06-6585-0560
受付時間9:00〜21:00(年中無休)
ホーム  >  コラム  >    >  相続不動産の売却時期・相続税を考慮したベストな売却のタイミングは?
2023.06.19

相続不動産の売却時期・相続税を考慮したベストな売却のタイミングは?

相続不動産の売却時期・相続税を考慮したベストな売却のタイミングは?

相続した不動産を売りたいと考えているものの、いつ売却すればよいかわからず、迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
相続した不動産の売却にベストな時期は、以下の要素によって異なります。

  • 相続税が発生するか
  • 相続不動産の売却金額が相続税の課税評価額を上回るか、下回るか
  • 空き家になるか

ご自身がどのケースに該当するかを確認した上で、ベストな時期を選びましょう。

今回は、相続税を考慮した相続不動産のベストな売却時期について解説します。

相続不動産のベストな売却時期は相続税発生の有無によって異なる

相続不動産の売却時期を考える際に基準となるのが、「相続税を支払う必要があるのか」ということです。相続税の基礎控除額を求め、課税対象となる相続財産の総額と比べてみましょう。相続税の基礎控除額は以下の計算式で算出できます。

相続税の基礎控除額=3,000万+(600万円×法定相続人の数)

また、課税対象となる相続財産の総額は以下の計算式で求めます。

課税対象となる相続財産の総額=各遺産の評価額の合計-(債務+葬儀代)+生前贈与分

遺産の評価額の求め方は財産の種類によって異なり、国税庁の定める方法に従って評価します。不動産の場合、評価額として用いるのは時価ではありません。算出が難しいケースも多いので、専門家に相談することをおすすめします。

参考URL:財産評価(国税庁公式サイト)

相続税が発生して相続不動産の売却金額が評価額より安い場合は10カ月以内

相続税を支払う必要があり、「不動産業者に相続不動産の査定をしてもらったところ、査定額が相続税評価額よりも安かった」という場合は、相続発生から10カ月以内に売却するのがよいでしょう。
不動産を売却すれば、相続財産の総額の計算は実際の売却金額を用いて行うため、相続税額を減額できるからです。

例えば、評価額5,000万円の不動産のみが遺産として残された場合を考えてみましょう。この不動産の売却金額が4,000万円だったとします。生前贈与はなく、債務や葬儀代の合計が500万円だったとすると、課税対象となる相続財産の総額は以下のようになります。

【売却しなかった場合】
課税対象となる相続税の総額=5,000万円-500万円=4,500万円

【売却した場合】
課税対象となる相続税の総額=4,000万円-500万円=3,500万円

この場合、後者では相続税を支払う必要さえありません。評価額と実際の売却金額に差があるほど、大きな節税効果が期待できるのです。

ただし、親族に売却するなど、売り急ぎだと判断されると、相続税申告時に認められない可能性があるので注意が必要です。

相続税が発生して相続不動産の売却金額が評価額より高いなら3年10カ月以内

相続した不動産の売却額が相続税評価額よりも高い場合は、相続発生から3年10カ月以内に売却するとよいでしょう。「相続税の取得費加算の特例」により、売却時にかかる譲渡所得税を軽減できるからです。

「相続税の取得費加算の特例」とは、相続によって取得した不動産を、相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以降3年以内に譲渡すれば、相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。この特例を活用すれば、譲渡所得金額が低くなり、その分譲渡所得税を軽減できます。

譲渡所得金額は以下の計算式で求めます。

譲渡所得金額=該当不動産の売却によって得た金額-(該当不動産の取得費+相続税の取得費加算分+該当不動産の譲渡にかかった費用)

さらに、「相続税の取得費加算分」は以下の計算式で求めます。

相続税の取得費加算分=売却する人の納付する相続税額×該当不動産の相続税の課税価格÷売却する人の債務控除前の相続税の課税価格

なお、この特例を利用したい場合は、確定申告時に所定の書類を提出する必要があります。

相続税が発生しないなら基本的にいつ売却してもよい

相続税を支払う必要がない場合、売却に適した時期は特にありません。
売却するのがよいのか、何らかの方法で活用するのがよいのか、じっくり考えるとよいでしょう。

相続不動産が空き家になるなら令和5年12月31日までに

相続税不動産が空き家になる場合、早めに売却することをおすすめします。令和5年末までに売却すれば、お得になる特例があるからです。

1.空き家譲渡所得の特例とは

空き家となった相続不動産を、耐震基準を満たした、または取り壊した状態にして譲渡すれば、売却の際にかかる譲渡所得金額から3,000万円控除されます。

また、特例の対象となるには、他に以下の要件を満たすことも必要です。

  • 被相続人が亡くなる直前まで、一人で居住していた家屋であること。ただし、被相続人が要介護認定を受けて介護施設に入居するなどしていた場合も、一定の要件を満たせば対象となる。
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
  • 相続開始以降、譲渡時まで事業用、貸し付け用、居住用に供されなかったこと。
  • 譲渡価額が1億円以下であること。
  • 相続発生から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡していること
  • 平成28年4月1日から令和5年12月31日までの譲渡であること

2.相続税の取得費加算の特例との併用はできない

空き家譲渡所得の特例と、先に紹介した相続税の取得費加算の特例の併用はできないので、どちらかを選択する必要があります。どちらを選択するのが得なのかわからない場合は、専門家に相談するとよいでしょう。

相続不動産が空き家になる場合に放置するリスク

相続税を支払う必要がなく、空き家譲渡所得の特例も適用されないなら、焦って売却する必要はありません。しかし、相続した不動産を空き家のままに放置することはリスクを伴います。具体的なリスクについて説明します。

1.特定空き家とは

相続不動産を長らく放置し、自治体から指導を受けているにもかかわらず、そのままにしておくと、「特定空き家」に指定され、さまざまな不利益を被る可能性があります。特定空き家とは、2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」の中で定められた、以下の基準に該当する建物のことです。

  • そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態、または、著しく衛生上有害となるおそれのある状態である
  • 適切な管理が行われていないことで景観を著しく損なっている状態にある
  • 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である

2.特定空き家に指定されると固定資産税が6倍になる

住宅など居住用の建物の敷地として活用されている土地の固定資産税および都市計画税は、「住宅用地の課税標準の特例」によって軽減されます。その軽減率は大きく、200平方メートル以下の小規模住宅用地で、固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1です。また、200平方メートルを超える一般住宅用地でも、固定資産税は3分の1、都市計画税は3分の2とされます。

しかし、空き家のまま放置し、自治体からの改善の勧告に従わず「特定空き家」に指定された場合はこの軽減措置を受けられません。その結果、固定資産税が最大で6倍になる可能性があります。
また、空き家のまま放置して自治体からの改善命令にも応じずにいると、最大50万円の過料を科せられる可能性もあります。こうした不利益を被らないためにも、相続不動産が空き家になる場合は、可能な限り速やかに売却するのが望ましいといえます。

相続発生前に不動産を売却した方が得なことも

被相続人が自宅に住まないなら、生前に売却する方が得になるケースもあります。
相続発生前の売却がお得になるマイホーム特別控除という制度について説明します。

1.マイホーム特別控除が適用される可能性

マイホーム特別控除とは、自分の住んでいる家屋を売却するか、または住んでいた家屋を、住まなくなってから3年以内に売却すれば、最高3,000万円まで譲渡所得から控除できるという特例です。特例の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 家屋を取り壊した場合、解体から1年以内に土地の譲渡契約を締結しており、かつ、住まなくなった日から3年後にあたる日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 家屋を取り壊した場合、譲渡するまでその敷地を賃貸していないこと
  • 売却した年の前年、前々年にマイホーム特別控除、またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
  • 売却した年の前年、前々年にマイホームの買い替えやマイホームの交換の特例を受けていないこと
  • 売却した不動産について他の特例の適用を受けていないこと
  • 災害によって家屋が滅失した場合、住まなくなった日から3年後にあたる日が属する年の12月31日までにその敷地を売却すること
  • 売り主と買い手が親子関係や夫婦関係にないこと

また、以下のような場合は、この特例の適用は受けられません。

  • 特例の適用を受けるためだけに入居した場合
  • 一時的に居住していた家屋である場合
  • 別荘など趣味や娯楽、保養のための家屋である場合

2.相続発生前に不動産を売却するその他のメリット

相続発生前に不動産を売却すれば、遺産分割でトラブルが起きる可能性を低減できるというメリットもあります。不動産は分割が難しいため、どのように相続するかがなかなか決まらず、相続人同士でのトラブルに発展しやすいものです。先に売却し、現金にしておけば、分割しやすくなり、遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高くなります。

まとめ

今回は、相続税を考慮した相続不動産のベストな売却時期について解説しました。

相続不動産を売却するのにベストな時期は、相続税が発生するか、売却額と相続税の課税評価額ではどちらが高いかによって異なります。それぞれの額を確認した上で検討するとよいでしょう。

不動産の課税評価額の算出は難しい上に適用できる特例も多いため、どの方法を選択するべきか判断が難しいケースも多いです。少しでも不安や迷いがある場合は、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「相続した不動産の売却に適した時期を知りたい」「不動産を相続したけれど売却するか迷っている」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一