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2023.12.29

経年減点補正率とは?家屋の評価額や固定資産税の算出方法も解説

経年減点補正率とは?家屋の評価額や固定資産税の算出方法も解説

家屋の相続税評価額を調べたり、固定資産税額を見直したりしていて、「経年減点補正率とは何だろう?」「どうやって調べればよいのだろう?」などと気になっている方もいらっしゃるでしょう。

「経年減点補正率」とは、建築から経過した年数に応じて決まる減価割合のことです。築年数が古いほど小さくなり、その分評価額は下がりますが、いつまでも下がり続けるわけではありません。最小値が定められているため、一定の年数経過後は変わらなくなるのです。

今回は、経年減点補正率の概要、家屋の評価額の算出方法と評価替え、家屋の評価額から固定資産税額を求める方法、家屋の評価額の確認方法、年数が経過しても固定資産税が減額されない理由などについて解説します。

経年減点補正率とは

まずは「経年限定補正率」とはどのようなもので、どのようなときに使うものなのか説明します。

1.建築からの経過年数に応じた減価割合

「経年減点補正率」とは、建築から経過した年数に応じた減価割合のことです。

建物は建築からの経過年数が長いほど、損耗してゆき、その資産価値は下がります。建物の評価額の算出の際に、このことを反映するために設けられているのが経年減点補正率です。

その値は建物の構造、種別ごとに定められており、最大で80%ほど評価額を圧縮できます。

経年減点補正率の調べ方

経年減点補正率の具体的な数値は、経年減点補正率表で調べることが可能です。インターネットで調べる場合は、神戸地方法務局が公開している以下のページを参照するとよいでしょう。

また、総務省が公開している下記資料の「別表第9」や「別表第13」では、より細かい区分による値が確認できます。

参考URL:経年減価補正率表(神戸地方法務局公式サイト)

第2章 家屋(総務省公式サイト)

家屋の評価額の算出方法と評価替え

家屋の評価額はどのように決められているのでしょうか。ここでは、基本的な算出方法と、3年に一度行われる評価替えについて説明します。

1.基本の算出方法

家屋の評価額は、基本的に以下の計算式で求めます。

評価額=評点数(=再建築費評点数×経年減点補正率)×評点1点あたりの価額

①再建築費評点数

再建築費評点数とは、評価時点で同じ建物をもう一度新たに建築した場合にかかる費用のことです。正確な費用を求めるためには、屋根や外壁、天井などの部分ごとに評価し、必要な建築費を計算するべきですが、実用的ではありません。そのため、実際には「1㎡あたりの単価×床面積」で計算し、総務省が設けている「固定資産評価基準」に基づいて定められています。

その数値は「再建築費評点基準表」で確認できます。また、再建築費評点基準表は、市町村役場の固定資産税を取り扱っている係に「固定資産税評価情報開示請求書」を提出すれば取得できます。

②評点一点当たりの価額

評価額を求める際に用いられる「再建築費評点数」は、本来であれば資材などの実際の価格が反映されるものであり、物価の変動の影響を受けるものです。

しかし、便宜上用いられる計算式ではそのような事情は考慮されず、現実の価格との間に乖離が起こる可能性があります。

そのような事情に対応するために設けられているのが「評点一点当たりの価額」です。その値は以下の計算式で求めます。

評点一点当たりの価額=1円×物価水準による補正率×設計管理費等による補正率

計算式中の各項目の概要と数値は以下のとおりです。

概要 数値
物価水準による補正率 地域による工事原価の差を考慮して定められる数値。

木造家屋の場合のみ採用される。

都市部の木造家屋は1.00、地方は0.95または0.90。

木造家屋以外の建物は地域を問わず1.00。

(令和3基準年度の場合)

設計管理費等による補正率 工事原価に含まれていない設計管理費、一般管理費等の負担費用を考慮して定められる値。 木造家屋の場合は1.05、木造家屋以外は1.10で地域は問わない。

(令和3基準年度の場合)

2.3年ごとに評価替えが行われる

評価替えとは、3年に1度行われる、不動産評価額の見直しのことです。物価の変動など経済的な事情を反映し、適正で均衡のとれた価額を保つことを目的とします。直近では、令和3年度に行われ、次回は令和6年度に行われる予定です。

ただし、地価が大きく下落するなど、そのままの評価額で据え置くのが適当でない場合は、評価替え年度以外でも修正される可能性もあります。

家屋の評価額から固定資産税額を求めるには

固定資産税の額は、家屋の評価額を基に決められており、以下の計算式で算出されます。

固定資産税=家屋の評価額×標準税率1.4%

標準税率とは、国が提示している税率で、地方税を課税する際に用いられるものです。通常は1.4%として計算されますが、財政的な問題があるなど、自治体に特別な事情がある場合は異なる値が用いられることもあります。正確な数値を確認したい場合は、直接自治体に確認するとよいでしょう。

家屋の評価額の確認方法

家屋の評価額は以下の方法であれば、簡単に確認できます。それぞれの確認方法について説明します。

1.課税明細書を確認する

課税明細書とは、毎年4月から5月頃に所在地の市区町村役場から送付される納税通知書に同封されている書類のことです。さまざまな項目が記載されていますが、家屋に関する部分のうち「価格」の欄に記載されているのが、固定資産税が課税されている建物の評価額です。

他に固定資産税課税標準額や都市計画税課税標準額など、税額の基礎となる金額も記載されています。課税標準額は、通常、評価額と同じ価格です。ただし、特例が適用される場合などは評価額よりも低い価額になります。

2.市区町村役場で固定資産課税台帳を閲覧する

固定資産課税台帳とは、その市区町村を所在地とする不動産の情報を記載した帳簿です。土地課税台帳・家屋課税台帳・土地補充課税台帳・家屋補充課税台帳・償却資産課税台帳の5つの台帳で構成され、以下の情報が記載されています。

  • 不動産の所有者の氏名や住所
  • 所在地、地番、家屋番号、構造、床面積など、不動産の詳細
  • 固定資産税評価額
  • 固定資産税課税標準額
  • 固定資産税額

市区町村長によって作成され、市区町村役場の固定資産税を扱う係で閲覧できます。閲覧できるのは、該当不動産の所有者の他、所有者と同居する家族、所有者から委任を受けた代理人、借地・借家人などの関係者です。

閲覧に手数料はかかりませんが、マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど顔写真付きの本人確認書類を提示する必要があります。また、代理人が閲覧する場合は委任状も必要です。自治体によっては、成年後見人など法定代理人の場合は戸籍謄本などの提出を求める場合もあるため、納税義務者本人や同居家族以外が閲覧に行く場合は、念のため必要書類を確認してから訪れる方がよいでしょう。

3.市区町村役場で固定資産税評価証明書を取得する

固定資産税評価証明書とは、不動産の固定資産税評価額を証明するための書類のことです。主に以下の項目が記載されています。

  • 不動産の所有者の氏名や住所
  • 所在地、地番、家屋番号、構造、床面積など、不動産の詳細
  • 固定資産税評価額
  • 固定資産税課税標準額

取得できるのは、所有者本人と同居する家族、相続人の他、所有者から委任を受けた代理人です。市区町村の固定資産税を扱う窓口で申請すれば取得できます。申請には以下の書類が必要です。

  • 固定資産評価証明等交付申請書
  • 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
  • (所有者の家族の場合)住民票や戸籍謄本など所有者との関係がわかる書類
  • (相続人の場合)被相続人が亡くなったことがわかる住民票除票などの書類
  • (代理人の場合)委任状

他に、200~400円程度の手数料も必要です。具体的な金額は自治体によって異なるため、各自治体の公式サイトを確認するか、直接問い合わせましょう。

また、遠方の場合は郵送請求もできます。詳しい請求方法については、各自治体の公式サイトなどで確認してください。

年数が経過しても固定資産税が減額されない理由

「固定資産税が毎年同じ。築年数は古くなっているはずなのになぜ?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。これには、不動産の評価額を算出する際に用いる「経年減点補正率」か「評点一点当たりの価額」のどちらかが関係する可能性が高いでしょう。

築年数が古くなっているのに、固定資産税額が減額されない理由について説明します。

1.経年減点補正率が最小に達した

経年減点補正率は、築年数の経過とともに小さくなっていくものです。そのため、年数の経過とともに建物の評価額も下がっていきます。

しかし、経年減点補正率には最小値があり、0.2より小さくはなりません。0.2に達するのは、木造建物で27年、木造以外の建物で45年です。それ以上の年数が経過すれば、経年減点補正率が一定となり、建物評価額も変わらないため、固定資産税額も変動しません。

2.評点一点当たりの価額が上昇した

建物の評価額を求める際には、評点一点当たりの価額も用いられます。これは、資材などの物価の変動に対応するためのものでした。物価上昇の影響を受けて上昇することがあるため、建物の評価額も上昇する可能性があります。経年減点補正率の低下があっても、その分、評点一点当たりの価額が上昇したために固定資産税額が下がらないこともあるでしょう。

ただし、固定資産税額は増額することはありません。これは、評価替えの際に求めた新しい評価額が既存の評価額を上回った場合は、既存の評価額のままとするように決められているためです。そのため、固定資産税評価額は前回と同額であることはあっても、増額されることはありません。

まとめ

今回は、経年減点補正率の概要、家屋の評価額の算出方法と評価替え、家屋の評価額から固定資産税額を求める方法、家屋の評価額の確認方法、年数が経過しても固定資産税が減額されない理由などについて解説しました。

経年補正率とは、家屋の評価額を計算する際に用いられる値であり、建築から経過した年数に応じて決まる減価割合のことです。

家屋の評価額を算出するには、経年減点補正率の他、再建築費評点数、評点一点当たりの価額などを加味する必要があります。これらの値を自分で調べて計算することもできますが、複雑な場合もあるため、評価額を正確に知りたい場合は、専門業者や専門家に相談する方がよいでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。経年減点補正率や建物の相続税評価額に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一