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2024.05.30

数次相続が発生した場合の不動産登記の手続き・中間省略登記ができる場合とは?

数次相続が発生した場合の不動産登記の手続き・中間省略登記ができる場合とは?

数次相続とは、まだ相続手続きが完了しないうちに、続いて相続が発生してしまう事態をいいます。通常の相続とは異なるため「不動産登記はどうすればよいのだろうか?」「手間がかかるのでは?」などと不安に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

不動産の相続登記は、発生した相続ごとに行うのが原則です。しかし、数次相続の場合は「中間省略登記」といって、先に発生した相続の登記を省略できるケースがあります。

今回は、数次相続の概念から、不動産登記の方法、中間省略登記ができる場合と具体例、数次相続の発生から不動産登記までの流れとポイント、登記に必要な書類と申請書の書き方、注意点などについて解説します。

数次相続とは?

まずは数次相続の定義について解説します。また、よく混同される代襲相続との違いについても知っておきましょう。

1.相続手続きが未了のうちに次の相続が発生すること

数次相続とは、先に発生した相続の手続きがまだ完了しないうちに、続けて次の相続が発生してしまうことです。

例えば、父親が亡くなり、その相続手続きが終わらないうちに、母親も亡くなってしまい、次の相続が発生した状態が該当します。このとき、先に発生した相続を「一次相続」、後で発生した相続を「二次相続」といいます。

2.代襲相続との違い

代襲相続と数次相続とでは、相続人が亡くなったタイミングが異なります。数次相続が、最初の相続発生後であるのに対し、代襲相続では、相続発生前に亡くなっているのです。

例えば、祖父が亡くなったケースであれば、次のようになります。

数次相続 代襲相続
祖父が死亡(一次相続発生)

相続手続き完了前に、祖父の相続人である親が死亡(二次相続発生)

孫にあたる人物が、一次相続で父が相続するはずだった祖父の遺産を相続

祖父の相続人となるはずの親が死亡

親の相続手続き完了後に、祖父が死亡

孫にあたる人物が祖父の相続人になる

数次相続が発生した場合の不動産登記

数次相続が発生すると、一次相続、二次相続それぞれについて登記手続きをするのが原則です。しかし、例外的に中間省略が認められて、一度の手続きで済むケースもあります。

1.相続ごとに登記手続きをするのが原則

登記手続きはどんな場合でも基本的に省略できません。事実ごとに手続きをするのが登記の原則だからです。1件の登記申請書に記載できる登記の原因は一つだけで、異なる場合は別に手続きをし、権利がどのように移動したかを明確にしておく必要があります。

従って、数次相続が発生した場合は、全ての相続について登記手続きを行わなければなりません。

2.例外的に中間省略ができる場合もある

登記手続きは、原則として省略できませんが、相続登記においては例外的に中間省略ができるケースがあります。それは一次相続から直近の相続に至るまでの相続人が一人しかいない場合です。

通常の権利移転登記であれば、登記をしないと、その人が権利を主張できなくなるため、省略する訳にはいきません。しかし、相続の場合、戸籍を調べれば、容易に中間者を特定できるため、必ずしも行う必要はないと考えられるのです。

数次相続の中間省略登記ができる場合の具体例

中間省略登記が可能なのは、具体的にはどのような場合なのか、例を挙げて解説します。

1.中間省略登記ができる場合

数次相続発生時に中間省略登記ができるのは、中間にあたる一次相続の相続人が一人しかいない場合です。具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 最初から一次相続の相続人が一人のみだった
  • 複数の相続人がいたが、相続放棄をするなどして一人になった

理解を深めるため、具体例で考えてみましょう。

【最初から中間の相続人が一人のみだった場合】
(一次相続)祖父が死亡、相続人は父
(二次相続)父が死亡、相続人は二人の子ども

例として、祖父、父、子ども二人、父と母は離婚、という家族について考えてみます。一次相続で祖父が、二次相続で父が亡くなってしまった場合、中間者は父のみであるため、途中の相続登記を省略できます。

【本来であれば、複数の相続人がいたが一人になった場合】
(一次相続)祖父が死亡、相続人は父と叔父、叔父が相続放棄
(二次相続)父が死亡、相続人は二人の子ども

一次相続の相続人は本来であれば父と叔父ですが、叔父が相続放棄をしたために相続人が父一人であった場合、中間者は一人しかいません。そのため、中間省略登記をすることができます。

また、相続放棄ではなく、遺産分割によって対象の土地を父が単独で相続した場合にも中間省略登記が可能です。

2.中間省略登記ができない場合

登記申請をする相続人が一人であっても、中間で発生した相続時に、他に相続人がいた場合は省略できません

例えば、父親が亡くなり相続が発生したとしましょう。その後、対象不動産の相続登記はもちろん、遺産分割協議もできないまま母親が亡くなってしまったとします。

この場合、一次相続における相続人は母親と子どもの二人であるため、本来であれば遺産分割協議をして対象不動産をどのように相続するか決めなければなりません。必ずしも子どもが対象不動産を全て相続していたとはいえないため、途中の登記を飛ばすことはできないのです。

そのため、以下のように2度の登記手続きが必要になります。

  1. 父親を被相続人とし、母親と子どもが法定相続分どおり2分の1ずつの持分として相続するという手続き
  2. 母親を被相続人とし、母親の持分を全て子どもが相続するという手続き

数次相続の発生から不動産登記までの流れとポイント

実際に数次相続が発生したら、登記手続きまで相続はどのように進めればよいのでしょうか。注意すべきポイントについても解説します。

1.数次相続が発生した場合の相続手続きの流れ

基本的に、通常の相続と同様に以下の流れで進めます。

  1. 相続人調査の上、相続人を確定する
  2. 相続財産の調査をする
  3. 相続人全員で遺産分割協議を行う
  4. 相続登記をする

2.遺産分割協議書は発生した相続分必要

不動産の相続登記手続きでは、一次相続、二次相続それぞれの分の遺産分割協議書が必要です。

一次相続の協議書には、二次相続の法定相続人についての情報を記載しておく必要があることに注意しましょう。

3.法定相続情報一覧図も2通必要

法定相続情報一覧図とは、戸籍謄本を元に、被相続人と相続人との関係を記載した家系図のようなものです。法務局の登記官による認証を受けることで、相続関係を証明できます。提出は必須ではありませんが、提出した書類の原本の返却を求められるので、他の相続手続きにも利用したい場合は作成するとよいでしょう。

ただし、一次相続、二次相続それぞれについて必要で、合計2通用意します。

具体的な手続き方法については、法務局公式サイト内の以下のページをご確認ください。

参考:法定相続情報証明制度の具体的な手続について(法務局公式サイト)

数次相続の不動産登記に必要な書類と申請書の書き方

数次相続が発生した場合の不動産登記手続きはどのように行えばよいのでしょうか。ここでは、申し立ての際に必要な書類と申請書の書き方について解説します。

1.不動産登記に必要な書類

数次相続が発生した場合、不動産登記の申請には以下の書類を提出します。

必要書類 取得場所
登記申請書 法務局、または公式サイトでダウンロード
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類 被相続人の本籍地の市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本 各相続人の本籍地の市区町村役場
相続人全員の住民票 各相続人の住所地の市区町村役場
対象不動産の登記簿謄本 法務局
固定資産税評価証明書 対象不動産の所在地を管轄する市区町村役場
遺産分割協議書 一次相続、二次相続それぞれの分が必要
相続関係説明図 自身で作成のうえ、法務局で承認を受ける

2.数次相続の場合の登記申請書の書き方

登記申請書には、必ず原因と相続人、被相続人についての情報を記載します。

  • 原因

「令和●年●月●日相続」と記載します。数次相続の場合、日にちは一次相続の発生日です。二次相続の発生日ではないため注意しましょう。

  • 相続人・被相続人

一次相続の情報を記載します。さらに最終的な相続人である申請人の情報の記載も必要です。

(例)
一次相続被相続人:倉本太郎
二次相続被相続人(一次相続の相続人):倉本次郎
申請人:倉本三郎

相続人(被相続人 倉本太郎)

大阪府大阪市●●区××町◯丁目◯番◯号

亡 倉本次郎

(申請人 上記相続人)

倉本三郎

3.中間省略登記をする場合の登記申請書の書き方

中間省略登記をする場合も、原因と相続人・被相続人についての記載をするのは同じです。しかし、記載内容が少々異なります。原因には一次相続、二次相続、それぞれの日にちを記載しますが、相続人・被相続人の欄には中間の相続人の情報は記載しません。

(例)
一次相続被相続人:倉本太郎(令和2年2月2日 死亡)
二次相続被相続人(一次相続の相続人):倉本次郎(令和3年1月11日 死亡)
申請人:倉本三郎

原因 令和2年2月2日 倉本次郎 相続

令和3年1月11日 相続

相続人(被相続人 倉本太郎)

大阪府大阪市△△区××町▲丁目▲番▲号

(申請人 上記相続人)

倉本三郎

まとめ

今回は、数次相続の概念から、不動産登記の方法、中間省略登記ができる場合と具体例、数次相続の発生から不動産登記までの流れとポイント、登記に必要な書類と申請書の書き方、注意点などについて解説しました。

登記手続きは、原因ごとに行わなければならないため、数次相続が発生した場合は、原則として発生した相続の回数分の手続きをしなければなりません。しかし、中間の相続人が一人しかいない場合は、例外的に中間省略登記ができます。手間は減らせますが、通常の申請方法と少々異なる点もあるため、注意が必要なこともあるでしょう。スムーズに手続きを完了させるためにも、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。数次相続発生時の不動産登記手続きに関するご相談にも応じていますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一