06-6585-0560
受付時間9:00〜21:00(年中無休)
ホーム  >  コラム  >    >  不動産相続の5つのリスクと対処法・トラブル回避のための基礎知識
2024.04.16

不動産相続の5つのリスクと対処法・トラブル回避のための基礎知識

不動産相続の5つのリスクと対処法・トラブル回避のための基礎知識

遺産に不動産が含まれていると、相続争いが起きるというイメージがあり、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

不動産相続には、懸念事項がいくつかありますが、あらかじめ対処法を知っておくことで、適切に対処できることも多いです。基本的な知識を身につけておくことで、スムーズな相続を実現できる可能性が高くなります。

今回は、不動産相続における5つのリスクとその対処法、分割や相続をめぐる相続人同士の争いの対処法、相続税の原資がなくて困った場合の対処法などについて解説します。

不動産相続における5つのリスク

不動産は、資産価値が高く、魅力的な財産です。しかし、以下のようなリスクもあるため、相続においては注意が必要です。

  • 相続登記をしないまま放置すると罰則の対象になる
  • 遺産分割できず共有すると次の世代に迷惑がかかる
  • 売却などの処分ができず、空き家になると、管理の負担がかかる
  • 分割をめぐって相続人同士でもめる
  • 相続税の原資がない

以下では、それぞれのリスクの具体的な内容と対処法について説明します。

相続登記をしない3つのリスクと対処法

日本では、不動産を取得したら必ず登記手続きを行わなければなりません。相続で不動産を取得した場合、相続登記と呼ばれる手続きが必要です。正しく相続登記をしなければ、以下の3つのリスクを抱えることになるでしょう。

1.リスク①罰則がある(2024年4月1日より)

2024年3月31日までは、相続登記には期限も罰則もありませんでした。しかし、2024年4月1日から改正民法が施行されるのに伴い、相続登記の義務化が始まります。以降に発生した相続については、3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科される可能性があるので注意しましょう。

また、改正民法の施行前に発生した相続であっても、2027年3月31日までに相続登記を行わなければ罰則の対象になります。

2.リスク②子どもたちに迷惑をかける可能性がある

相続登記をしないまま、ご自身が亡くなってしまうと、子どもたちに迷惑をかけることになります。前の代、すなわちご自身が行わねばならなかった登記手続きを子どもたちが行う必要があるからです。

さらに、時間が経過している分、権利関係が複雑になっていたり、必要書類を入手できなくなっていたりする可能性もあるでしょう。ご自身の子どもたちに余計な負担を強いることになるので注意しましょう。

3.リスク③売却などの処分ができなくなる

相続登記手続きをしなければ、ご自身の名義にならないため、不動産を売却したり担保に入れたりするなどの処分行為ができません。

相続登記をせずに長期間放置していたために、建物の資産価値が下がり、なかなか売却できなかったり、本来よりも安い値段でしか売却できなかったりする可能性もあるでしょう。

4.【対処法】相続登記は速やかに行う

不動産を相続したら、相続登記はできるだけ早期に行いましょう。相続登記手続きはそれほど複雑なものではありません。専門家に依頼しなくても、自分でできるケースも多いでしょう。失念しないうちに、早めに取りかかることをおすすめします。

なお、以下のような場合は、手続きが少々複雑であるため、専門家に相談することをおすすめします。

  • 相続人の数が多い
  • 音信不通だったり、疎遠だったりする相続人がいる
  • 未成年や認知症の相続人がいる
  • 前の代で相続登記がされていない
  • 不動産を売却したい、担保に入れたい

相続不動産を共有する3つのリスクと対処法

不動産は平等に分けることが難しいため、遺産分割協議がなかなかまとまらず、とりあえず共有してしまうというケースも多いです。

しかし、以下のようなリスクがあるため、不動産の共有はできる限り避けるべきです。

1.リスク①売却などの処分がしにくい

不動産の売却や抵当権設定、賃貸化などをしたい場合、共有者全員の同意が必要です。何らかの処分をしたくても、誰か一人が反対すればどうしようもありません。得られるはずの利益を得られないまま、時間だけが過ぎてしまいます。

ただし、自分の持ち分の売却であれば単独でも可能です。しかし、この場合、他の共有者はさらに大きなリスクを抱えることになります。相続した不動産を赤の他人と共有する可能性があり、残りの持ち分の買い取りや売却を迫られる可能性もあります。

2.リスク②誰も利用せずコストだけかかる

相続した不動産を誰も利用せずに放置していてもコストはかかります。毎年固定資産税が発生しますし、老朽化を防ぐための維持費も必要です。空き家にしないためにも、誰かが定期的に清掃などの管理もしなければなりません。コストだけでなく労力も必要になるでしょう。

3.リスク③将来の相続が複雑になる

共有者が亡くなれば、その方の持ち分はその相続人が相続します。

たとえば、4人で共有していた不動産があるとしましょう。共有者のそれぞれの持ち分は4分の1とします。そのうちの一人が亡くなり、その人の3人の子どもで相続する場合、共有者は全部で6人になります。

仮に他の共有者にも3人の子どもがいて、それぞれが相続すれば、最終的に12人で共有することになるのです。その中に相続登記を怠る人がいれば、持ち分がわからなくなり、非常に複雑になるでしょう。

4.【対処法】何らかの形で分割する

以上のようなリスクがあることから、不動産の共有は極力避けたいところです。以下に挙げる3つの分割方法のうち、いずれかを選択するとよいでしょう。

  • 現物分割:そのままの形で分割する方法で、不動産が複数ある場合や、他に同程度の価値のある財産がある場合など、ある程度平等な遺産分割が実現できそうな場合に有効
  • 代償分割:特定の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法で、ある程度の平等性はあるが、代償金を用意できなければ実現できない
  • 換価分割:不動産を売却し、その売却金を分割する方法で、最も平等な遺産分割を実現できる

どの方法を選択すべきかわからなかったり、進め方がわからなかったりする場合は、専門家に相談することをおすすめします。

相続不動産を空き家にする2つのリスクと対処法

誰も利用しない実家や別荘を相続すると、空き家にしてしまうケースも少なくありません。

しかし、空き家のまま放置すると大きなリスクを伴います。具体的なリスクについて説明します。

1.リスク①売却できずコストだけがかかる

誰も住んでいない家屋は老朽化の進行が速いです。建物が老朽化すると資産価値が落ち、売却も難しくなります。特に過疎化の進んだ地域では、買い手が見つかりにくいため、手放したくても手放せないケースもあるでしょう。売却までの期間は、固定資産税や維持費などのコストがかかるばかりです。

2.リスク②特定空き家に指定される

空き家を放置し、自治体に著しく危険な状態であるなどと判断されると、「特定空き家」に指定される可能性があります。特定空き家に指定された場合、住宅用地に対する固定資産税の特例が適用されなくなり、6倍の固定資産税を請求されます。

3.【対処法】専門業者や自治体に相談する

誰も住まない家は、何らかの形で活用することが望ましいでしょう。

空き家の活用法には以下の方法があります。

  • 売却する
  • 賃貸する
  • リフォームなどをして賃貸する
  • 更地にして駐車場にしたり貸地にしたりする
  • 空き家バンクに登録する

これらを実践するには不動産会社や自治体に相談しながら進めるとよいでしょう。自治体の中には専用の相談窓口を設置していたり、セミナーを開催したりするなど積極的に相談を受けているところもあります。空き家の所在地の自治体の活動を調べて、積極的に活用するとよいでしょう。

分割や相続をめぐる相続人同士の争いの対処法

不動産は平等な分割が難しいことから、いつまで経っても遺産分割協議がまとまらないことが多くあります。そのような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。調停手続きとは、当事者同士でもう一度話し合いをする手続きです。裁判官の他、調停委員と呼ばれる専門家が間に入り、中立な立場から法律に即した解決案を提案してくれます。平等な分割方法を提案してもらえる場合も多く、合意に至りやすいでしょう。

相続税の原資がなくて困った場合の対処法

相続税には基礎控除があり、全ての遺産の相続税評価額の合計が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求められる額以下であれば相続税は発生しません。

しかし、不動産は評価額が大きい場合が多く、基礎控除枠内に収まらないケースも多いでしょう。相続税の額も大きくなりやすく、納税資金を用意できないこともあります。そのような場合は以下の方法を検討するとよいでしょう。

  • 延納
  • 物納
  • ローンを利用する
  • リースバックを利用する

延納や物納を利用するには、国税庁の定める要件を満たさねばなりません。その内容については、国税庁の公式サイト内の以下のページに掲載されています。

参考URL:No.4211 相続税の延納(国税庁公式サイト)

No.4214 相続税の物納(国税庁公式サイト)

また、相続税の納付資金対策を目的としたローン商品を用意している金融機関もあるので、探してみるのもよいでしょう。

他にも、リースバックを利用するという方法があります。リースバックとは、不動産売却後に買主と賃貸契約を結び、同じ物件に住み続けるという方法です。毎月賃料を支払わなければなりませんが、まとまった額が手に入るので納税資金の調達はできるでしょう。

まとめ

今回は、不動産相続における5つのリスクとその対処法、分割や相続をめぐる相続人同士の争いの対処法、相続税の原資がなくて困った場合の対処法などについて解説しました。

不動産を相続すると、さまざまなリスクが生じる可能性があります。しかし、対処法を知っておくことで、大きなトラブルに発展することを回避できる可能性が高まります。

当事者だけで解決することが難しいと感じた場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「不動産を相続したけれど、処分するべきか判断できない」などという相談にも応じていますので、お気軽にお問合せください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一