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2023.05.02

不動産を相続しないとどうなる?手続きをしないまま放置した場合のリスクとは

不動産を相続しないとどうなる?手続きをしないまま放置した場合のリスクとは

親が亡くなり、相続手続きをしなければならないとわかっているものの、「毎日忙しくて時間がない」「どうすればよいかわからない」などといった理由から、なかなか始められないという方もいらっしゃるでしょう。
相続手続きは不慣れな方にとっては手間がかかるものですが、遺産の中に不動産が含まれていた場合は、さらに大きな負担を感じることでしょう。

しかし、だからといっていつまでも放置してはいけません。2024年からは法改正により、相続手続きをせずに放置しているとペナルティを科せられるので注意が必要です。

今回は、不動産の相続手続きをしない場合に考えられる5つのリスク、不動産の相続手続きの流れ、専門家に依頼するメリットなどについて解説します。

1.不動産相続をしないとどうなる?5つのリスク

遺産に含まれる不動産の相続手続きをしない場合のリスクは以下の5つです。

  • 2024年以降はペナルティを受ける
  • 時間が経つほど複雑化する
  • 子どもや孫に迷惑をかける
  • 空き家になり、他人に迷惑をかける
  • 特定空き家に指定される

それぞれについて詳しく説明します。

(1)2024年からペナルティがある

2024年4月1日より改正民法等が施行され、相続登記が義務化されます。そのため、これまでのようにいつまでも放置しておくわけにはいきません。相続登記の義務化について詳しく説明します。

①2024年4月1日から相続登記の申請が義務化する

2024年4月1日以降は、不動産の相続登記に期限が設けられます。不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、さらに、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。つまり、遺言によって遺贈を受けたり、遺産分割協議の成立によって不動産の取得が決まったりした日から3年以内に、必ず相続登記の申請をしなければならないのです。

②義務に違反した場合のペナルティとは

自分が不動産の所有権を取得したことを知ってから3年以内に、正当な理由なく相続登記を行わなければ、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
この場合の「正当な理由」とは、3年以内に登記申請手続きができなくても仕方がないと客観的に認められる理由のことです。例えば、遺言の有効性や遺産の範囲を巡る裁判が長期化している、申請義務のある本人が重病であるなどの事情がある場合などが挙げられます。
「仕事が忙しくて手続きをする時間がなかった」「方法がわからなかった」などの事情は、「正当な理由」とは認められないので注意しましょう。

③過去の相続にも適用される

相続登記の義務化は、過去に発生した相続についても適用されます。つまり、相続の発生時期にかかわらず、相続した不動産については全て登記をしなければなりません。
過去の相続については、下記のいずれかのうち遅い方の日から3年以内に登記手続きを行う必要があります。

  1. 義務化が始まる2024年4月1日
  2.  自己のために相続が開始したこと、及び不動産の所有権を取得したことを知った日

(2)時間が経つほど余計に複雑になる

不動産の相続手続きはできる限り早急に行うことが大切です。その理由について説明します。

①さらに相続が起こる可能性がある

時間が経てば新たな相続が発生し、相続関係が複雑化する可能性があります。例えば、親が亡くなった直後に登記しておけば、相続人は自分と兄弟だけだった場合でも、登記をしないまま年数が経過して兄弟が亡くなれば、代襲相続によって相続人が増える可能性があります。兄弟の子どもの数が1人だけなら特に問題ないかもしれませんが、複数人いる場合は人数が増える分、相続関係が複雑になるでしょう。登記手続きに必要な書類も増えるため、書類を揃えるのに手間がかかる可能性もあります。

②相続人が認知症になるなどする可能性も

相続人に高齢の方が含まれる場合、認知症になる可能性があります。認知症になり、判断能力がないとみなされた場合、成年後見制度を利用しなければならず、相続登記における負担が増すでしょう。

(3)子どもや孫に迷惑をかける

自分たちの代で相続登記をしておかなければ、子どもや孫など下の世代に迷惑がかかる可能性があります。相続人が増える分、相続関係は複雑化しますし、子どもたちは2世代以上分の登記をする必要があります。相続登記において、歴代の相続人は全て記録する必要があるからです。祖父母の不動産をひ孫の代まで登記していなければ、親世代分の登記、祖父母の孫世代の登記、さらにひ孫世代の登記も行わねばなりません。子どもや孫に余計な負担をかけてしまうことになるでしょう。

(4)空き家になることで他人に迷惑をかける

相続登記をしないと売却も所有権移転もできません。誰も住まないまま空き家状態で放置した場合、家屋の老朽化が進んで倒壊したり、屋根材や壁材が飛散したりする可能性があります。そのようなトラブルにより周辺の住民に損害を与えてしまうと、所有者が損害賠償責任を負うことになります。このようなリスクを回避するためには、早めに相続登記をして、売却などの方法で処分することが望ましいでしょう。

(5)特定空き家に指定される

不動産を相続せず、空き家のまま放置していると「特定空き家」に指定される可能性があります。「特定空き家」に指定されると、固定資産税が増額されるなど、所有者は大きなデメリットを被ることになります。

①特定空き家とは

「特定空き家」については、2015年5月26日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」の第2条2項で以下のように定義されています。

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2.  著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3.  適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4.  その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

上記のいずれかの状態にあてはまれば、自治体から「特定空き家」として指定を受けます。

②「勧告」を受けると固定資産税額が増額する

特定空き家に指定されると、自治体から管理や修繕を行うよう助言や指導を受けます。それに従わない場合に受けるのが「勧告」です。勧告を受けると固定資産税や都市計画税が最大で6倍にまで増額される可能性があります。「住宅用地特例」という、人が居住する家屋の敷地に適用される軽減措置の適用を受けられなくなり、ただ所有しているだけで高額な税金を納めなければならなくなる可能性もあるのです。

また、自治体からの「勧告」に従わなければ、次は「命令」を受けることになります。命令にも応じないと50万円以下の過料を科せられる可能性があります。
特定空き家の指定は、自治体の指導に従って修繕や管理を行えば解除されるので、ペナルティを避けるためには、助言や指導を受けた段階で対処することが大切です。

2.不動産相続手続きの流れ

さまざまなデメリットを被らないためにも、不動産の相続手続きは、相続が開始した後、できる限り迅速に行うことが大切です。ここでは、実際に不動産相続の手続きを行う際の流れについて説明します。

(1)誰が相続するのか決める

まずは遺産に含まれる不動産を誰が相続するのか決めなければなりません。
相続人の決め方は、遺言書が残されているなら、その内容に従うのが原則です。遺言書で指定された方が相続人となります。

一方、遺言書が残されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行って誰が不動産を相続するのかを決定します。遺産分割協議を始める前には、調査をしっかり行うことが大切です。戸籍謄本を取得して相続人調査を行い、相続人に漏れがないようにし、併せて不動産以外の財産も調査して、相続財産を確認します。
相続人調査、財産調査の両方が完了したら、相続人全員で誰が不動産の相続人になるかを協議しましょう。

(2)不動産の相続方法を決める

不動産は現金や預金のように簡単に分割できるものではありません。そのため、どのように相続すればよいかわからず、なかなか協議を進められないというケースも多いようです。
不動産の相続方法には、主に以下の4つの方法があり、それぞれメリットやデメリット、適する場面が異なります。

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概要 メリット デメリット 適する場面
現物分割 そのまま分割して相続する方法 ・分け方がシンプルでわかりやすい
・手続きが簡単
・建物には適用できない
・土地の場合でもあまりに小さく、それ以上分割できない場合は使えない
・分割することで土地の価値が落ちることがある
・不動産が土地のみの場合
代償分割 特定の相続人が当該不動産を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法 ・当該不動産を資産として残せる
・比較的シンプルでわかりやすい
・代償金の額で争いが生じることがある
・代償金は現金で用意せねばならず、ある程度の資力がなければ採用できない
・当該不動産に住みたい相続人がいる場合
・不動産よりも現金が欲しいという相続人がいる場合
換価分割 不動産を売却 換価したお金を相続人で分割する方法 ・均等に分割できる ・思った金額で売却できない可能性もある
・譲渡所得税を支払わねばならないケースもある
・相続人全員が当該不動産の相続を望んでいない場合
共有名義 当該不動産を処分せず、相続人全員で所有する方法 ・相続人間の不公平感がない ・時間の経過とともに共有名義人が増え、権利関係が複雑化する
・売却などの際に全員の同意が必要になり、処分しにくい
・相続人同士の協議がまとまらず、一時的な解決策が必要な場合

(3)必要書類を準備

相続登記の申請に必要な書類は以下のとおりです。

  •  相続登記申請書
  •  被相続人の戸籍謄本または除籍謄本
  •  相続人全員の戸籍謄本
  •  相続人全員の住民票
  •  当該不動産の固定資産税評価証明書
  •  遺言書または遺産分割協議書
  •  相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議による場合)

相続登記申請書の書式は、法務局公式サイト内の以下のページからダウンロードできます。
また、申請書には登録免許税分の収入印紙を貼付して提出しましょう。登録免許税の金額は、不動産の固定資産税評価額×0.4%です。

参考URL:不動産登記の申請書様式について(法務局公式サイト)

(4)法務局に申請する

必要書類が準備できたら、当該不動産の所在地を管轄する法務局へ提出して申請します。管轄がどこになるかは、法務局公式サイト内の以下のページで確認できます。

参考URL:管轄のご案内(法務局公式サイト)

3.不動産相続は専門家に相談するとスムーズに進む

不動産の相続は複雑な要素が多く、専門知識を持たない一般の方にとってはかなりの負担となるでしょう。相続財産に不動産が含まれる場合は、以下のような理由から、専門家に相談することをおすすめします。

(1)遺産分割協議がスムーズに進む

遺産に含まれる不動産を誰が相続するかについて、相続人同士ではなかなか話がまとまらないことも多いです。しかし、誰がどのような方法で相続するのか決めないと、手続きを進めることができません。当事者同士での解決が難しいと感じたら、早めに専門家に相談しましょう。専門家のアドバイスなら、他の相続人も聞き入れやすく、遺産分割協議がスムーズに進む可能性も高まるはずです。

(2)書類の準備から法務局への提出まで任せられる

「相続登記の手続きを行いたいけれど、忙しくて時間がとれない」という場合は、専門家に任せるとよいでしょう。相続登記の申請は自分で行うこともできますが、申請書の記入や登録免許税の計算など、不慣れな方にとっては複雑で手間がかかります。
司法書士に依頼すれば、申請書をはじめとした書類の作成、準備はもちろん、戸籍謄本などの必要書類の取り寄せ、法務局への提出まで全て任せられます。ほとんど手間なく、相続登記の手続きを完了させられるでしょう。

まとめ

今回は、不動産の相続手続きをしない場合に考えられる5つのリスク、不動産の相続手続きの流れ、専門家に依頼するメリットなどについて解説しました。

不動産の相続手続きは、相続発生後、可能な限り早い段階で行うことをおすすめします。時間が経つほど新たな相続が発生して相続関係が複雑になる可能性があることに加え、2024年4月1日からは相続登記が義務化され、期限内に行わなければペナルティまで科せられるからです。自分で進めるのが難しいと感じた場合は専門家の力を借りながら進めるとよいでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「不動産を相続したけれど売却すべきなのか判断できない」「相続した不動産の評価額を知りたい」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一