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2023.04.28

不動産相続の名義変更期限は?2024年の法改正による注意点を解説

不動産相続の名義変更期限は?2024年の法改正による注意点を解説

「相続した不動産の名義変更手続きをしなければ」と思っているものの、忙しくてなかなか手が回らないという方も多くいらっしゃるでしょう。

「相続した不動産の名義変更手続きの期限はあるのだろうか?期限があるなら、いつまでなのか?」
「手続きしないまま放置していると、ペナルティを受けるのだろうか?」
などと、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

2023年現在、相続した不動産の名義変更の期限は特にありません。しかし、2024年4月1日からは法改正により、3年以内に不動産相続の名義変更を行うことが義務付けられます。期限内に手続きをしなければペナルティも科されるため、注意が必要です。

今回は、2023年現在の不動産相続の名義変更期限、2024年4月1日以降の名義変更期限、相続登記をしないとどうなるか、不動産の相続名義変更手続きの流れ、手続きにかかる費用などについて解説します。

1.2023年現在、不動産相続の名義変更期限はない

不動産を相続したら、相続登記をして名義変更を行わなければなりません。しかし、2023年時点では義務ではなく、その期限についての定めもありません。
いつ名義変更してもかまいませんし、いつまでも名義変更の手続きをしないまま放置していても、ペナルティを科されることはありません。

2.2024年4月1日より不動産相続名義変更期限は3年以内に

これまでは期限も義務も定められていなかった不動産相続の名義変更ですが、2024年4月1日からは法改正により義務化され、手続きの期限も設けられます。違反した場合はペナルティを科せられる可能性もあるので、概要を理解して遵守するようにしましょう。

(1)2024年4月1日より相続登記は義務化

民法・不動産登記法の改正により、2024年4月1日から不動産の相続登記は以下のように変わります。

  • 相続登記申請の義務化
  • 新しく相続人申告登記が設けられる
  • 所有者の氏名や住所の変更登記の義務化

今回の改正の背景には所有者不明土地(所有者が不明な土地)の増加があります。これまで不動産の相続登記は任意であったため、相続登記をしないまま放置する人が多くいました。その結果、所有者不明であるために有効活用ができないだけでなく、付近の景観を損ねたり公衆衛生を害したりすることとなり、さまざまな悪影響が全国的に発現しています。

国土交通省が毎年発表している「土地白書」の平成30年度版によると、正しく登記されておらず「登記簿のみでは所在不明」の土地が全体の20.1%、このうち相続登記されていないために所在不明のものは66.7%にも上ります。
このような背景から、所有者不明土地を減らして国土を有効活用するためにも相続登記が義務化されることになりました。

参考URL:平成30年版 土地白書「第1部第3章 所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応」

(2)期限は3年で怠れば罰則も

2024年4月1日からは相続登記に期限が設けられます。その期限とは「相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内」です。この期限を正当な理由なく守らなければ、10万円以下の科料を科せられる可能性があります。

(3)期限に間に合わなければ相続人申告登記

相続手続きはスムーズに進まないことが少なくありません。遺産分割協議がまとまらなかったり、遺言書の有効性を争ったりするなど、申告期限に間に合わないケースもあるでしょう。

そのような場合は、相続人申告登記を利用すればペナルティを科せられる心配はありません。相続人申告登記とは、相続人の氏名や住所だけをとりあえず登記する手続きです。持分まで登記する必要がなく、相続人が複数いる場合でも代表相続人が登記すれば済むので、手間もあまりかかりません。相続登記の期限に間に合わない場合は利用しましょう。

(4)所有者の氏名や住所の変更登記が義務化

不動産所有者が婚姻や転居などによって氏名や住所が変更になった場合の変更登記も義務化されます。所有者は、氏名や住所に変更があった日から2年以内に変更登記の申請をしなければなりません。

(5)2024年4月1日以前の相続分にも適用される

2024年4月1日以前に相続していた不動産についても、必ず相続登記をしなければなりません。過去の不動産についての申請期限は、以下のいずれかのうち遅い方が適用されます。

1. 義務化が始まる2024年4月1日から3年以内
2. 自己のために相続が開始したこと、及び不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内

2.不動産の相続登記をしないとどうなる?

2023年現在、不動産の相続登記義務はありませんが、それでも相続が開始してからできるだけ早期に行うことをおすすめします。相続登記をせずに放っておくと、以下のようなリスクを負う可能性が高いからです。

(1)処分できず、担保設定もできない

相続登記をしないまま放っておくと、売却も担保設定も何もできません。たとえ親族でも、他人名義の不動産に対して勝手なことはできないのです。有効活用できないまま、時間だけが過ぎてしまうでしょう。

(2)時間が経つほど相続手続きが複雑になる可能性がある

時間が経てば人の状況は変わります。相続人のうちの誰かが亡くなって、その子どもたちに相続権が移ったり認知症を発症する相続人が現れたりする可能性もあるでしょう。そうなると相続関係は、当初よりも複雑になります。代襲相続が発生すれば相続人の数が増える分、登記に必要な書類も増えるでしょう。認知症の人がいる場合は、相続手続きの前に成年後見制度を利用するための手続きをしなくてはなりません。相続手続きが複雑になり、余計な手間も増えてしまうでしょう。

(3)子どもや孫が大変な思いをする可能性がある

自分の代で親の不動産の相続登記をしないまま放置すると、子どもや孫の世代に迷惑がかかる恐れがあります。下の世代になればなるほど、相続人の数が増え、権利関係が複雑になる可能性が高いからです。必要な書類も増えるうえ、時間が経過しすぎたことで入手困難になる書類もあり、登記手続きを進めることが難しくなる可能性もあります。

(4)空き家になる

被相続人が亡くなった後、誰も住まなくなった家を、相続登記をせず、処分も管理もしないまま放っておくと空き家状態が続きます。人が住まず、老朽化が進んだ空き家は危険です。倒壊や崩落の恐れがあり、付近の住民に迷惑をかける可能性もあるでしょう。実際に怪我などの損害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を負うことになります。
また、荒れ放題となった土地や建物は、近隣の景観を損ねたり、公衆衛生上の問題を引き起こしたりするリスクもあります。空き家として放置すれば、周辺地域一帯に迷惑をかける可能性もあるのです。

(5)特定空き家に指定された固定資産税が増額される

空き家のまま放置して、自治体から「特定空き家」として指定された場合、固定資産税が増額になる可能性があります。
「特定空き家」については、空家等対策の推進に関する特別措置法第2条2項で定められており、以下のような家屋のことをいいます。

  • そのまま放置すれば倒壊等の危険がある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

自治体から特定空き家に指定され、行政指導を受けても改善しなければ、「勧告」を受けます。そうなると、住宅用地の特例措置を受けられなくなり、固定資産税はかなり増額されるでしょう。
さらに、「勧告」にも従わなければ、次は「命令」が出されます。命令にも従わなければ、最大50万円の過料が科せられる可能性があります。

3.不動産の相続名義変更手続きの流れ

実際に不動産の名義変更手続きを行う際、どのような流れで進めるのでしょうか。相続登記を行うまでの手順について説明します。

(1)誰がどのように相続するのか決める

まずは遺産に含まれる不動産を誰が相続するのかを決めなくてはなりません。相続人の決め方は遺言書の有無により大きく変わります。

① 遺言書がある場合

被相続人が遺言書を残していた場合、その内容に従うのが原則です。遺言書の中で指定されていた人が相続することになります。

② 遺産分割協議と相続方法

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が相続するのかを決めます。遺産分割協議に入る前には、必ず相続人調査と財産調査を行わなければなりません。相続人に漏れがあれば、協議がまとまっていても最初からやり直す必要があります。さらに、財産調査を怠れば、正しい相続方法を選択できなかったり、適切に分割できなかったりする可能性があるでしょう。
相続人と財産の調査はどのような場合も必ずしっかり行いましょう。

不動産の相続方法には主に以下の4つの方法があります。

  • 現物分割:そのまま平等に分割して相続する方法
  • 代償分割:特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人へ代償金を支払う方法
  • 換価分割:不動産を売却し、売却金を相続人で分配する方法
  • 共有名義:不動産を処分せず、相続人全員の名義で所有し続ける方法

相続人の希望や状況によって、適した相続方法は異なります。どの相続方法を選択すべきか判断が難しい場合は専門家に相談するとよいでしょう。

(2)相続名義変更に必要な書類を準備する

誰がどのように相続するのか決まったら、必要書類を準備します。相続登記に必要な書類は以下のとおりです。

  • 相続登記申請書
  • 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 当該不動産の固定資産税評価証明書
  • (遺言書による相続の場合)遺言書
  • (遺産分割協議による相続の場合)遺産分割協議書
  • (遺産分割協議による相続の場合)相続人全員の印鑑証明書

なお、相続登記申請書の書式は、法務局公式サイト内の以下のページからダウンロードできます。

参考URL:不動産登記の申請書様式について(法務局公式サイト)

(3)法務局で登記申請

書類がそろったら、法務局に提出し申請します。提出先は、当該不動産の所在地を管轄する法務局です。管轄の法務局は法務局公式サイト内の以下のページで調べられます。

参考URL:管轄のご案内(法務局公式サイト)

4.相続不動産の名義変更手続きにかかる費用

名義変更の手続きをするにあたり、費用が心配だという方もいらっしゃるでしょう。相続登記にかかる費用は、どのような不動産がどれくらいあるかによって異なりますが、概して高くはありません。実費と司法書士に依頼した場合にかかる費用について説明します。

(1)実費

相続登記にかかる実費は、提出書類である戸籍謄本や住民票などの取得費用と、登録免許税のみです。トータルでどれくらいかかるかは、ケースによって異なります。それぞれの費用の目安や計算方法は以下のとおりです。

① 登記申請時添付資料の費用

登記申請時に添付する各書類の取得費用は以下のとおりです。

書類の種類 金額
戸籍謄本 450円(全国一律)
改製原戸籍 750円(全国一律)
除籍謄本 750円(全国一律)
住民票 300円前後(各市区町村による)
固定資産税評価証明書 300円前後(各市区町村による)

② 登録免許税

登録免許税は以下の計算式で算出します。

登録免許税=固定資産税評価額×0.4%

固定資産税評価額は、固定資産税評価証明書や、納税通知書に添付の課税明細書に記載されています。

(2)司法書士に依頼する場合

司法書士に相続登記を依頼する場合の司法書士報酬の目安は6~10万円程度でしょう。また、ほとんどの場合さらに実費が加わります。

5.不動産相続の名義変更は自分でできるのか

不動産の相続登記はそれほど複雑な手続きではありません。早急に行うほどシンプルで、自分でできる可能性が高いです。
ただし、以下のような場合は複雑なことが多いため、専門家に依頼することをおすすめします。

  • 相続人が兄弟姉妹や甥姪などで権利関係が複雑な場合
  • 相続開始から時間が経ってしまい、代襲相続が発生したり、複数世代分の相続をする必要が生じたりしている場合
  • 必要書類が揃わない場合
  • 遺産分割協議でもめており、話がまとまらない場合
  • 相続人の中に認知症、未成年、行方不明の方がいる場合

まとめ

今回は、2023年現在の不動産相続の名義変更期限、2024年4月1日以降の名義変更期限、相続登記をしないとどうなるか、不動産の相続名義変更手続きの流れ、手続きにかかる費用などについて解説しました。

相続不動産の名義変更手続きには、2023年現在、期限も義務もありません。しかし、2024年4月1日からは法改正によって、相続登記は義務化され、手続き期限は「相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内」となります。期限を過ぎるとペナルティを科される可能性もあるので、できる限り早めに手続きをするのが望ましいといえるでしょう。とはいえ、遺産に不動産が含まれる相続は複雑なことも多く、相続方法も難しいため、判断が難しいことも多いでしょう。そのような場合はぜひ専門家を頼ってください。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「不動産を相続したけれど売却すべきなのか迷っている」「相続した不動産の評価額を知りたい」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一