06-6585-0560
受付時間9:00〜21:00(年中無休)
ホーム  >  コラム  >    >  実家の相続争いの原因は?典型的なケースと対処法を解説
2024.04.12

実家の相続争いの原因は?典型的なケースと対処法を解説

実家の相続争いの原因は?典型的なケースと対処法を解説

相続が発生すると、どんなに仲のよい兄弟姉妹でも争いに発展しやすいものです。

一般社団法人相続解決支援機構が2022年に発表した『相続トラブルに関する調査』によると、相続トラブルを経験したことがある人は全体の8割近くを占め、さらにそのうちの約8割のケースで遺産に不動産が含まれていました。その中には実家も含まれます。

親族間の争いやトラブルを避けるためにも、あらかじめ相続争いが起きる原因や対処法を知っておくとよいでしょう。

今回は、実家の相続争いが起きやすい原因、実家を巡る相続争いの典型的なケース、争いが起きた場合の対処法などについて解説します。

相続トラブルは正しい法律知識を用いて対処すれば、早期に解決できるケースも多くあります。記事を参考にしながら、無用なトラブルの発生を防いでください。

実家の相続争いが起きやすい原因

遺産に不動産が含まれると、相続人同士の争いが起きやすい傾向にあります。不動産が実家である場合はなおさらでしょう。その主な原因について説明します。

1.不動産は資産価値が高く、平等な分割が難しい

不動産は平等に分けることが難しい財産です。特に、資産価値が高い財産が実家しかない場合は、その取得をめぐって相続人同士で争いに発展しやすいでしょう。実家の相続を強く希望する相続人が複数存在する場合、いつまで経っても話がまとまらないことも多いです。

2.不動産は評価方法が難しい

特定の相続人が不動産を取得する場合、平等な遺産分割を実現するには、対象不動産の価値を確認しておかなければなりません。すなわち、不動産の評価額を知る必要があります。

しかし、不動産の評価方法はいくつかあり、どれを採用するかで評価額が変わります。不動産業者に依頼しても、業者によって価格が異なるため、不動産の評価方法をめぐって争いに発展するケースも少なくありません。

3.実家に対する思い入れがそれぞれ異なる

誰も住む予定がない実家の処分をめぐって争いになるケースも多いです。原因は実家に対する思い入れの強さの違いにあります。

特に相続人を決めないまま売却する場合は、相続人全員の合意が必要です。意見がまとまらないまま、維持するしかないというケースも少なくありません。

4.全員遠方に住んでいて誰も相続したがらない

相続人全員が遠方に住んでいるなどの事情から、実家の押し付け合いになるケースもあります。活用しない実家を相続しても、毎年固定資産税を支払う必要があります。また、定期的な清掃や修繕なども行わなければならず、負担が生じます。だからといって、相続放棄を選択することもできず、協議がまとまらないことも多いでしょう。

実家の相続争いが起きやすい典型的な6つのケース

実家の相続争いが起きやすい典型的なケースを6つ紹介します。

1.相続人同士が不仲

相続人同士が不仲であったり、疎遠な関係であったりする場合、対立する可能性が高いでしょう。感情的な問題から、お互いに譲歩せず、自分の意見ばかり主張して、話がまとまりません。

また、相続人の中に離婚した配偶者との子どもや認知された子ども、内縁の配偶者などがいる場合も、トラブルに発展しやすいので注意が必要です。

2.遺産が実家しかない

実家以外に特筆すべき遺産がない場合は、実家の相続をめぐって争いになる可能性が高いです。長男であることを理由に「自分に相続する権利がある」などと主張する人がいる場合や、親と一緒に住んでいた相続人がそのまま居住することを主張する場合は、特に争いに発展しやすいでしょう。

3.特定の相続人が親の面倒をみていた

特定の相続人だけが親の介護をしていたり、同居して面倒をみていたりした場合は、それを理由に、実家の取得を主張するケースがあります。親の生前、特別な貢献をした場合、「寄与分」として遺産分割時に考慮してもらえる制度もありますが、どの程度考慮すべきかで意見が分かれ、争いに発展するケースは多いでしょう。

4.生前贈与があった

生前贈与をめぐって争いになるケースも少なくありません。親の生前に贈与された財産は相続時に持ち戻して考えます。しかし、取得した本人が生前贈与を認めず、話がまとまらないことも多いでしょう。

5.特定の相続人が親と同居していた

特定の相続人が実家で親と同居していたことを理由に、単独での相続を主張してトラブルになるケースもあります。同居していたことは、単独での相続を主張する正当な理由とはいえないので、他の相続人と協議のうえ、平等に分割しなければなりません。単独で取得したいなら、相応の対価を支払う必要があります。しかし、主張する本人が受け入れず、話し合いがまとまらないこともあるでしょう。

相続人が実家で親と同居していた場合、親の財産も管理して、使い込んでいたというケースもあります。返還を求めても応じなければ、訴訟を起こすしか方法がなく、大きな負担になるでしょう。

6.遺言書の内容が不公平だった

遺言書があれば、その内容が何より優先されるため、遺産分割協議を行う必要がなく、相続人同士で争いが起きる可能性も低減できます。しかし、その内容があまりに不公平であれば、大した財産を得られなかった他の相続人が遺留分侵害額請求をする可能性があるでしょう。

遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に、法律によって保証された最低限の遺産の取得割合です。実際に獲得した遺産が遺留分よりも少なければ、その差額を請求できます。しかし、その支払いを拒まれてトラブルに発展するケースもあるでしょう。他にも遺言書の有効性をめぐって争いになることもあります。

実家の相続争いが起きた場合の対処法

実家の相続争いは、正しい対処法を実践することで、早期に解決できる可能性が高まります。

具体的な対処法について説明します。

1.不動産の分割方法を知って協議する

遺産が実家しかない」「特定の相続人が実家の取得を主張する」などのトラブルは、分割方法を知っていれば、解決できる可能性もあります。以下の4つの方法のうち、どれが最適かを相続人同士で協議して、分割を試みるとよいでしょう。

相続方法 概要 実家の相続において有効な場合 注意点
現物分割 そのままの形で相続する方法 実家以外にも不動産や相応の財産があるなど、ある程度平等な分割を実現できそうな場合 遺産が実家しかない場合は向かない
代償分割 代償金を支払う代わりに特定の相続人が相続する方法 単独で実家の相続を主張する相続人がいる場合 実家の相続人に資力がなく、代償金を用意できなければ実現できない
換価分割 実家を売却し、売却金を分割する方法 誰も実家を相続したがらないなど、保存する必要がない場合 過疎地域など、需要の低い地域では売れるとは限らない
共有 相続人全員で共有する方法 とりあえず遺産分割協議を収めたい場合 基本的に避けた方がよい

2.専門家に相談する

「長男だから」「元々親と住んでいたから」など理不尽な理由で相続を主張する相続人がいる場合や、寄与分や生前贈与など法律的な知識が必要な問題がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。専門家が間に入ることで、相手が説得に応じ、話がまとまる可能性が高まるからです。当事者同士での話し合いがこじれる前に、早めに相談することが望ましいでしょう。

3.遺産分割調停を申し立てる

当事者同士での解決が難しい場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討してもよいでしょう。

調停とは、裁判官と調停委員と呼ばれる専門家の仲立ちによって、もう一度話し合いをする手続きです。調停委員は中立な立場から公平な解決案を提案してくれるため、解決に至る可能性も高いでしょう。申立方法などについては、裁判所の公式サイトの以下のページを参照してください。

参考URL:遺産分割調停(裁判所公式サイト)

実家の相続争いを予防するには

実家の相続争いを未然に防ぐためには、親が生前のうちに以下のような対策をしておくとよいでしょう。

1.遺言書を作成しておく

遺言書で実家を誰に譲るか指定しておけば、その通りの相続を実現できます。遺産分割協議を行う必要もないので、相続人同士が争う心配もありません。

ただし、遺言には法律で決められたルールがあり、それに従って作成しなければ無効になるおそれがあります。せっかく用意した遺言を無駄にしないためにも、専門家からアドバイスを受けながら作成することをおすすめします。

また、公証人に作成してもらう公正証書遺言であれば、無効になる心配がありません。確実に遺言を残したい場合は利用を検討するとよいでしょう。

また、特に遺産が実家しかない場合は、遺留分に配慮した内容にすることも大切です。ご自身でわからない場合は、専門家などに相談しながら内容を決めることをおすすめします。

2.生前贈与をする

生前のうちに実家を贈与すれば、親の意思であることがわかりやすく、他の相続人の理解を得やすいでしょう。相続時精算課税制度を利用すれば、節税効果も期待できます。

ただし、この制度を利用すると、小規模宅地の特例など、他の有利な制度を利用できなくなることに注意が必要です。遺言書による遺贈の方がよいケースもあるため、専門家などに相談しながら検討することをおすすめします。

3.早めに売却する

実家を誰も利用する予定がない場合、親が生前のうちに売却することを検討してもよいでしょう。早めに処分しておくことで、実家が空き家になって負の遺産になることを防げます。ただし、不動産の相続税評価額は、実勢価格よりも低く算出できるため、現金化することで、相続税が高くなる可能性もあります。

売却を検討する場合も、専門家からアドバイスを受けたうえで、慎重に検討しましょう。

まとめ

今回は実家の相続争いが起きやすい原因、起きやすいケース、争いが起きた場合の対処法、争いの予防策などについて解説しました。

どんなに仲のよい兄弟姉妹でも、相続が発生すると争いが起きることは少なくありません。中でも実家の相続については感情的な問題が絡むこともあり、特に争いが起きやすいでしょう。自分たちだけでの解決が難しい場合は、こじれる前に専門家を頼ることをおすすめします。

当社では、不動産相続に関するさまざまな相談に対応しております。実家の相続争いの対処に関する相談にも応じておりますので、不安を抱えている方はお気軽にご相談ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一