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2023.05.02

相続不動産の評価額の算定方法|マンション・賃貸の場合も解説

相続不動産の評価額の算定方法|マンション・賃貸の場合も解説

相続手続きについて調べてみたところ、不動産を相続した際はその不動産の評価額の算定が必要だと知り、
「不動産の評価額とはどのようなものなのだろう?」
「どうやって計算すればいいのだろう?」
などという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、相続における不動産の評価額には、遺産分割協議におけるものと相続税の申告時におけるものがあり、それぞれ算出方法が違います。
このうち不動産の種類によって求め方が異なり、特に複雑なケースが多いのは相続税の申告時における評価額の方でしょう。

今回は、不動産評価額の概要、相続税の申告時における土地、建物、マンションの評価額の求め方、相続財産に不動産があるなら専門家に相談するメリットなどについて解説します。

1.不動産評価額とは

相続において不動産の評価額が必要になる場面として、遺産分割協議と相続税申告時の2つが挙げられます。「評価額」という名称は同じですが、両者では参照するものが違うため、金額が異なるケースがほとんどです。
ここでは、遺産分割協議、相続税申告時、それぞれの場合における不動産評価額の算出方法について解説します。

(1)遺産分割協議における不動産評価額

遺産分割協議のために不動産評価額を知りたい場合、不動産業者に対象不動産の査定を依頼し、実際の取引価格の8割程度とするケースが多いでしょう。
しかし、不動産業者が算定する評価額には確たる根拠があるわけではないため、業者によって価額に差が出ることもあり、相続人同士でもめる可能性もあります。

また、不動産を相続しない人にとっては、不動産の評価額を実際の取引価格とした方が遺産分割において有利になるのに対し、不動産を相続する人にとっては取引価格の8割とした方が有利になることも、遺産分割協議でもめる原因の一つといえるでしょう。
遺産分割協議で不動産の評価額についてもめそうな場合は、話がこじれる前に専門家に相談し、アドバイスをもらうことをおすすめします。

(2)相続税申告時における不動産評価額

相続税申告時における不動産評価額は、国税庁の定める算出方法を用いて求めます。土地の評価額の求め方には「路線価方式」と「倍率方式」の二つがあり、どちらを採用するかは地域によって異なります。
また、家屋の評価額に用いるのは固定資産税評価額です。

2.路線価方式を用いた土地の評価額の求め方

路線価が定められている地域については、路線価方式で評価額を求めます。路線価とは、「路線に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額」のことです。日本全国どの地域でも定められているわけではなく、路線価のない地域もあります。
ここでは、路線価方式を用いた土地の評価額を求める手順について説明します。
なお、相続不動産のある地域に路線価があるかどうかは、国税庁公式サイト内の以下のページで調べられます。

参考URL:財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

(1)必要書類

まずは以下の書類を準備しましょう。

  • 納税通知書
  • (共有の場合)登記簿謄本

納税通知書は毎年4月下旬から5月頃に役所から送られてくるはずです。被相続人が残していないか確認しましょう。納税通知書が見つからない場合や、対象不動産が共有である場合は登記簿謄本を取得します。登記簿謄本は全国の法務局で取得可能です。

(2)路線価方式の計算式

路線価方式の場合、土地の評価額は以下の計算式で算出します。

土地の評価額=地積×持分×路線価

① 地積

納税通知書、または登記簿謄本で確認できます。

② 持分

登記簿謄本で確認できます。「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」の「権利者その他の事項」欄を確認すればわかるはずです。

③ 路線価

先に紹介した路線価図・評価倍率表で確認できます。該当区域の路線価図を確認すると、それぞれの道路に数字が記載されています。これが「路線価」で、千円単位の表記になっています。例えば、「125D」と記載されていた場合、路線価は125,000円です。

3.倍率方式を用いた土地の評価額の求め方

路線価が定められていない地域の土地の評価額は「倍率方式」で求めます。倍率方式とは、固定資産税評価額に、国税庁によって定められた倍率を乗じて土地の評価額を求める方法です。
また、路線価が定められていない地域のことを「倍率地域」といい、該当の地域が倍率地域にあたるかどうかは先に紹介した路線価図・評価倍率表で確認することが可能です。

(1)必要書類

倍率方式で土地の評価額を求めるには、以下の書類が必要です。

  • 納税通知書または課税証明書または評価証明書
  • (共有の場合)登記簿謄本

納税通知書は土地の評価額を確認するのに必要です。見つからない場合は、課税証明書か評価証明書でも確認できます。課税証明書も評価証明書も不動産の所在地のある役所で取得できます。

(2)倍率方式の計算式

倍率方式の場合、土地の評価額は以下の計算式で算出します。

土地の評価額=固定資産税評価額×持分割合×倍率

① 固定資産税評価額

納税通知書の「価格」欄にある数値のことです。課税証明書、評価証明書の場合は「評価額」欄で確認できます。

② 持分割合

登記簿謄本の「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」「権利者その他の事項」欄に記載があります。

③ 倍率

路線価図・評価倍率表に掲載されている倍率表を確認します。路線価図を調べる場合と同様の手順で、該当市町村を調べると「この市町村の評価倍率表を見る」という記載があり、これをクリックすれば最新の倍率表が表示されます。

4.借地の場合の土地の評価額の求め方

上記で紹介したのは、所有している土地の評価額の求め方です。借りている土地の場合は、以下のようにして評価額を算出します。

(1)路線価方式の場合

借りている土地が評価額を路線価方式で求められる地域にある場合、その評価額は、所有している土地の評価額に借地権割合を掛けて求めます。計算式は以下のとおりです。

借りている土地の評価額=地積×持分×路線価×借地権割合

借地権割合は、路線価図の数字の右隣に表記されているアルファベットで確認できます。各アルファベット記号の示す借地権割合は下の表のとおりです。

また、郊外など、あまり建物が建設されていないような地域では、数字の右隣にアルファベットが付いておらず、借地権割合が定められていないこともあります。これは一帯に借地がないということではなく、借地があったとしても借地権としては評価しないという意味です。

記号 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

(2)倍率方式の場合

対象不動産が借りている土地で、倍率地域にある場合、その評価額は以下の計算式で求めます。

借りている土地の評価額=固定資産税評価額×倍率×借地権割合

借地権割合は倍率表の「借地権割合」欄で確認できます。国税庁の公式サイトから該当地域の倍率表を確認してみましょう。

4.家屋の評価額の求め方

次に家屋の評価額の求め方を説明します。

(1)家屋の評価額は固定資産税評価額

家屋の評価額は固定資産税評価額です。正確な計算式では倍率を乗じるように記載しますが、その割合は1.0なので固定資産税評価額がそのまま評価額となります。納税通知書の「価格」欄、または課税証明書や評価証明書の「評価額」欄を確認しましょう。

建物の評価額=固定資産税評価額×倍率(=1.0)

(2)賃貸物件の場合

相続不動産が貸家である場合、評価額は以下の計算式で求めます。

建物の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合(=30%)×賃貸割合(=100%))

① 固定資産税評価額

固定資産税評価額は、納税通知書か固定資産評価証明書を取得して確認します。

② 借家権割合

令和5年4月現在、全国一律で30%とされていますが、今後変更される可能性もあります。念のため、路線価図・評価倍率表で確認しましょう。対象不動産の所在地の都道府県をクリックし、「財産評価基準書目次」ページ内の「2. 土地関係以外」から「借家権割合」を選択すれば確認できます。

③ 賃貸割合

賃貸割合とは、全ての部屋のうち、実際に貸し出されている部屋の割合のことです。一戸建ての場合は、全部屋貸し出されていると考えて問題ない場合がほとんどなので、100%となります。

5.マンションの評価額の求め方

マンションを所有していた場合、その評価額は以下のように求めます。

(1)建物分の評価額の求め方

建物分は、家屋の場合と同じく、固定資産税評価額と同額になります。納税通知書を確認するか、役所で固定資産評価証明書を取得して確認しましょう。

建物の評価額=固定資産税評価額×倍率(=1.0)

(2)土地(敷地分)の評価額の求め方

マンションを購入すると、部屋だけでなく土地についての権利も得られます。これを敷地権といい、マンションの場合の土地(敷地分)の評価額は以下の計算式で求められます。

土地(敷地分)の評価額=マンション全体の土地の評価額×敷地権割合(持ち分割合)

① マンション全体の土地の評価額

一般的な土地と同様、路線価がある地域は路線価方式で、倍率地域は倍率方式で求めます。

② 敷地権割合

敷地権割合とは、マンション全体の土地に対して自分の専有部分の土地の割合のことです。敷地権割合は売買契約書に記載されているほか、建物の登記事項証明書の「表題部」に記載されています。

(3)賃貸マンションの場合

賃貸マンションや賃貸アパートを所有していた場合、その評価額は下記の計算式で評価額を算出します。

建物の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合(=30%)×賃貸割合)

① 固定資産税評価額

納税通知書か固定資産評価証明書で確認します。

② 借家権割合

2023年現在、国税庁によって全国一律で30%と定められています。

③ 賃貸割合

賃貸割合とは、全部屋のうち貸し出されている部屋数の割合のことです。部屋数で計算するのではなく、専有部分の床面積で計算します。賃貸割合の計算式は以下のとおりです。

賃貸割合=相続開始日に賃貸されている専有部分の床面積÷当該建物の専有部分の床面積の合計

例えば、以下のようなマンションの例を考えてみましょう。

全部屋:50㎡の部屋×6室、30㎡の部屋×4室
相続開始日に賃貸されている部屋:50㎡の部屋×4室、30㎡の部屋×4室

この場合の賃貸割合は以下の計算式で算出し、320/420となります。
(50㎡×4室+30㎡×4室)÷(50㎡×6室+30㎡×4室)=320/420

6.相続で不動産の財産評価が必要なら専門家に相談を

遺産に財産評価すべき不動産が含まれている場合に、専門家に依頼するメリットを紹介します。

(1)特例を正しく適用できる

不動産には、小規模宅地の特例や、居住用財産(空き家)を売ったときの特例など、賢く活用すれば、大きな控除が期待できる特例があります。しかし、これらの特例も知識がなければ活用できないため、税金で損をしてしまう可能性があるでしょう。
不動産の特例に関する知識を豊富に持つ専門家に相談すれば、適用可能な特例を判断し、相続税額を最小限に抑えるためのアドバイスを受けられるでしょう。

(2)評価額を減額できることも

実は不動産の評価額を減額できるケースは、意外に多くあります。いびつな部分がある土地なら、不整形地補正率を使って、間口が狭い場合は間口狭小補正率を使って計算すれば、減額が可能です。他にも、奥行きが短かったり長かったりする場合に使用可能な補正率もあります。また、土地の一部に私道があれば、その使われ方によっては評価額が大きく下がる可能性があります。
不動産に精通した専門家に相談すれば、不動産の評価額を減額できる可能性を的確に判断してもらえるでしょう。

まとめ

今回は、不動産評価額とは何かということから、相続税の申告時における土地、建物、マンションの評価額の求め方、相続財産に不動産があるなら専門家に相談するメリットなどについて解説しました。

相続における不動産の評価額には、遺産分割協議における評価方法と相続税の申告時における評価方法の2種類の方法があります。特に複雑なのは相続税申告時における評価です。不動産の種類によって算出方法が異なるため、一般の方にとっては複雑に感じられることも多いでしょう。
また、不動産の評価は、減額が可能な場合や、特例を適用して節税できる場合もあります。税金で損をしないためにも、評価額を算出すべき不動産が遺産に含まれる場合は、専門家に相談や依頼をすることをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「相続した不動産の評価額を知りたい」「不動産を相続したけれど売却すべきなのか判断できない」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一