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2024.01.31

独身の方が亡くなったときの相続人は?パターン別に解説

独身の方が亡くなったときの相続人は?パターン別に解説

「そろそろ終活を始めようか」と考えたとき、もっとも気になるのは、遺産のことかもしれません。特に独身であれば「相続人は誰になるのだろうか?」「相続人がいない場合はどうなるのだろうか?」などと不安に思われる方も多いでしょう。

被相続人が独身の場合でも、通常の相続順位どおりに相続人が決まります。子どもがいれば子どもが相続しますし、親が健在である場合は、親が相続人です。子どもも親もいなければ兄弟姉妹に相続権が移ります。

また、相続人がいない場合は、裁判所が選任した相続財産清算人が遺産を管理、清算します。特別縁故者がいる場合は、一部が分割されますが、残りは国のものとなります。遺産を渡したい方がいる場合は、あらかじめ適切な対策を講じておくことが大切です。

今回は、法定相続人と相続順位に関する基本知識、被相続人が独身の場合の相続人、独身者が生前のうちにできる5つの相続対策などについて解説します。

法定相続人と相続順位に関する基本知識

はじめに、基本的な法定相続人と相続順位の決まりについて確認しておきましょう。

1.配偶者は必ず相続人になる

配偶者がいる場合は、他に相続人がいようと必ず相続人になります。

ただし、相続人になれるのは、相続発生時に法律上の婚姻関係がある人のみです。離婚した元配偶者や内縁関係にある人には、相続権はありません。

2.第1順位:子どもや孫など直系卑属

子どもは第1順位の法定相続人です。実子だけでなく、養子や非嫡出子にも同様の相続権があります。

被相続人の子どもが先に亡くなっていた場合は代襲相続によって、被相続人の孫にあたる人物が相続人になります。代襲相続とは、本来の相続人が被相続人よりも先に亡くなっていた場合に発生するもので、その人の子どもなど下の世代の人が相続権を得ることです。

3.第2順位:親や祖父母など直系尊属

被相続人に子どもなど、下の世代の人がいない場合は、親が法定相続人になります。既に親が亡くなっている場合は、祖父母が健在であれば、祖父母が相続人になります。

4.第3順位:兄弟姉妹

親や祖父母もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹に相続権が移ります

兄弟姉妹の中で先に亡くなっている人がいた場合は代襲相続が起こります。その人の子ども、つまり被相続人にとっての甥や姪が相続人となります。

パターン別・被相続人が独身の場合の相続人

では、被相続人が独身である場合、誰が相続人となるのでしょうか。パターン別に紹介します。

1.親や祖父母が健在である場合

被相続人に子どもがおらず、親が健在である場合は、親が相続人になります。

両親が離婚していても、子どもとの親子関係は法律上変わらず継続しているため、二人とも相続人です。また、両親ともすでに亡くなっている場合は祖父母に相続権が移りますが、どちらか片方の親が健在であれば、その親が全財産を相続します。

2.親がすでに亡くなっていて、兄弟姉妹がいる場合

被相続人に子どもも親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹のうち、片親だけが同じ異母・異父兄弟がいる場合、その人にも相続権があります。ただし、法定相続分は異なり、両親とも同じ兄弟の1/2です。

3.兄弟姉妹がすでに亡くなっていて甥や姪がいる場合

被相続人よりも先に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合は、代襲相続が発生し、甥や姪に相続権が移ります。ただし、代襲相続が起こるのは1代に限られ、甥や姪が先に亡くなっていても、甥や姪の子どもには相続権は移りません。

4.離婚していて子どもや孫がいる場合

相続発生時は独身であったものの、過去に結婚して出産していた場合や、シングルマザーだった場合、その子どもや孫が第1順位の相続人です。

5.養子がいる場合

養子縁組をした養子がいる場合、養子も第1順位の相続人です。法定相続分も実子と変わりません。

6.非嫡出子がいる場合

非嫡出子でも、父親が認知していれば相続人です。また、法定相続分は実子と変わりません。被相続人が認知していたかどうかは、非嫡出子の戸籍謄本で確認できます。

7.内縁関係にある人がいる場合

内縁関係にあった人は相続人にはなれません。ただし、内縁関係にあった人との間にできた子どもは相続人になれます。

独身で相続人が誰もいない場合はどうなる?

被相続人が独身で、法定相続人にあたる人が誰もいない場合、その遺産はどうなるのでしょうか。

1.遺産の清算や整理は相続財産清算人が行う

被相続人に法定相続人が誰もいない場合、相続財産清算人が相続財産の評価、遺産の管理、債務の支払いなどの清算手続きを行うことになります。相続財産清算人とは、相続人に代わり被相続人の財産を管理する人のことで、債権者や受遺者などの利害関係人または検察官からの申し立てによって家庭裁判所が選任します。

2.特別縁故者がいれば遺産が分割される

被相続人の遺産は、債権者のほか、遺言がある場合は受遺者に優先的に分配されます。それでも財産が残った場合、一部は特別縁故者に分割されます。

特別縁故者とは、被相続人と特に親しい間柄にあった人のことです。内縁関係の夫や妻など被相続人と生計を同じくしていた人の他、療養看護につとめた人、親密な交流があった友人やいとこなどは特別縁故者として認められる可能性があります。

特別縁故者として遺産の分割を受けるには、家庭裁判所へ申し立てをして認めてもらう必要があります。また、特別縁故者が分割を受けた遺産は相続税の課税対象となることにも注意しましょう。

3.残った遺産は国庫に帰属する

債権者や受遺者、特別縁故者に遺産を分配しても、財産が残った場合、国のものになります。

独身者が生前のうちにできる5つの相続対策

特に法定相続人がいなければ、自分の亡き後の遺産の行方や手続きを誰にしてもらうかなど、心配に思うことも多いでしょう。このような心配を少しでも軽減するためには、元気なうちにご自身で何らかの対策を講じておくことをおすすめします。

しっかり準備をしておけば、ご本人が亡き後、身近な方がどうすればよいのかわからず、困ることも減るはずです。ここでは、独身者が生前のうちにできる対策を5つ紹介します。

1.遺言書を作成しておく

財産の行方を指定しておくためにも、遺言書を作成しておきましょう。効力のある遺言書を残しておけば、確実に贈りたい人に遺産を渡せます。法定相続人以外の人にでも遺贈できるので、法定相続人がいる場合だけではなく、いない場合にも作成しておくことをおすすめします。

2.エンディングノートを作成しておく

エンディングノートとは、遺産相続のほか、お葬式や法要、お墓など自分の亡き後のことの他、延命措置など終焉を迎えるに際しての希望を記載しておくものです。何度でも書き直せて、遺言書よりも気軽に作成できますが、法的な強制力はありません。そのため、記載した内容が全て実現されるとは限らないことは認識しておきましょう。

3.生前贈与をする

贈りたい人に、確実に遺産を渡したいなら、生前贈与をするのもよいでしょう。

生前贈与は法定相続人以外にも行えるので、内縁関係にある夫や妻、自分の看護や介護をおこなってくれたいとこや友人などに贈ることもできます。ただし、贈与額が110万円を超えると贈与税が発生する点には注意しましょう。

4.寄付をする

遺言によって、法人や団体に遺産を寄付することもできます。ただし、その場合は事前に送り先に相談しておきましょう。寄付する財産によっては、断られる可能性もあるからです。法定相続人がいる場合は、断られた遺産の処分を巡って争いが起きる可能性もあります。

5.生命保険をかけておく

生命保険金の受取人は法定相続人以外の人でも指定できます。遺産分割の対象にもならないため、法定相続人がいても争いが起きにくいでしょう。

被相続人が独身者である場合によくある質問

被相続人が独身である場合によくある質問に回答します。

1.独身で兄弟姉妹がいない場合の相続人は誰ですか?

独身で子どもがおらず、親や祖父母もいなければ、法定相続人は兄弟姉妹です。しかし、一人っ子で兄弟姉妹もいなければ、法定相続人はいません。相続財産清算人が清算され、遺産の管理や清算が行われることになるでしょう。

また、遺産については、遺言によって受遺者を指定したり、特別縁故者がいたりしない限り、国庫に帰属します。

2.独身で相続人がいない場合、死後の手続きはどうなりますか?

亡くなった後には、死亡届や火葬許可申請書の提出、健康保険の資格喪失届出など、さまざまな事務手続きを行う必要があります。相続人がいれば相続人に任せられますが、いない場合はそれらの事務手続きがどうなるのか心配かと思います。そのような場合は「死後事務委任契約」を締結しておくとよいでしょう。この契約によって、行政手続きや葬儀に関することの他、公共料金の支払いと解約、病院や介護施設への支払い、賃貸不動産に居住していた場合は契約の解除や明け渡し手続きなど、生活に関することも委任できます。

委任する相手は弁護士や司法書士などの専門家の他、信頼できる人であれば、誰でもかまいません。

3.独身の兄弟姉妹が借金を残して亡くなり、相続人全員が相続放棄をした場合はどうなりますか?

相続人全員が相続放棄をすれば、最初から相続人がいないのと同様です。相続財産清算人が選任され、清算手続きを行うことになります。

まとめ

今回は、法定相続人と相続順位に関する基本知識、被相続人が独身の場合の相続人、独身者が生前のうちにできる5つの相続対策などについて解説しました。

遺言書を作成しておくなど、適切な対策を講じておけば、贈りたい人に財産を渡すことができます。ただし、遺産が現金や預金でなく、不動産である場合は受けとる側に登記手続きや相続税などの負担をかける可能性があるので、専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一