夫が必要です。

2.譲渡する

別荘を譲ってほしいという親族や知人がいるなら、譲渡するのもよいでしょう。
ただし、専門知識のない個人間で不動産取引を行うとトラブルが起きる可能性があります。気心の知れた間柄であっても、契約書の締結や登記手続きについては司法書士や弁護士などの専門家に任せることをおすすめします。

3.自治体に寄付する

「無料で譲渡してもかまわないから、とにかく手放したい」という場合、自治体に寄付するという方法もあります。しかし、どんな土地でも引き取ってくれるわけではありません。自治体が活用できる土地に限られます。

4.空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、空き家を売りたい人・貸したい人と、買いたい人・借りたい人のマッチングサービスで、自治体が運営しています。登録料は無料なので、売却のチャンスを増やすためにも活用するとよいでしょう。
ただし、あまり浸透していない地域もあり、登録したら必ず売却できるというわけではありません。

5.相続土地国庫帰属制度を利用する

相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得した不要な土地を国に引き渡せる制度です。この制度を利用すれば、買い手が見つかりにくい土地でも国に引き取ってもらえる可能性があります。しかし、この制度を活用するには、別荘を解体して更地にしなければなりません。他にもいくつかの要件を満たす必要があり、20万円程度の負担金もかかります。デメリットもよく確認し、専門家に相談しながら検討するとよいでしょう。

参考URL:相続土地国庫帰属制度について(法務省公式サイト)

相続したくない別荘を売却しやすくための3つのコツ

不要な別荘の売却は容易ではありませんが、少しでも売却しやすくする方法として、以下のものが挙げられます。

1.隣家といっしょに売却する

もし隣家の方も別荘の売却を望んでいるなら、一緒に売却すれば買い手が見つかりやすくなる可能性があります。土地面積が大きくなる分、企業の保養施設など活用用途が広がるからです。

2.物件の調査資料を用意する

希望者が購入を検討しやすいよう、物件の調査資料はできる限り用意しておきましょう。不明点が多ければ、リスクが大きいと判断され、売却できるチャンスを逃してしまう可能性があります。

3.別荘の掃除をしてきれいにしておく

内覧に来てくれた方に少しでも魅力を感じてもらうためにも、掃除はしっかり行っておきましょう。庭は雑草を刈って整備し、室内は掃除をして整然と整えておくことが大切です。売却すると決めたら月に一度は訪問して、家の状態を確認し、掃除をしておきましょう。

まとめ

今回は、別荘を相続した際のリスク、別荘を手放したい場合の相続後の選択肢、要らない別荘を売却しやすくためのコツなどについて解説しました。

使わない別荘を相続したくない場合でも、別荘だけを相続放棄することはできません。相続後に売却や譲渡、寄付によって手放せる可能性もありますが、どれも簡単ではないでしょう。
売却できる可能性を高めるためには、信頼できる不動産業者に相談することをおすすめします。不動産相続に精通した業者であれば、さまざまな方法を提案してくれるはずです。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。別荘の相続に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一