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2024.10.11

再建築不可の4号建築物を相続した場合のリスクと対処法を解説

再建築不可の4号建築物を相続した場合のリスクと対処法を解説

親から相続した建物が、いわゆる4号建築物だったことがわかり、不安に思われている方もいらっしゃるでしょう。

これまで4号建築物は大規模修繕やリフォームをして活用することが可能でした。しかし、法改正により、2025年4月からは、建て替えやリフォームができなくなる可能性があります。相続する場合は、リスクを理解して対処法を考える必要があるでしょう。

今回は、4号建築物の概要、4号建築物と法改正、再建築不可の4号建築物を相続するリスク、相続放棄を考える際の注意点、相続した場合の対処方法などについて解説します。

4号建築物とは

相続について考える前に、まずは「4号建築物」とはどのようなものか確認しておきましょう。

1.建築基準法第6条1項一〜三号以外の建物のこと

4号建築物とは、建築基準法第6条1項で定められた一〜三号を除く建物のことで、以下のような特徴があります。

建物の種類 特徴
木造 ・2階以下

・延べ面積が500㎡以下

・高さ13m以下、かつ軒の高さが9m以下

木造以外 ・平屋建て

・延べ面積が200㎡以下

これらに加えて、劇場や学校、病院などの特殊建築物を除く建物が該当します。

2.特例によって一部の確認申請手続きを省略できる

4号建築物には、いわゆる4号特例の適用により以下のことが認められています。

  • 都市計画区域外の地域で、建築士が設計する建物であれば、新築時の確認申請は不要
  • 地域にかかわらず、大規模な修繕やリフォームの検査を省略できる

この特例があることで、新築の場合は設計から着工までスムーズに進められました。また、いわゆる再建築不可物件であってもリフォームをすることは可能でした。

2025年4月の法改正により4号建築物は廃止に

建築基準法は、2025年4月に改正が予定されています。この改正における大きな変更点の一つは、4号建築物の廃止です。4号建築物の廃止について説明します。

1.4号建築物が廃止されて新2号建築物と新3号建築物に

法改正により4号建築物は廃止となり、建物の種類によって以下のように分類されます。

建物の種類 新しい分類 検査・審査の有無
・木造2階建て

・木造平屋建てのうち、延べ面積が200㎡を超える建物

新2号建築物 ・全ての地域で、建築確認検査が必要。大規模修繕・リフォームの場合も検査が必要。

・審査省略制度の対象外。

木造平屋建てで延べ面積が200㎡以下の建物 新3号建築物 ・都市計画区域内に建築する場合は建築確認、検査が必要。区域外であれば不要。

・審査省略制度の対象。

つまり、法改正後は4号特例の適用範囲が縮小されることになります。

2.大規模な修繕やリフォームができなくなる場合も

4号建築物が廃止され、4号特例の適用範囲が縮小されることで、改正前に可能であった再建築不可物件の大規模な修繕やリフォームができなくなる可能性があります。2025年4月以降は、木造2階建ての建物なら、検査が必要になるため、許可を受けられずに、そのままの状態を維持せざるを得ない物件が増えるでしょう。

3.法改正の背景

2025年に建築基準法が改正するのは、建築物省エネ法の改正によって、住宅を新築する際に、省エネ基準への適合が義務付けられるためです。

これまでは省エネ基準への適合義務があったのは一定規模以上の建物に限られました。しかし、対象が全ての住宅に変わったことで、全ての建築物に対して審査が必要になり、4号建築物についても審査を省略できなくなったのです。

再建築不可の4号建築物を相続するリスク

遺産に4号建築物に該当する不動産が含まれる場合、相続すると以下のようなリスクが考えられます。

1.リフォームができず活用が難しい

法改正前であれば、4号特例の適用によって審査を受ける必要がなかったため、再建築不可物件であってもリフォームができました。そのため、老朽化が進んだ物件を相続したとしても、活用することができたでしょう。

しかし、改正によって審査が必要になり、リフォームや修繕が認められなければ、現状のまま維持するしかありません。誰も住まず、賃貸にも出せず、空き家状態で維持するしかないというケースも増えるでしょう。

接道義務を満たして申請するという対処法もありますが、高額な費用がかかる可能性があります。

2.売却が難しい

再建築不可の4号建築物は、建て替えやリフォームができないため、売却したくても購入希望者が見つからない可能性が高いです。不動産会社に依頼しようとしても、断られてしまうケースも多いでしょう。

3.空き家にはできない

活用も売却も難しいからといって、空き家のまま放置しておくわけにもいきません。近隣住民に迷惑をかける可能性があるからです。適切な管理や修繕をせず、地震や台風などの自然災害によって家屋が壊れた場合、隣家や周辺住民に損害を与える可能性があります。多額の賠償金を請求されるおそれもあるでしょう。

また、あまりにひどい状態になっても放置し、自治体から特定空き家に指定された場合、固定資産税が最大で6倍になったり、罰金を課せられたりする可能性もあります。

誰も住まずに活用もできなくても、適切に管理しなければならないのです。

4.更地にすると固定資産税が6倍に

安易に更地にしてしまうと、固定資産税の軽減措置の適用対象から外れ、税額が6倍に上がる可能性があります。

また、一度建物を壊してしまえば、その土地に再度建物を建設することはできません。二度と住めなくなり、固定資産税の負担だけが残るでしょう。

再建築不可の4号建築物の相続放棄を考える際の注意点

「相続してもリスクしかないなら、相続放棄をしたほうがよいのだろうか」と考える方もいらっしゃるでしょう。良い方法である可能性もありますが、安易に相続放棄を選択すると後悔するかもしれません。以下の注意点を考慮し、よく検討してから決めましょう。

1.特定の財産だけを相続放棄することはできない

相続放棄の対象となるのは、全ての遺産です。特定の財産の相続だけを放棄することはできず、再建築不可の4号建築物の相続権だけを手放すことはできません

プラスの財産とマイナスの財産とのバランス、相続後の負担など、遺産全体についてよく調査し、慎重に検討した上で判断しましょう。判断が難しい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

2.相続放棄の手続きには期限がある

相続放棄を希望する場合、自分が相続人であることを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。期限を過ぎると、基本的に受け付けてもらえないため注意しましょう。

3.裁判所に一度許可されると撤回はできない

相続放棄が裁判所に認められると、どのような事情があっても撤回はできません。後から多額の遺産が見つかったとしても相続できないため、遺産の調査を十分に行った上で慎重に判断する必要があります。

再建築不可の4号建築物を相続した場合の対処方法

相続放棄をしない場合やすでに相続してしまった場合は、どのようにすればよいでしょうか。再建築不可の4号建築物を相続した場合の対処法について紹介します。

1.誰かが住む

老朽化が進んでいない場合は、そのまま住み続けることも良い方法です。リフォームをしなくても住める状態であれば、住み続けることで良い状態を維持しやすいでしょう。

2.買い取りを検討する

不動産売買の仲介業者ではなく、買い取り業者であれば、物件を引き取ってくれる可能性があります。独自のノウハウにより、難しい不動産の売買や活用を得意とする買い取り業者も存在します。

売却よりは低価格で手放すことになるかもしれませんが、その後にかかる管理コストを考えればメリットが大きい場合も多いでしょう。

3.建て替えができる状況にする

接道義務を満たすことができれば、建て替えやリフォームが可能になります。売却や活用ができる見込みが生じ、大きな損は避けられるでしょう。接道義務を満たす方法として、以下のことが挙げられます。

  • セットバックをする
  • 隣地を買い取る
  • 隣地を借りて建築申請をする

再建築不可の4号建築物を相続する手順

相続する場合は基本的に以下の手順で進めることになるでしょう。

1.相続人と相続財産を調査する

まずは相続人と相続財産の把握から始めましょう。

相続人調査は、亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍類を収集して行います。

また、相続財産はプラスのものだけでなく、借金などマイナスの財産についてもしっかり確認しておきましょう。

2.相続するかどうか決める

遺産の内訳がわかったら、それぞれの評価額を確認し、遺産総額を算出します。その上で、相続するか、相続放棄をするか決めましょう。

3.相続人全員で遺産分割協議を行う

相続するのであれば、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの遺産を相続するのか決めます。協議は法定相続人全員で行わなければならず、一人でも欠けた状態で決まった内容は無効です。話がまとまったら遺産分割協議書を作成し、内容を記載します。

4.相続登記を行う

不動産については、法務局で相続登記の手続きが必要です。相続登記は義務であり、手続きをしなければ売却などの処分ができません。

また、遺産分割協議の成立から3年以内に行わなければペナルティも課されるため、速やかに行いましょう。

5.相続税の申告

相続税の申告と納税は、相続発生から10ヵ月以内に行わなければなりません。遅れると遅延損害金などが発生するため注意しましょう。

まとめ

今回は、4号建築物の概要、4号建築物と法改正、再建築不可の4号建築物を相続するリスク、相続放棄を考える際の注意点、相続した場合の対処方法などについて解説しました。

再建築不可の4号建築物の相続には、多くのリスクが伴います。相続する前であれば、相続放棄を検討したほうがよいケースもあるでしょう。相続する場合は、相続後はどのように対処するか考えておくことが大切です。判断が難しい場合は、専門家や専門業者に相談するとよいでしょう。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。再建築不可の4号建築物の相続に関する相談にも対応しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一