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2023.12.22

特別養子縁組と普通養子縁組の違いとは?相​​続の際の注意点も解説

特別養子縁組と普通養子縁組の違いとは?相​​続の際の注意点も解説

養子縁組について調べていたところ、「特別養子縁組」と「普通養子縁組」という2つの制度があることを知ったという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この2つの制度の違いがよくわからないという方も多いでしょう。

相続のために養子縁組をする場合は、普通養子縁組を利用するのが一般的です。特別養子縁組は、子どもの福祉のための制度であり、普通養子縁組とは目的が異なります。

この記事では、特別養子縁組、普通養子縁組の概要、特別養子縁組と普通養子縁組の違いなどをわかりやすく紹介します。相続のために養子縁組をする際の注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

特別養子縁組とは

まずは、特別養子縁組について説明します。

1.子どもの福祉や利益の実現を目的とする

特別養子縁組は、子どもの福祉や利益の実現を目的とする制度です。親から虐待や育児放棄を受けている子どものために利用されることが多いです。家の存続や相続のために利用されるものではありません。

養親になれるのは、婚姻している成人で、一方は25歳以上、と限られる他、養子となる子どもも原則として15歳以下という年齢制限があります。さらに、6ヵ月の試験養育期間を経てから、家庭裁判所の審判で認められなければならず、利用できるケースは限られています。

また、特別養子縁組が一度認められると、原則として離縁はできません。養親からの虐待など、子どもの福祉を害する事情がある場合にのみ、養子本人や、父母、検察官から申し立てを行うことができます。

2.養親の相続のみできる

特別養子縁組をして養子になると、実子との親子関係は法律上なくなり、親となるのは養親のみです。

実子と親子ではなくなるため、実家で相続が発生しても相続人にはなれません。養家で発生した相続についてのみ相続権を有することになります。

3.特別養子縁組の条件

特別養子縁組を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。

養子となる子どもについて ・虐待や育児放棄、親の経済的な理由などにより実親による監護、養育が極めて難しい状況にあること

・原則として15歳以下であること

養親について ・養親となる夫婦両方と養子縁組をすること

・養親のどちらかの年齢が25歳以上、もう一方が20歳以上であること

実親について ・実親の同意があること

普通養子縁組とは

次に、普通養子縁組について説明します。

1.通常の養子縁組のこと

一般的にいわれる「養子縁組」が普通養子縁組です。「特別養子縁組」と区別するためにこのように呼ばれます。養子縁組をするには、市区町村役場へ届け出をするだけでよく、養子が成人していれば、裁判所による許可は必要ありません。

手続きも簡単で、当事者同士の合意さえあれば市区町村役場に届出を提出するだけです。

2.相続において有利な制度

一般的に相続対策として利用されるのが普通養子縁組です。特別養子縁組と比べると利用するための条件が厳しくなく、縁組をする回数にも制限がありません。

普通養子縁組をすると、養親との間に親子関係が生じますが、実親との親子関係も維持されます。実家と養家、両方の相続人になれるので、相続において有利な制度といえます。

3.普通養子縁組の条件

普通養子縁組を利用するには、下記の条件を満たす必要があります。

養子となる子どもについて ・おじやおばなど、養親よりも上の世代である尊属であったり、年齢が上であったりしないこと

・結婚している場合は配偶者の同意があること

・15歳未満である場合は、親権者など養子の法定代理人が合意すること

養親について ・20歳以上であること

・結婚している場合は配偶者の同意があること

実親について ・養子が15歳以上であれば同意は不要。

特別養子縁組と普通養子縁組の違いとは

特別養子縁組と普通養子縁組の違いを以下の表にまとめました。

特別養子縁組 普通養子縁組
目的 子どもの福祉や利益のため 家の存続や相続対策のため
養親の要件 ・婚姻している夫婦

・夫婦とも成人で一方が25歳以上

・単身者や独身者でもよい

・成人以上

養子の年齢要件 ・申し立て時に15歳未満であることが原則 ・制限なし
実父母の同意 必要 ・親権者の同意が必要、養子が15歳以上であれば不要
縁組の要件 父母による養育が困難で、子どもの監護が不適当 特になし
縁組の手続き 6ヵ月の試験養育期間後に家庭裁判所での審判が必要 戸籍法の定める届け出のみ。養子が未成年の場合は家庭裁判所での審判が必要
実父母の相続権の有無 なし あり
戸籍における記載 ・実子と同じ

・養子縁組の記載なし

・養子、養女

・養子縁組の記載あり

離縁 ・原則できない

・虐待など子どもの福祉を害する事情がある場合に、養子、父母、検察官からの申し立てにより可能。

当事者同士の協議により可能

特別養子縁組と普通養子縁組の手続方法

それぞれの制度を利用して、養子縁組をする際の流れを説明します。

1.特別養子縁組の手続きの流れ

特別養子縁組を希望する場合は、以下のような流れで手続きを進めます。

  1. 児童相談所や民間あっせん機関に相談する
  2. 民間あっせん機関が実施する研修を受ける
  3. 特別養子縁組の審査を申し込み、面談を受ける
  4. 育児研修を受ける
  5. 審査を通過したら、待機登録をする
  6. 委託があれば、家庭裁判所に特別養子縁組成立の申し立てを行う
  7. 審判確定後、特別養子縁組届を市区町村役場に提出する

上記のように、特別養子縁組によって養子を迎えるには、審査だけでなく研修を受ける必要があります。審査通過後は、いつでも子どもを迎えられるよう待機しておかねばならず、仕事などの調整をする必要もあるでしょう。また、委託があった後には家庭裁判所に養子縁組成立の審判も申し立てなくてはなりません。

家庭裁判所への申し立てについては裁判所公式サイト内の以下のページに詳しく記載されています。申立書の書式や記載例も掲載されているので、参考にするとよいでしょう。

無事養子を迎えた後には、児童相談所や民間あっせん機関に定期的に報告をする必要もあります。

参考URL:特別養子縁組成立(裁判所公式サイト)

2.普通養子縁組の流れ

養子となる方が成人の場合は、本籍地の市区町村役場に「養子縁組届」を提出するだけで手続きは完了します。その際、以下の書類の添付も必要です。

  • 届出人の本人確認書類
  • 養親と養子の戸籍謄本
  • (配偶者がいる場合)養子縁組に関する配偶者の同意書

なお、養子になる方が未成年の場合は、家庭裁判所に養子縁組許可を申し立てる必要があります。その場合、市区町村役場への届け出には、裁判所から発行された養子縁組許可審判書の謄本の添付も必要です。

家庭裁判所への養子縁組許可申し立てについては、裁判所公式サイトの以下のページをご覧ください。

参考URL:養子縁組許可(裁判所公式サイト)

特別養子縁組と里親制度の違い

里親制度は、さまざまな事情から実親の元で育つことができない子どもを預かって養育する制度です。特別養子縁組とよく似ていますが、里親制度では、里親と子どもの間に法的な親子関係が生じないという点において大きく異なります。さらに、家庭裁判所の審判手続きを経る必要もありません。この他にも以下のような違いがあります。

特別養子縁組 里親制度
子どもの年齢要件 原則として15歳未満 18歳未満
縁組後の実親との親子関係 消滅する 継続する
戸籍における記載 養親の戸籍に実子と同様に記載される 育ての親の戸籍には記載されない

相続のために養子縁組をする際の注意点

相続対策として養子縁組を考えている場合は、以下のような点に注意しましょう。

1.孫を養子にすると相続税が増額になる

被相続人の親や子どもなど一親等の血族、または配偶者以外の人が相続をすると、その人の納めるべき相続税額は2割加算されます。孫を養子にして相続させると、この決まりが適用されるため、相続税は通常よりも増額されてしまうのです。

ただし、代襲相続によって孫が相続人となった場合は、相続税加算の対象にはなりません。

2.代襲相続ができない場合がある

養子縁組が成立する以前に、養子に子どもがいた場合、養子が被相続人よりも先に亡くなっていても代襲相続は発生しません。養子の子どもと被相続人との間には血縁関係がない、とみなされるためです。

3.相続トラブルの原因になる可能性がある

養子縁組をすると、相続人が増えるため、相続人一人あたりの遺産の取得額は少なくなります。また、遺産分割が複雑化し、話がまとまらない可能性もあるでしょう。世話になったからと実子の配偶者を養子にしたところ、相続トラブルに発展したというケースもあります。特に実子が複数人いる場合は、養子縁組をする前によく話し合っておくことをおすすめします。

4.養子が法定相続人と認められないケースもある

税務調査で、明らかに節税目的のために養子縁組をしたと税務署に判断されてしまうと、養子を法定相続人として認めてもらえない可能性があります。国税庁の公式サイトにも、養子を法定相続人に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合は法定相続人に含められない旨の記載があります。

相続税対策のために養子縁組を希望している場合は、専門家などに相談しながら慎重に検討しましょう。

参考URL:No.4170 相続人の中に養子がいるとき(国税庁公式サイト)

まとめ

今回は、特別養子縁組と普通養子縁組の概要や、特別養子縁組と普通養子縁組の違い、各養子縁組の手続方法、特別養子縁組と里親制度の違い、相続のために養子縁組をする際の注意点などについて解説しました。

特別養子縁組と普通養子縁組はその目的が異なるため、さまざまな点において違います。特に相続において大きく異なるのは、実家の相続ができるかどうかだといえるでしょう。普通養子縁組では、実家、養家、両方で相続人になれるため、相続においては非常に有利です。

しかし、安易に利用すると相続税が増額したり、相続人同士のトラブルが起こったりする可能性があるなど、デメリットもあるため、専門家などに相談しながら、慎重に検討した方がよいでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。相続のために養子縁組を検討している方や、養子縁組をされた方の相続に関する相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一