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2023.05.31

土地の相続手続きの進め方|分割方法や節税の方法も解説

土地の相続手続きの進め方|分割方法や節税の方法も解説

親が土地を残して亡くなり、相続手続きをしなければならないけれど「どのように進めればよいのかわからない」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。

遺産に土地が含まれている場合、相続手続き自体は通常の場合とほとんど変わりませんが、相続登記が必要となります。また、相続後に何らかの方法で処分しなければならない場合は、その分、手間がかかります。

今回は、土地を含めた遺産の相続手順、土地の相続登記や相続した後の処分の方法などについて解説します。

土地の相続手順

最初に、土地を含めた遺産の相続手順を説明します。

1.遺言書の有無を確認

まずは亡くなった方が遺言書を残していないか確認しましょう。遺言書が残されているかどうかでその後の手続きの流れは大きく変わります

遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があり、それぞれ保管されている場所が異なります。自筆証書遺言・秘密証書遺言であれば自宅で保管されているケースが多いでしょう。また、自筆証書遺言の場合は、令和2年7月10日より開始された制度により、法務局で保管されている可能性もあります。一方、公正証書遺言であれば、公証役場で保管されており、遺言検索システムを使用して探すことが可能です。

亡くなった方から遺言について聞いていない場合は、あらゆる可能性を考慮して丁寧に探しましょう。

2.相続人調査

遺言書が見つからない場合、相続人全員で遺産分割協議を行わなくてはなりません。協議を実施する前に、相続人の特定をする必要があります。亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍を取得し、相続人を調査しましょう。

「親族のことだし、わざわざ調査する必要はない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、調査を省略してはいけません。後になって思わぬところから相続人が現れた場合、遺産分割協議を最初からやり直さなければならないからです。

3.財産調査・土地の評価額の調査

遺産分割協議を行う前に、遺産についての調査もしなければなりません。どのような財産がどれだけあるのかを調査した上で、評価額も調べましょう

遺産分割における土地の評価方法に絶対的なものはありません。土地の評価額を知るには、以下のような方法があり、どの方法を取るかによって価額は異なります。

  • 不動産業者に査定してもらう
  • 固定資産税評価額を調べる
  • 相続税評価額を調べる

比較的よく利用されるのは、不動産業者による査定です。特に売却を考えている場合は、実勢価格を知ることができるというメリットがありますが、業者によって価額が異なることも多く、相続人同士の間で争いが起きるかもしれません。

客観性を重視するなら、固定資産税評価額か相続税評価額を調べるとよいでしょう。固定資産税評価額なら、毎年役所から送られてくる納税通知書を確認できます。一方、相続税評価額は、土地の所在地によって算出方式が異なるなど、少々複雑です。相続税評価額を知りたい場合は専門家に相談しましょう。

財産調査では、プラスの財産だけでなく、債務などのマイナスの財産についても、しっかり調べなければなりません。マイナスの財産が多い場合は、相続放棄を検討する必要があるからです。

4.遺産分割協議

相続人と財産の調査が終わったら、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決めます。遺産分割協議は、必ず相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けていれば無効になるので注意しましょう。
協議で決まった内容は、遺産分割協議書を作成して記録しておきます。遺産分割協議書は後になってトラブルが起きるのを防ぐだけでなく、相続税の申告や相続登記の際にも必要なので、必ず作成しましょう。

遺産が土地しかないなど、複数の相続人が土地を相続したい場合、どのように分割すればよいのかわからず困ってしまうことも多いでしょう。
土地の分割方法には以下の4つの方法があり、いずれかの方法で分割することになります。

  • 現物分割:分筆によって土地を分けて相続する方法
  • 代償分割:特定の相続人が土地を相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法
  • 換価分割:土地を売却して得た売却金を相続人で分割する方法
  • 共有分割:相続人全員の共有名義にする方法

相続人同士でよく話し合い、最適な方法を選択しましょう。

5.相続税の申告と納付

どのように遺産分割するか決まったら、相続税の申告と納付をします。相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。間に合わなければペナルティを課せられるため、期限は必ず守りましょう。
なお、相続税は、基礎控除額を上回らない場合、申告も納付も必要ありません。

相続税の計算方法と節税に役立つ特例

相続税の基礎控除額や相続税の計算方法、節税に役立つ特例について説明します。

1.相続税の基礎控除とは

相続税には非課税枠が設けられており、課税対象となる相続財産の額から差し引くことで、減税が期待できます。この非課税枠のことを基礎控除額といい、具体的な金額は以下の計算式で求めます。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続財産の総額が、上の式で求めた基礎控除額を上回らなければ相続税の申告も納付もする必要はありません。

2.相続税の計算方法

相続財産の総額が基礎控除額を上回った場合は、基礎控除額を差し引いた分が課税対象になります。相続税は以下の計算式で求めます。

相続税=法定相続分に応じた取得金額×税率

上記の計算式で各相続人の相続税額を求めます。相続税の総額は、各人の税額を合計して求めましょう。なお、税率は下の表の通りです。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

国税庁|No.4155 相続税の税率より引用

3.相続税を軽減できる小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、亡くなった方(被相続人)が住んでいた家に、もともと同居していた相続人が住み続ける場合に、その土地の評価額を80%減額できる制度です。
広さが330㎡以下の土地が適用の対象で、他にもさまざまな要件があります。特例の適用を受けられるかどうかは専門家に確認してみるのがよいでしょう。

相続した土地の相続登記は早めに行うことが大切

土地の相続は、相続税の納税で終了ではありません。相続登記をして、名義人を変更する必要があります。ここでは、相続登記をしない場合のリスクや、相続登記についての法改正、相続登記の手順について説明します。

1.相続登記をしない場合のリスク

2023年現在、相続登記は義務ではありません。しかし、いつまでも相続登記をしないで放っておくと、以下のようなリスクがあります。土地を相続したら、速やかに相続登記も行うようにしましょう。

  • 不動産を売却できない
  • 不動産を担保とした融資を受けられない
  • 不動産詐欺などの犯罪に巻き込まれる可能性がある
  • 子どもや孫の代まで放っておくと、権利関係がより複雑化し、ますます処分しにくくなるうえ、相続税も多くかかる

2.2024年より相続登記は義務化する

2024年4月1日からは法改正により、相続登記が義務化されます。不動産を取得してから3年以内に登記しなければ罰則により10万円以下の過料が科されます。2024年4月1日以前に相続した不動産も対象となるため、既に土地を相続している場合は速やかに相続登記を行いましょう。
なお、法改正以前に相続した不動産の相続登記期限は、改正法の施行日から3年、つまり2027年3月31日です。

3.相続登記の流れ

相続登記手続きは以下の手順で進めます。

  1. 登記申請に必要な書類の準備
  2. 対象不動産の所在地を管轄する法務局へ書類を提出して申請する
  3. 法務局から「登記完了証及び登記識別情報通知書」を受領すれば完了

また、登記申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票除票
  • 法定相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産相続人の住民票
  • 対象不動産の固定資産評価証明書
  • 対象不動産の登記事項証明書
  • 登記申請書
  • 収入印紙(「固定資産税評価額×0.4%」で求められる登録免許税分。)

【遺産分割協議による相続の場合】

  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員分の印鑑証明書

【遺言書による遺贈の場合】

  • 遺言書

相続した土地の処分・活用法

相続した土地に建っている家屋に居住するなら問題はありませんが、誰も活用しないなら空き地のまま放置してはいけません。ここでは、相続後の土地をどうするべきかについて解説します。

1.売却する

相続した土地を活用するつもりがないなら、思い切って売却した方がよいでしょう。そのままにしていては固定資産税が発生するだけで、何のメリットもありません。
また、既に相続税を収めていて、申告期限の翌日以降3年以内であれば、「取得費加算の特例」によって、不動産の売却益にかかる譲渡所得税の節税が期待できます。不動産の売却益は「売却代金-取得費-譲渡費用」で求められますが、特例によって取得費に既に支払った相続税の一部を計上できることで、売却益が小さくなり、節税につながるのです。

相続不動産は以下の流れで売却します。

  1. 相続登記をする
  2. 不動産業者に売却を依頼する
  3.  購入者が決定すれば売買契約を成立させる
  4. 土地の所有権移転登記をする
  5. 譲渡所得税を支払う

2.有効活用する

何らかの形で有効活用するのも一つの方法です。土地の有効活用法の例としては、以下のようなことが挙げられます。

  • アパートやマンション、オフィス、店舗などを建設し賃貸事業を営む
  • 月極駐車場やコインパーキングにする
  • 太陽光発電

3.空き地のまま放置しないこと

土地をそのまま放置すると、収益を生まないどころか、通常よりも高い税金がかかります。さらに景観を損ねますし、犯罪の温床にもなりかねません。ご自身が損をしたり、近隣の住民に迷惑をかけたりしないためにも、相続した土地を空き地のまま放置しないようにしましょう。

また、相続した土地を活用するつもりもないし、売却もできない場合は、令和5年4月27日から実施された「相続土地国庫帰属制度」を利用して国に引き取ってもらう方法もあります。

まとめ

今回は、土地を含めた遺産の相続手順、相続登記や相続した後の処分などについて解説しました。

土地の相続は、評価額の算出や分割方法など、複雑なことも多く、相続人同士で争いが起きやすい問題もあります。また、評価額の高い土地であれば、その分相続税も高くなるため、節税に役立つ特例などをうまく活用するとよいでしょう。相続税の申告、納付には期限もあるので、不明点などがある場合は早めに信頼できる専門家に相談しましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「土地を相続したけれど売却するべきか迷っている」「相続した土地の評価額を知りたい」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一