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2023.10.20

築30年のアパートを相続する際の注意点と対処法を解説

築30年のアパートを相続する際の注意点と対処法を解説

「築30年のアパートを所有しているが、遺産としての価値はあるのだろうか?」
「親から築30年のアパートを相続したが、不動産経営をしたことがない。このまま所有すべきか売却すべきか迷っているけれど、どのように判断すればよいのだろうか?」
などと、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

築30年の古いアパートの相続には、いくつかの問題点があり、相続人にとって必ずしもプラスの財産になるとは限りません。誰が相続するかでもめる可能性もありますし、相続税の負担が大きい場合もあります。そのため、問題点を理解したうえで、どのようにするかを決めることが大切といえるでしょう。

今回は、築30年のアパートの相続に関する問題点、築30年のアパートの相続について親がとれる3つの選択肢、築30年のアパートの相続税の求め方、築30年のアパートを相続した場合の対処法などについて解説します。

築30年のアパートの相続に関する問題点

築30年の古いアパートを子どもに相続させると、どのような問題が起こる可能性があるのでしょうか。

1.財産を残したつもりが負の財産になる

築30年のアパートは修繕費や修理費がかかります。また、空室が発生すれば、新しい入居者が決まりにくいため、賃料も下げざるを得なくなるでしょう。建て替えや大規模修繕をしようとしても、資金がなければできません。
空室が増えて賃料が下がれば、赤字経営に陥ってしまう可能性もあります。子どものために財産を残したつもりが負の財産になってしまう可能性もあるでしょう。

2.賃貸経営をしたことのない子どもの負担になる

不動産経営は、決して簡単なものではありません。建物の修繕や改修も適宜行う必要があります。賃貸経営をした経験も知識もないまま、子どもが古いアパートを相続して経営した結果、あっという間に負債が膨らんでしまうケースも少なくありません。
アパートを手放したくても、古いために簡単には売却できず、経営の負担だけが残ることもあるでしょう。

3.相続でもめる可能性がある

相続人が複数いる場合、誰が相続するかでもめる可能性があります。特に古いアパートの場合は、収益を上げることが難しいため、誰も相続したがらないケースもあるでしょう。そのため、相続人同士で押し付けあうことになるかもしれません。

4.相続税が高いケースが多い

賃貸物件の相続税の計算には、どの程度の部屋を賃貸できているかという賃貸割合が影響します。貸している部屋の数が多いほど、有利になるのです。古いアパートは築浅物件よりも空室が埋まりにくい分、相続税が高くなるケースも多いでしょう。そのため、相続税が高くなる傾向にあります。

築30年のアパートの相続対策としての3つの選択肢

築30年の古いアパートの相続について、考えられる選択肢として以下の3つが挙げられます。

ここではそれぞれのメリット、デメリットを紹介します。

1.そのまま相続する

古いアパートをそのままの状態で相続するメリット、デメリットは以下のとおりです。

① そのまま相続する場合のメリット

  • 手間がかからない
  • 現金や預金を減らすことなく相続できる。
  • 現金で相続するより相続税が安くなる

そのまま相続すれば、親は特に何もする必要はありません。特に親が高齢である場合は負担がかからないことは大きなメリットといえるでしょう。
また、コストをかける必要ないため、現金や預金を減らすことなく相続できます。建て替えをするよりも多額の現金や預金を子どもに残せるでしょう。
さらに、一般的に現金で相続するよりも不動産を相続する方が相続税は安くなります。そのため、売却して現金化するよりも相続税は安く済むはずです。

② そのまま相続する場合のデメリット

  • 負の財産になる可能性がある
  • 賃貸経営をしたことがない子どもが相続をすれば負担になる
  • 相続人同士でもめやすい

古いアパートは入居者を集めにくい傾向にあるため、収益が下がる可能性が高いです。また、修繕費などの支出が大きくなりやすいため、将来的に経営状況が悪化するリスクがあります。賃貸経営の経験がない子どもが引き継いでも、経営が上手くいかず、負担になる可能性が高いでしょう。
また、不動産は平等な分割が難しいため、相続の際にもめる可能性もあります。

2.建て替えをして相続する

古いアパートを建て替えて相続するメリット、デメリットは以下のとおりです。

① 建て替えて相続するメリット

  • 相続税を大きく節税できる可能性がある
  • 相続した子どもが経営しやすい

建て替えをすれば借入金という新たなマイナスの財産が発生するため、遺産総額を減らせます。さらに、新築物件は、一般的に入居者を集めやすいため、相続税の計算時に加味される賃貸割合を上昇させることができ、相続税額を低くできるでしょう。
また、新しい物件の経営は古い物件に比べると、難易度が下がります。賃貸経営をしたことがない子どもでも、スムーズに経営できる可能性が高まるでしょう。

② 建て替えて相続するデメリット

  • 借入金の返済で子どもが苦労をする可能性がある
  • 相続人同士でもめる可能性がある

手元に資金がなければ、建て替えのために銀行から融資を受ける必要があります。融資を受けた場合は当然返済が必要となり、相続した子どもの負担になる可能性もあるでしょう。
また、分割が難しいために、誰が相続するかをめぐって、相続人同士で争いになる可能性もあります。

3.売却する

アパートを売却して現金化したうえで相続するメリット、デメリットは以下のとおりです。

① 売却して相続するメリット

  • 経営をする必要がなくなる
  • 現金を引き継げるので平等に分割できる

売却して現金にしてしまえば、当然アパートを経営する必要はありません。子どもが上手く経営できるか心配することもありませんし、親も経営の負担がなくなります。
さらに、現金であれば平等な分割が可能なため、相続人同士でもめる可能性も低くなるでしょう。

② 売却して相続するデメリット

  • 相続税が高くなる
  • アパート収益を得られない

売却をして現金化すると、不動産のまま相続するよりも相続税が高くなってしまうでしょう。不動産は相続税評価額が低く設定されていたり、適用できる特例があったりするために、相続税の節税対策として有利だからです。売却は、相続後にした方がよいかもしれません。
さらに、売却してしまえば当然賃料による収益は得られません。特に子どもが不動産投資を考えて、アパートの相続を期待している場合などは、子どもに相談のうえ、売却するかどうか決めた方がよいでしょう。

築30年のアパートの相続税の求め方

古いアパートの相続を考える際は、相続税が気になるという方も多いでしょう。ここでは、アパートの相続税額の求め方について解説します。

1.まずは基礎控除額を超えるか確認

相続税は、遺産総額が以下の計算式で求められる基礎控除額を上回らなければ納める必要はありません。まずは、相続税が発生するのか判断するために、基礎控除額を計算しましょう。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

2.アパートの相続税評価額の求め方

遺産総額は各財産の相続税評価額を合計して求めます。アパートの相続税評価額は次のように求めます。

土地の相続税評価額=土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
建物の相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

土地の評価額の求め方には路線価方式と倍率方式があり、不動産の所在地によって異なります。どちらに該当するのかということや、路線価、及び倍率は、以下の国税庁の公式サイトで調べられます。

それぞれの場合の評価額の算出式は以下のとおりです。

【路線価方式の場合】
路線価×面積

【倍率方式の場合】
固定資産税評価額×倍率

また、計算式中に出てくる各項目の値の求め方は以下のとおりです。

  • 借地権割合:以下の国税庁公式サイトで確認できる
  • 借家権割合:全国一律で30%
  • 賃貸割合:(相続発生時に賃貸されている各独立部分の床面積の合計)÷(アパート全体の各独立部分の床面積の合計)

参考URL:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

3.アパートの相続税額の求め方

全ての財産について相続税評価額がわかったら、それらを合計して遺産総額を求めましょう。さらに法定相続分どおりに分割したとして、各相続人の相続額を計算し、金額に応じた税率を掛けてそれぞれの相続税額を求めます。さらにそれを合計して相続税の総額を求めましょう。
相続税の税率は以下の国税庁の公式サイトで確認できます。

参考URL:相続税の税率(国税庁公式サイト)

築30年のアパートを相続した場合の対処法

親から築30年のアパートをそのまま相続したら、どうすればよいのでしょうか。相続人が取り得る対処法を紹介します。

1.アパートの状況を確認する

相続したアパートを処分するのか、経営を引き継ぐのか判断するためにも、まずはアパートの状況を確認しましょう。修繕が必要なのか、必要であればどれくらいの費用がかかるのか、費用をカバーできるだけの経営状態であるのかをよく検討します。
古いアパートの場合、特に耐震性や耐火性が十分でないケースも多く、その場合は大規模な工事が必要です。入居者の命にも関わることなので、よく確認しましょう。

2.専門家に取り扱いを相談する

十分な知識や経験がなければ、古いアパートを建て替えるべきか、そのままでも問題ないのか、的確な判断を下すのは難しいでしょう。建て替えるのであれば、多額の費用がかかりますし、専門家に相談してアドバイスを受けた上で判断することをおすすめします。

3.解体して転用する

アパートを解体するのも選択肢の一つです。新しいアパートを立て直すのもよいかもしれませんが、駐車場にしたり、倉庫にしたりするなど他の方法で活用してもよいでしょう。

4.売却する

アパートを上手く経営できそうになかったり、住まいが遠方であったりするなら、売却してしまうのもよいでしょう。
しかし、古いアパートは買い手が付きにくい傾向があります。売却を成功させるためにも、信頼できる不動産会社に相談しながら進めることが大切です。

まとめ

今回は、築30年のアパートの相続に関する問題点、築30年のアパートの相続について親がとれる3つの選択肢、築30年のアパートの相続税の求め方、築30年のアパートを相続した場合の対処法などについて解説しました。

築30年の古いアパートの相続は、相続人にとって負の財産になる可能性があります。また、相続人に賃貸経営の経験がなければ、大きな負担になる可能性もあるでしょう。
相続においてはアパートの現状や経営状況を確認し、適切に判断のうえ対処することが大切です。判断が難しい場合は、不動産会社に相談しながら進めましょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「所有している不動産の評価額を知りたい」「相続した不動産を売却すべきか迷っている」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一