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2024.03.05

相続財産清算人とは?選任が必要なケース・申し立て方法を解説

相続財産清算人とは?選任が必要なケース・申し立て方法を解説

相続財産清算人とは、相続人がいない場合に選任されて、遺産を管理して清算する役割を担う人のことをいいます。

選任の申し立てができるのは、債権者や受遺者、特別縁故者などの利害関係人です。身近な方が亡くなり、その方に法定相続人がいないために困っている場合は、相続財産清算人の選任を申し立てるとよいでしょう。

今回は、相続財産清算人の概要、相続財産清算人の選任申し立てをすべきケース、申し立ての方法や費用、相続財産清算人の選任後の流れなどについて解説します。

相続財産清算人とは

まずは相続財産清算人の概要や職務を解説します。

1.相続人が誰もいない場合に選任される

相続財産清算人とは、相続人が誰もいない相続において、本来であれば相続人が行うべき遺産の管理や処分、債務の清算などを行う人のことです。家庭裁判所に申し立てをすることで選任されます。

選任の申し立てができるのは、被相続人の債権者や、特定の財産を遺贈された受遺者、被相続人と特に親しい間柄であった特別縁故者などの利害関係人、検察官です。相続財産清算人として実際に選任されるのは、弁護士や司法書士など専門家である場合がほとんどでしょう。

2.相続財産清算人の職務とは

相続財産清算人の主な職務は以下の4つです。

①相続財産の保存、管理

相続財産清算人には、相続財産の保存行為と管理行為をする権限が与えられています。具体的には以下のようなことを行います。

  • 預金口座の解約
  • 不動産の相続登記手続き
  • 債務の返済
  • 賃貸契約の解除
  • 建物の修繕

②相続財産の処分

相続財産清算人には相続財産の処分をする権限は与えられていません。しかし、裁判所の許可を得れば、以下のような処分行為を行うことが可能です。

  • 不動産の売却
  • 家財道具の売却
  • 株式の売却
  • ゴルフ会員権、リゾート会員権の売却
  • 建物の取り壊し

③相続人の存否の確認や債権者、受遺者の確定

被相続人に本当に相続人がいないのか確認することも相続財産清算人の職務の一つです。具体的には、官報に相続人捜索の公告を掲載し、相続人からの申し出を待ちます。公告掲載から6カ月が経過しても誰からも申し出がなければ、相続人は不存在とされます。その後相続人の存在が発覚したとしても、相続はできません。

また、債権者や受遺者の存在も、官報に公告を掲載して確認します。既に把握している債権者や受遺者に対しては、個別に請求の申し出をするよう催告をし、債権や遺贈される財産の内容を把握します。

④相続財産の清算、国庫への引継ぎ

相続財産清算人は、請求を申し出た債権者や受遺者に対して清算手続きを行います。清算手続き後に残った財産については、特別縁故者に対して一部、財産分与を行い、その後、残った遺産を国庫へ引き継ぎます。

相続財産清算人の選任申し立てをすべきケース

相続人がいなくても、必ずしも相続財産清算人の選任申し立てをしなければならないわけではありません。以下のように、回収したい債権や分割を受けたい財産があったり、相続人がいないためにご自身が何らかの負担をしていたりする場合に、申し立てを検討するとよいでしょう。

1.債権者で債権を回収したい場合

亡くなった方の債権の請求は、通常、相続人に対して行うものです。しかし、相続人がいなければ、請求相手が存在しないため、回収できません。裁判所に相続財産清算人をしてもらい、支払ってもらう必要があります。

2.特別縁故者として遺産の分与を受けたい場合

特別縁故者とは、法定相続人以外で、被相続人と特別親しい間柄にあった人のことです。例として、生計を同じくしていた内縁関係にあった人や、被相続人の療養看護や介護をしていた人などが挙げられます。

特別縁故者であれば、相続財産の清算手続き後に、被相続人が残した財産の一部、または全部を与えてもらうことが可能です。しかし、この請求も法定相続人がいないため、相続財産清算人が選任されなければ行うことができません。

3.相続放棄をしたが財産の管理はしている場合

相続放棄をしても、その手続き時に遺産を占有していた場合は、その財産について管理義務を負います。具体的には相続放棄をしたときに、被相続人名義の不動産に居住していた場合などは、その家を管理せずに放置することは認められません。

相続放棄をした人の管理義務は、相続財産清算人の選任をもって終了します。管理義務から逃れるためにも、相続財産清算人の選任申し立ては早めに行うことが望ましいでしょう。

相続財産清算人の選任を申し立てる方法

実際に相続財産清算人の選任が必要な場合はどうすればよいのでしょうか。ここでは申し立て方法について紹介します。

1.申し立てに必要な書類

相続財産清算人の選任申し立てに必要な書類は以下のとおりです。

  • 申立書
  • 亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類
  • 亡くなった方の住民票除票
  • 亡くなった方の両親の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類
  • 亡くなった方の祖父母の死亡の記載のある戸籍謄本類
  • (亡くなった方に子どもや、その代襲相続者がいたが既に死亡している場合)子どもや代襲相続者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類
  • (亡くなった方に兄弟姉妹や甥や姪がいたが、既に死亡している場合)兄弟姉妹やその代襲相続者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類
  • 預金通帳の写しや残高証明書、不動産登記事項証明書など亡くなった方の財産についてわかる資料
  • 申立人の戸籍謄本や金銭消費貸借契約書など、亡くなった方との利害関係がわかる資料

なお、申立書の書式と記載例は裁判所公式サイトの以下のページからダウンロードできます。

参考URL:相続財産清算人の選任の申立書(裁判所公式サイト)

2.申し立てに必要な書類の提出先

準備した書類は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。「被相続人の最後の住所地」とは、亡くなった方の最後の住民票に記載されている住所のことです。管轄の家庭裁判所は裁判所公式サイトの以下のページで調べられます。

参考URL:裁判所の管轄区域(裁判所公式サイト)

相続財産清算人の選任申し立てにかかる費用

相続財産清算人の選任申し立てには、以下の費用がかかります。

1.申し立てにかかる費用

申し立てに必要な書類とともに以下の費用を納付します。

  • 収入印紙 800円分
  • 予納郵券 数千円分

収入印紙は申立書の所定の欄に貼付して納めます。

予納郵券は各裁判所によって金額と内訳が異なります。提出先の裁判所の公式サイトで確認するか、直接問い合わせましょう。

2.予納金

予納金として官報公告費用5,075円の納付が必要です。裁判所の指示があってから、裁判所の窓口か、裁判所が指定する金融機関で払います。

相続財産清算人の選任後の流れ

相続財産清算人が選任された後は、通常、以下のような流れで手続きが進められます。

1.相続財産清算人選任の公告、相続人捜索の公告

まず、相続財産清算人が選任されたことと、相続人がいれば申し出るように促す内容の公告が官報に掲載されます。相続人の捜索期間は6カ月で、この期間内に相続人が見つからなければ、引き続き清算人が相続手続きを行います。

見つかった場合は、その方に相続手続きを引き継ぎ、相続財産清算人の任務は終了です。

2.相続債権者、受遺者捜索の公告

次に、債権者や受遺者に対して請求申し出をするよう促す内容の公告が官報に掲載されます。申し出が可能な期間は2カ月で、この期間内に申し出なければ、債務の支払いや遺産の分割を受けられません。

また、既に把握できている債権者や受遺者に対しては、申し出を行うよう、相続財産清算人から個別に催告します。債権者、受遺者の捜索は相続人捜索期間内に並行して行われるのが通常です。

3.相続人不存在の確定

相続人捜索の公告の掲載から6カ月以内に、相続人が名乗り出なければ、相続人が不在であることが確定します。

4.相続債権者、受遺者への弁済

請求申し出をした債権者と受遺者に対して、相続財産から弁済をします。優先されるのは債権で、受遺者に分割されるのは、債権の弁済後に財産が残った場合のみです。

また、被相続人が債務超過の状態で亡くなり、相続財産が債権者から請求された額に満たない場合は、それぞれの債権額に応じて按分弁済を行うことになります。

5.特別縁故者へ財産分与

債権者や受遺者がいない場合や債権者や受遺者に弁済をしても、なお残余財産がある場合、特別縁故者に財産の一部を分与します。

財産分与は自動的に行われるわけではありません。相続人の不存在の確定後3カ月以内に家庭裁判所に財産分与の申し立てを行う必要があります。

6.残余財産の国庫への帰属

最後に、残った遺産から相続財産清算人に対する報酬が支払われます。その後に残った財産は国庫に帰属させることになります。

相続財産清算人と相続財産管理人の違い

相続財産清算人は、2023年4月1日の改正民法施行後に新たに設けられました。前述したとおり、相続財産清算人は、遺産の管理、保存行為のほか、相続人、債権者、受遺者の確定、清算手続きなどを行う役割を担います。

一方、相続財産管理人とは、民法改正以前の呼び方です。その名のとおり、相続財産の管理行為のほか、清算手続きも行っていました。

相続財産管理人は、改正民法施行後にも選任されることがありますが、その場合、改正前の相続財産管理人とは職務の範囲が違います。現在、相続財産管理人が行うことが可能なのは相続財産の管理行為のみで、清算手続きを行うことはできません。

まとめ

今回は、相続財産清算人の概要、相続財産清算人の選任申し立てをすべきケース、申し立ての方法や費用、相続財産清算人の選任後の流れなどについて解説しました。

相続人のいない相続では、被相続人に債権があったり、特定の人に分割すべき遺産があったりしても、手続きをする人がいないために弁済してもらえません。弁済を受けるには、相続財産清算人を選任してもらう必要があります。

債権者や受遺者などの利害関係人である場合は、速やかに相続財産清算人の選任の申し立てを行いましょう。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一