平屋の家を相続して売却を検討しているけれど、「平屋は売却が難しい」と聞いて不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
平屋はさまざまなデメリットから敬遠する方も多いかもしれませんが、平屋にもメリットはありますし、一定の層からはニーズもあります。ターゲットを絞って、上手に売却活動を行えば、売れる可能性は十分にあるでしょう。また、売却以外にも賃貸などの活用方法もあります。
今回は、平屋が売れにくい理由、平屋を売却する3つの方法とコツ、平屋を相続した場合の売却以外の対処法、売却した際にかかる税金、相続時にかかる税金などについて解説します。平屋を相続して、処分をするべきか活用するべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
平屋は売却しにくいといわれる理由
なぜ平屋は一般的に「売れにくい」といわれているのでしょうか。まずはその理由について説明します。
1.需要が限られる
1階建てである平屋は、居住スペースが限られます。一人暮らしや夫婦の二人暮らしなら問題ないかもしれませんが、ファミリー層からは個室の確保が難しいため敬遠されがちです。部屋数が少ない分、二世帯以上で住む場合にも生活しづらいタイプの物件といえます。
スペースの問題によって必然的に需要も限られてしまうのです。
2.プライバシーの確保が難しい
プライバシーを守りにくい点も平屋が敬遠されやすい理由の一つです。
周囲に2階建て以上の建物があれば、生活の様子が丸見えになる可能性がありますし、道に面していれば、通行人の目に触れるリスクもあります。カーテンで遮るなど、何らかの対策が必要です。
3.セキュリティ面での不安
平屋は1階しかないため、侵入されやすく、防犯性は高くありません。盗難などのリスクがあるため、防犯対策をしっかりする必要があるでしょう。
4.水害への不安
近年、日本では毎年のように豪雨や台風などの自然災害が発生しています。特に水害が想定される地域では、1階建ての平屋では、浸水が発生した際に避難できる上の階がないために、敬遠されがちです。
平屋を売却する3つの方法とコツ
平屋は2階建ての物件よりも売却しづらい傾向にありますが、一定の層からはニーズがあり、売却できる可能性もあります。現状のまま売却する場合、リフォームして売却する場合、解体して売却する場合という3つのパターンに分けて、売却方法とスムーズに売るためのコツを紹介します。
1.現状のまま売却する
リフォームなどを行うことなく、現状のまま売却する場合、費用をかけずに売却できます。現状のまま売却する場合は、以下のように進めるとよいでしょう。
①相場を把握する
不当に安い値段で売却しないためにも、まずは売却価格の相場を把握しましょう。以下の価格を調べることで、売却価格の相場をある程度把握できます。
- 路線価
- 固定資産税評価額
- 実勢価格
- 公示価格
しかし、これらを調べることは不動産取引になじみのない方にとって負担に感じられるかもしれません。調べる手間を省き、負担を軽減するためには、不動産業者に査定を依頼するとよいでしょう。
②ターゲットを定めて売却活動をする
平屋は全ての人が敬遠するわけではありません。ワンフロアで生活できることをメリットと感じる人もいらっしゃいます。また、築年数が古い物件であれば、昔ながらの日本家屋を好む人にとっては魅力的な物件に映るでしょう。
そのため、以下のような人にターゲットを定めて、売却活動をすることをおすすめします。
- 高齢者のいる世帯
- 小さな子どものいる世帯
- 古民家など古い家屋への居住を希望する人
③平屋のメリットをアピール
ターゲット層に対して以下のような平屋のメリットをしっかりアピールできると、より売却できる可能性が高まるでしょう。
- 階段がなく段差も少ないので高齢の方が暮らしやすい
- ワンフロアで生活できるため、家族が顔を合わせやすく、コミュニケーションがとりやすい
- 視界が開けた造りになっているので、子どもに目が届きやすい
- ワンフロアなので、家事などの際に行ったり来たりする必要がない
- 火事や地震など災害時に外へ逃げやすい
④売却価格にこだわりすぎない
「少しでも高く売却したい」と思うのは当然のことですが、価格にこだわりすぎると成約しづらくなります。相場よりもあまりに低い価格でない限り、ある程度柔軟に対応した方が、売却は成立しやすいでしょう。
2.リフォームして売却
費用はかかりますが、リフォームやリノベーションをしてきれいな状態にしておけば、買主に好印象を与え、積極的に購入を検討してもらいやすくなります。査定での評価額も上がるため、高値で売却しやすくなるでしょう。
ただし、築年数が古く、趣のある日本家屋の場合、リフォームやリノベーションは控えた方がよいかもしれません。平屋の購入を希望する人の中には、古い家屋をリフォームやリノベーションにより自分好みにしたいと考える方が多いからです。ご自身の独断で決めるのではなく、不動産会社に相談しながら慎重に検討した方がよいでしょう。
3.解体して売却
築年数が20年以上の古い木造住宅は、一般的にあまり価値がないといわれています。そのため、建物を解体して更地にした方が売却しやすくなるケースも多いでしょう。
買主は解体のコストをかけずに住宅を建築できるので、平屋がある状態よりも魅力的に映ります。
ただし、解体して売却する場合、解体費用がかかります。解体費用は「坪単価×建物の床面積」で求められます。床面積の広い平屋の場合は高額になる可能性もあるでしょう。解体費用の目安はあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
平屋を相続した場合の売却以外の対処法
「工夫してみたけれど買い手がつかない」「売却に思いのほか費用がかかることがわかったので、他の方法を検討したい」という場合、以下のような方法を検討するとよいでしょう。
1.不動産業者に買い取ってもらう
不動産業者に直接買い取ってもらえば、売却活動をする必要もなく、すぐに手放せますし、仲介手数料もかかりません。
ただし、買い取ってもらう場合の価格は、一般的な売却よりも低い価格になることが通常です。また、リフォームやリノベーションが必要な場合はその分の費用を差し引かれるので注意が必要です。
2.賃貸に出す
賃貸物件として収益化するのも一つの方法です。平屋は高齢者や小さな子どもがいる世帯からのニーズがあるため、借り手が付きやすいです。また、上の階がない分、傷みにくいので、維持費も抑えられます。賃貸に向くタイプの物件といえるでしょう。
相続した平屋を売却した際にかかる税金
相続した平屋を売却した場合、不動産売却に対する税金がかかります。税金の種類や、節税に有効な控除制度について説明します。
1.譲渡所得税がかかる
不動産を売却すると譲渡所得税がかかります。譲渡所得税とは、不動産などの資産を売却したことで生じた利益に対してかかる所得税と住民税のことです。不動産を売却した年の翌年に確定申告をして、納税しなければなりません。具体的な金額は以下の計算式で求められます。
譲渡所得税=譲渡所得(売却によって得た利益)-取得費(購入時の金額)-売却のためにかかった費用
2.空き家特例によって大幅な節税が可能
住んでいた親が亡くなって、空き家になる物件であれば、特例が適用され、譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。売却利益が3,000万円以下であれば、譲渡所得税の負担は実質0円で済むため、適用されると大幅な節税が可能になります。
ただし、適用されるのは、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの期間に売却し、さらに一定の要件を満たした場合に限られます。詳しく知りたい方は、国税庁公式サイト内の以下のページを参考にしてください。
参考URL:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁公式サイト)
3.生前の売却なら特別控除を適用できる
居住している方が生前のうちに平屋を売却する場合、マイホームを売ったときの特例によって、譲渡所得から最大で3,000万円の特別控除を受けられます。譲渡所得税の大幅な節税効果を期待できる特例ですが、適用されるには一定の要件を満たすことが求められます。詳しい要件などについては、国税庁公式サイト内の以下のページでご確認ください。
参考URL:No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁公式サイト)
平屋を相続した際にかかる相続税
平屋を相続した場合にかかる相続税について説明します。
1.相続税には基礎控除額がある
相続税には基礎控除額が設けられており、各遺産の評価額の総額が基礎控除額を超えない限り納付する必要はありません。相続税の基礎控除額は以下の計算式で求めます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
2.平屋の相続税評価額の調べ方
不動産の相続税評価額は以下のとおりです。
・土地:(路線価地域の場合)路線価×地積
(路線価地域以外の場合)固定資産税評価額×倍率
・建物:固定資産税評価額
土地の相続税評価額の計算式に出てくる「路線価」や「倍率」は国税庁公式サイト内の以下のページで調べられます。
また、「固定資産税評価額」は、自治体から毎年送付される納税通知書に記載されています。納税通知書が見つからない場合は、役所で固定資産課税台帳を閲覧するか、固定資産税評価証明書を取得して確認しましょう。
参考URL:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)
3.小規模宅地の特例によって大幅に減税される場合も
親が住んでいた平屋の土地は、「小規模宅地の特例」の適用によって、相続税評価額を80%減額できます。居住用宅地だけでなく、事業用の宅地にも適用でき、大きな節税効果を期待できるでしょう。
ただし、適用を受けられる宅地面積には限度があり、必ず利用できるわけではありません。詳しい要件については、国税庁公式サイト内の以下のページでご確認ください。
参考URL:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁公式サイト)
まとめ
今回は、平屋が売れにくい理由、平屋を売却する3つの方法とコツ、平屋を相続した場合の売却以外の対処法、売却した際にかかる税金、相続時にかかる税金などについて解説しました。
一般的に平屋の売却は難しいといわれていますが、高齢者層や小さな子どもがいる家庭などには人気があります。ターゲット層を絞って適切な販売戦略を立てることにより売却できる可能性が高まるので、不動産会社に相談しながら売却を検討してみましょう。
当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。「相続した平屋を売却するか迷っている」「売却する前にリフォームが必要なのか判断できない」などという相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社・株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一